されば悲しきアホの家系(続々………々々)

 
 さて、ようやく読経を終えると、今度はちょっとした説法が始まる。が、この坊さん、坊さん自身の体験談よりほかに話した試しがない。
 例えば、こんなふう…… 

 私たちはみな、現世の物欲に支配されがちでございます。ときに仏さまは、私たちを分かりやすく戒めてくださいます。こんなことがございました。

 私は皆さまにお願いされましてお経を読み、お布施を頂戴して暮らしております。坊主といえども、現世にある以上、生活の資を得なければなりません。お布施は我々坊主にとって、それは大切なものであります。
 袖の下と申しますが、お布施は、この袖の袋の部分にしまいます。一日に何件もお経を読みますと、それだけお布施も大変な数になりまして、この袖の袋が大きく重く膨れます。

 さて、私は、お経をお願いされましたお家が近いときには、自転車を使っております。ある日も私はお経を終え、自転車を漕いでお寺へと帰る途中でした。袖にはたくさんのお布施が入っております。
 途中で用事がありまして、自転車を止めようと思ったときです。下駄の歯が自転車のペダルに、上手いこと噛み合ってしまいまして、どう足掻きましても抜き取ることができません。自転車は止まります。けれど、足を地に着けることはできません。私は自転車のペダルに足がくっついたまま、自転車もろともコケてしまいました。……

 To be continued...

 画像は、カストル「日本の市場」。
  エドゥアール・カストル(Edouard Castres, 1838-1902, French)

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