バイエルンの都(続々々)

 
 自販機で温かいミネストローネを買って、階段を昇って、さてドアの前に立ち、できるだけ音をさせないように、教えられたやり方で鍵を開けようと試みる。が……

 やっぱり開かない。やり方を教えてもらっているのだから、これで5分くらい、ガチャガチャと実地に練習していれば、今度は開けられそうに思うのだが、数回ガチャガチャしただけで、気にかけていたらしい隣りの女の子がすぐにドアの陰からそっと現われた。
 女の子は私たちから鍵を取り、たった一度でガチャリと鍵を開け、にこにこしながら、取っ手を回しながら鍵を引っ張り、「ツィーエン(=引くの)!」と教える。はい、ちゃんと引いたんですが……

「私、この部屋にいますから、鍵が開けられなかったら呼んでくださいね(以上、相棒訳)」
 女の子は親切に言ってくれるが、さすがにもう申し訳がなくて、自己嫌悪の東洋人二人。もう今日は二人一緒に部屋を出るのはやめて、どちらかが残ってドアを開けることにしよう、と意見が一致して、冒険なしにとっとと寝てしまった。

 翌朝、朝食の時間、部屋を出ながら相棒が言う。
「問題は帰ってきたとき、鍵が開くかどうかだよね」

 朝食を終えて階段を昇り、いよいよドアの前に立つ。
「成功するよう、祈っててよ!」
 鍵を手に緊張する相棒。心臓がバクバク打つ私。相棒、慎重に、教示されたとおりにノブを回しながら鍵を引っ張ると、あれ? 呆気なく開いた。

 よし、これで気兼ねなく部屋を出ることができるぞ!
 けれども、後はもう出発するだけ。こういう技能って、身についた途端に使う機会がなくなるもんだ。

 To be continued...

 画像は、ミュンヘン、ノイエ・ピナコテーク、ゴッホを勉強する子供たち。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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