されば悲しきアホの家系(続々………………々々)

 
 大体、次男坊の伯父というのは、なんでも自分が一番カッコ好くなければ気が済まない。親族がタクシーに相乗りしても、父や伯母が金を出す場合にも、それをタクシー運転手に払うのは自分でなければ嫌だと言い張る。正月に、極上ハムを家から持って来て、「美味しいハムやなあ!」と褒められると、カッコ好いところを見せるためだけに、「それやったら、家にあるさかい、持ってってや」と、せっかくの極上ハムを献上してしまったりもする。

 そんな次男坊の伯父を普段から恨みに思う上に、少しでも口答えをすれば、「ええんや!」の一言で殴られてきたのだろう。この妻君は伯父に虐げられて、なんの意見も要求も通してもらえずに暮らしてきた。
 それが、伯父が定年となり、家でゴロゴロしながら酒ばかり飲んで過ごすうちに、頭も身体もすっかり弱ってしまったのを幸いに、今度は逆に自分が伯父を殴るようになり、伯父に関わるいかなる物事も、すべて自分の管轄とばかりに、猛然と権威を振るってしゃしゃり出るようになったのだ。

 で、いくら次男坊の伯父と談判しようにも、この妻君が伯父を押しのけて出てくるので、いつまで経っても埒が明かない。

「あんたに話があるんとちゃうで。兄さん出してえな」と出戻りの伯母。
「お前の兄貴は酒に潰れてふにゃふにゃや」と妻君。
「そのふにゃふにゃは、誰の亭主や」
「わての亭主や。せやから、亭主のもんはわてのもんや。二条の家もわてのもんや。あんたらには一銭もやらん!」
「なんやて、身の程知らずの恩知らず! あんたなんて、兄さんが貰ってやらにゃ、嫁の貰い手なかったくせに!」
「うるさい! 出戻り女!!」
「出戻りで悪かったな!」
「悪いわい! ハム返せ!!」
「訴えたるで!!」
「訴えれるもんなら、訴えてみい!! ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ!」

 アホ丸出し。眼糞鼻糞とはこのことだ。

 To be continued...

 画像は、W.H.ベアード「魔女の取り決め」。
  ウィリアム・ホルブルック・ベアード(William Holbrook Beard, 1824-1900, American)

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