ギリシャ神話あれこれ:処女神、母となる

 
 ギリシャ神話では、男神の精液が無駄に放出されることはない。女性(神であれ人間であれ)の胎内に届かなかった精液は大抵、大地に落ちて、大地(つまり大地神ガイア)が身籠ることになる。で、大地から、神の血を継承した何かしらが生まれる。
 こうした内容が、えてして、「あるとき神さまが精をお漏らしになって……」とかなんとかと表現されている。こんな表現、小さな女の子にはなかなか分かんないよ! ……で、私にも分からなかった時期があった。

 さて、鍛冶神ヘファイストスは美神アフロディテの夫。なのだが、アフロディテには軍神アレスという逞しい愛人がいる。ので、醜く跛のヘファイストスは妻から相手にされない。
 あるとき、知恵と戦争の女神アテナが、武具をあつらえにヘファイストスの鍛冶場を訪れたところ、ヘファイストスはつい、むらむらと欲情してしまう。
 欲情したら早急な行動に出るのがギリシャの神さま。ヘファイストスもまた、アテナに迫って犯そうとする。永遠の処女神、しかも軍神アレスも敵わないほどの武芸の達人であるアテナに向かって、この行動は、無鉄砲すぎる。

 案の定、アテナは拒んで、さっさと逃げ出す。それでもヘファイストスは、男神に恥じぬ不屈の執着ぶりで、不自由な足を引き引き追いかける。で、アテナに抱きついた途端、その精液がアテナの腿を濡らしたのだった。

 To be continued...

 画像は、ボルドーネ「ヘパイストスを拒絶するアテナ」。
  パリス・ボルドーネ(Paris Bordone, 1500-1571, Italian)

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