世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
陽気なM一家(続々々々)
ペンションの夫君は無愛想だけれど親切。「鉄道の時刻を調べてきてやる」と去っていく。インターネットでサーチするのかと思ったら、携帯電話を片手に戻ってきた。電話に出ろ、と言う。
で、相棒が出ると、相手は、日本語を喋るエストニア観光局員だった。
「エストニアでハ、みンなバスで移動シまス。バスなら一日たくさん走っテいまス。これハ個人的に興味あてちょと聞きたいでスが、なぜアナタ、バス使わナイでわざわざ電車で行ことすルのか?」
……
結局、鉄道は2本、朝早くと夕方にしかないことが判明して、翌日も長距離バスで移動するハメに。
「明日はターミナルまでバスで行こうね」と相棒が慰める。これからはバスの旅にも慣れなくちゃだな。
翌朝、食堂でサンドイッチとコーヒーの朝食にありついていると、ローティーンの小柄な女の子が入ってきた。薄ピンクのティーシャツに濃ピンクのジーパンという格好。北国の子の服装って、カラフルだな。
女の子はちらちらとこちらを見る。昨日、中庭のベンチに座っていた子だ。
てっきりペンションの家の子かと思っていたところに、彼女を呼びながら若い男性が入ってきた。いかにも白人らしい大きな身体で、金髪を短く刈り、腕にはタトゥーが入っていて、ちと怖い。歳の離れたお兄さんかな、と思っていると、私たちに気づいた彼は、陽気に話しかけてきた。
相棒の片言のロシア語が通じて、拙い会話がピンポンのように交わされて弾んでゆく。彼は女の子の兄ではなく父親で、ペンションの宿泊客だという。タリンに住んでおり、別の友人家族と一緒に家族でパルヌに遊びに来ているのだ。
「僕はサーシャ」と相棒、自分の名前をロシア風に改竄して自己紹介する。
「俺はミハイル。娘はミュリーナ。他にまだ息子が二人、マキシムとマルクがいる。うちの家族はみんな、名前の頭文字にMがついてるんだ!」
まるでMが家族である印であるかのように、ミハイルが嬉しそうに、誇らしそうに喋るので、こちらまで楽しくなる。
単純に、無条件に、周囲を巻き込んで明るい気持ちにさせる陽気さというのは、自分にも相棒にもないものなので、素直に憧れる。
To be continued...
画像は、パルヌ、防波堤。
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