ギリシャ神話あれこれ:ヘラクレスの最期(続)

 
 何も知らないヘラクレスは、いそいそと着替える。が、ネッソスの血に混ざったヒュドラの毒は、彼の体温で徐々に肌を浸し、やがて肌は焼け爛れ始める。
 うがーッ! 彼が力ずくで衣装を剥ぎ取ろうとすると、衣装にへばりついた肉片が一緒に剥がれ、そのあいだにも身体中が腐っていった。

 夫の悲惨な姿を見たデイアネイラは、ようやくネッソスに騙されたと気づき、自分の犯した罪に愕然となって、首を吊って死んでしまう。

 もはやこれまで! ヘラクレスは観念する。が、イオレには相当執着していたらしい。瀕死の状態で、息子ヒュロスに、自分亡き後、自分に代わってイオレを妻とするよう誓約させる。

 それから、自分をオイテの山上に運ばせ、薪を積み上げさせて火葬壇を築き、その上に横たわった。棍棒を枕にし、獅子の皮で身体を覆って。そして、火をつけるように命じる。
 が、誰もが尻込みして、火をつけたがらない。軟弱めらが! ヘラクレスは、そのとき通りかかったポイアス(あるいはその息子ピロクテテス)に頼んで、火をつけてもらう。そして感謝の印として、彼に自分の弓を与えた。この弓が、後にピロクテテスがトロイア戦争に持参した、ヘラクレスの弓。

 こうしてヘラクレスは炎に包まれて、焼き尽くされた。そのとき雷鳴とともに、黒雲が空から舞い降り、肉体を取り除かれたヘラクレスを連れて天界へと去って行く。
 ヘラクレスは天上で神として迎え入れられ、ヘラ神とも和解して、青春の女神ヘベを妻として与えられた。……以来、ヘラクレスは浮気をしていないらしい。

 ギリシャ神話最大の英雄ヘラクレス、ついに死して永遠となる。ちゃんちゃん。

 画像は、ルーベンス「ヘラクレスの神化」。
  ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens, 1577-1640, Flemish)

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