夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

怪しい彼女(その2)

2014-09-08 22:49:47 | 映画
簡単な内容紹介の続き
マルスンは、鏡の前で化粧しながら、「青春写真館」の主人に、かつて自分が若かった頃の話をする。
「昔は私も顔、体、歌の三拍子揃ったいい女で、オードリー・ヘップバーンも顔負けだったもんさ…。」
すると、写真館の主人は、
「私が50歳若くしてあげますよ。いきますよ、3、2、1…。」


気がつくと、マルスンは本当に50歳若返り、20歳の頃の容姿を取り戻していた。
息子家族の家に帰れないマルスンは、パク氏の家に下宿しながら、若返った自分の人生を謳歌し始める。
美容院で『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンの髪型にしてもらったり、お洒落な洋服や下着を買いあさったり、大好きな歌を人前で歌ったり。
マルスンはオードリーをもじってオ・ドゥリと名乗り、20歳の娘として世間を渡っていくことにする。


ところが、ドュリがパク氏の食堂で「雨水」(1976年のヒット曲)を歌っている姿を孫のジハが偶然見て、祖母と知らずに一目惚れし、ぜひ自分の「半地下バンド」で歌ってくれないかと口説く。ジハは、その少し前に、ボーカルの女の子とケンカし、脱退されてしまったばかりだったのだ。ドュリは孫のため、若い頃にできなかった夢のため、歌うことを決意する。


一方、ドュリの歌には、あるテレビ局のプロデューサー、ハン・スンウ(写真、イ・ジヌク)も惚れ込んでしまう。彼は、新人オーディションが近く行われるため、「魂のある歌手」を探していた。
公園やライブハウスなどで活動を開始して人気の出始めた「半地下バンド」に、ハン・スンウが接触し、デビューの話を持ちかけるが…。

感想
『サニー 永遠の仲間たち』(2011)、『王になった男』(2012)で見て以来、注目していたシム・ウンギョン初主演の映画なので期待して観に行ったが、彼女の魅力満載の映画だった。
見た目ハタチなのに中身は70歳なんて、「怪しい彼女」以外の何物でもないのだが、彼女が演じているといかにもそれらしくて、外見と年齢からくるギャップの数々に何度も笑ってしまった。
たとえば、地下鉄の列車内で隣に座った若いお母さんが、泣き止まない赤ん坊に困っていると、
「ああ、その泣き方はお乳だね。」
とか、
「薄い母乳に、粉ミルクなんか飲まされちゃ可哀想だねえ。」
と言ったりする場面は、本当におかしかった。


シム・ウンギョンは、オ・ドュリとして歌う曲を、吹き替えを拒否して、全て自分で歌ったという。そのため、歌と振り付けの練習は相当ハードなものになったそうだが、彼女は見事に乗り切った。ドュリが魂をこめて歌う歌は、その歌詞ともあいまって、マルスンの生きてきた人生の重みを聴く者に伝える歌になっていた。
笑いも涙もたっぷりで、歌も大いに楽しむことができ、久しぶりに面白い映画を観た気分になった。