ギリシャ神話あれこれ:ディオメデス奮戦

 
 ところで、古代の合戦はこんなふう……

 兵卒たちがチャンチャンバラバラと戦うなか、名のある武将は馬の牽く戦車に乗り込んで戦場を駆け、敵将めがけて突進、長槍を投げる。あるいは剣で切りかかる。矢を射る武将もあるが、これはちょっと卑怯な戦い方らしい。
 諸神の加護のある武将は、敵方の槍だの矢だのを逸らせ、護ってもらえる。ちなみに、逸らされた槍は大抵、武将の隣りで戦車を駆る御者に当たるので、代わりに御者が死ぬことになる。

 加護のない武将は、運が悪ければ、敵方の槍や剣に倒れる(「右尻を槍でぐっさり刺すと、そのままずっぷり槍先が入って骨をくぐり膀胱辺りへ出た」、「首の後ろの腱を刺すと、真っ直ぐに槍先が入って、舌の根を切り裂いて歯並の上に出た」という感じの、かなりえげつない描写)。
 討たれた武将は戦車から転がり落ち、武具をカラカラと鳴らせて地に倒れ伏して、息絶える(魂は冥府へと旅立つ)。その馬と戦車と武具とは、戦勝品となる。ので、敵方に武具を剥がれないよう、味方の武将らがその遺骸を死守して自陣へと持ち帰る。

 ギリシア勢に押されるトロイア勢に、トロイアに味方するアポロン神が檄を飛ばす。対して、ギリシアに味方するアテナ神もまた、檄を飛ばす。檄と檄との飛ばし合い。

 さて、この激戦の最中、アテナ神はギリシアのディオメデスに加護を与えてやる。その一方で、軍神アレス(彼は愛人アフロディテに釣られて、トロイアに味方している)に声をかけ、我ら神々は撤退するとしましょう、と、アレスを戦場から連れ出してしまう。
 間抜けな軍神が離れた途端、トロイア勢は劣勢となった。

 To be continued...

 画像は、アングル「ディオメデスに傷を負わされたウェヌス」。
  ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル
   (Jean-Auguste-Dominique Ingres, 1780-1867, French)


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