シロクマの運命(続)

 
 社会概念を市場概念、資本概念と区別できなければ、経済発展は社会発展と同義となり、そもそも地球環境問題など課題に上らない。社会概念を持つことができても、そこにイデオロギーが入り込めば、環境モラルを向上する意識論や、市場・資本を否定する運動論ばかりが容易に出てくる。経済学はその点で、本当にセンスがなかった。
 が、結局、資本が経済法則に則って運動する以上、一方で、経済条件に環境コストを組み込んで、資本自身が地球環境に対応するよう方向づけ、もう一方で、資本の外から、社会がそれを監視する、というのが、一番合理的な方法のはずだ。

 市場を活用した、地球環境と両立する“持続可能な経済発展”、というレスター・ブラウンの提唱は、この意味で一番、現実的かつ有効なものだと思う。

 が最近、相棒は、地球環境はもうダメポと言う。おいこら。言ってることが10年前と違うじゃないの。

 北極では、氷が溶け出して漂流し、流されたシロクマは海を泳ぎ続けて、力尽きて死んでいる。南極では、溶けた氷山が流れ着いて海岸に衝突し、ペンギンは餌を取ることができなくなって、飢死している。
 シロクマやペンギンだけの問題ではない。温暖化によって地球環境が、もはや回復不可能な限界点に、したがって人類も、そこを越えれば後は一途、破滅へと突き進む限界点に、達する確率は実に6分の1だという。

 人間の叡知はあらゆる課題を解決し得る。僕は、暗い人間かも知れないが、理論だけは明るいと言われたよ。……
 ねえ相棒、10年前、あなたがそう打ち明けた言葉を、まだ研究者を志していた私は、仲違いしていたときには何よりも羨ましく思ったし、仲好くなってからは誇りに思ってきたのですよ。まだ可能性の残されているうちに、なんとかしたらどうなのです。

 画像は、デュラック「彼女にまつわるものすべてが白かった(夢を夢見る者)」。
   エドマンド・デュラック(Edmund Dulac, 1882-1953, French)

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