ギリシャ神話あれこれ:ヘラクレスとオンファレ(続)

 
 オンファレは、夫亡き後、女王として気丈にリュディアを統治していた。3年間の奉公のあいだ、力自慢のヘラクレスは、例によって盗賊や猛獣、近隣の残虐な王らを倒して、オンファレに奉仕する。
 が、その一方で、女王に見事制圧されてしまったヘラクレス。彼から奪い取った獅子の毛皮を纏い、棍棒を手にして命令する女王の前に、ヘラクレスのほうは従順に従い、女装して糸を紡ぎまでした。なんという情けなさ、軟弱さ。
 
 こうしてヘラクレスは奴隷として女王の寵愛を受けていたが、まもなく素性がバレて、女王の愛人となり、子も儲ける。

 この頃彼は、エペソス近郊で、二人のケルコペス(=ケルコプスたち)に出会う。これは小さな、猿のような小僧で、手癖が悪くて悪戯好き。彼らは以前、母親から、お尻の黒い人には気をつけるよう、戒められていた。
 彼らは眠っているヘラクレスに出くわして、その矢筒から矢を盗む。が、眼を醒ましたヘラクレスに見つかって、捕まってしまう。
 ヘラクレスは二人の足を棒に縛りつけて、逆さまにぶら下げて肩に担いだ。ところが、吊るされたケルコペスは、ライオンの外衣を纏っただけで、ほとんど裸のヘラクレスの尻をつくづく眺めて、ゲラゲラと笑い出す。
 何がそんなにおかしいんだ、とヘラクレスが尋ねると、ケルコペスは答える。あんたのお尻は、毛むくじゃらで真っ黒だ、と。で、ヘラクレスも、わははと笑って、彼らを許して放してやった。

 後にケルコペスは、よせばいいのにゼウス神に悪戯を仕掛け、笑って許してもらえずに、本物の猿に変えられてしまったという。

 また、同じ頃、アルゴーの遠征にも参加している。が、途中、同行した少年ヒュラスが泉のニンフに魅入られて行方不明になり、それを探すために離脱した(別伝では、ヘラクレスが重すぎて船が沈みかねないため、降ろされたともいうけれど……どんな重さだ?)。

 こうして無事、3年間の甘い奴隷生活を終え、狂気の癒えたヘラクレスは、再び自由の身となる。

 画像は、ルモワーヌ「ヘラクレスとオンファレ」。
  フランソワ・ルモワーヌ(Francois Lemoyne, 1688-1737, French)

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