【冬の風景】
俺らが回っていたライブハウスは・・・まあ、どこも似たり寄ったりでした。楽屋が狭いのは当たり前で、みんなでくっつく程肩を並べてライブの準備をよくしてました。楽屋の壁や天井はライブをしに来たバンドマンのサインだらけ、バックステージ・パスが所狭しと貼ってあり、お世辞にも綺麗と言えるような場所ではなかったですね。俺はそういうところにサインなんか書くのは好きじゃなかったし書いた記憶も殆どありませんけど、なんとなく書き残して行く気分は分かりました。
「楽屋が暑くて困った」という記憶は無くて、思い出すのは冬場の、用意が終わってライブが始まるまでの間、楽屋で寒さに耐えていたことばっかりです。あの頃のステージ衣装はノースリーブのシャツに下は薄いスパッツとかだったので、冬場は着替えると寒くて寒くて仕方無かったです。身体を軽く動かしたり、スティックでウィーミングアップをしたりしても暖まらず、我慢出来ない時はドライヤーの熱風を身体にあてたりしてました。
身体が暖まらないうちに本番が始まると、やっぱり手足の動きも鈍いし、手の平に来るスティックの反動もきつくて痛かったです。それでも曲が進むとそのうち暑くなり、汗が出だして、ライブが終わる頃にはいつも汗だくになってました。最近は30~40分くらいのライブしかやらないのでこういう風になることなんて、多分もう無いでしょうね。ブリザードは基本的にライブは常にワンマンで、20曲・2時間くらいいつもやってました。
暑い時期のエアコンのあまり効かないような場所でのライブはきつかったです。酸欠気味になるとか、体力的にきつくなりやすい、というのもありましたけど「暑さに負ける」ということも多かったです。そしてやたら汗が出るんですけど、これが驚く程出るんですね、後から後から。目に入ると痛いし、着ている物なんかべったりと肌に張り付き、水でも浴びたようになることが殆どでした。
本当に苦しくなる時、というのは肘から汗が滴る程で、風呂に入ってのぼせた時のようになってしまうのでした。「これじゃあメイクしようが髪型決めようが全く無意味だな」と思って、途中からメイクもしなくなって、髪もムースとか使うのをやめてしまいました。ムースとかは汗に溶けて目に入るとすごい痛いんですよ。どっちにしたって叩いてる時は髪なんか気にしてられませんでしたし。
それでも冬場、汗だくになってライブが終わってステージを降り、寒い楽屋に戻った時は、冷気に当たって単純に気持ち良かったです。ある時、楽屋に戻って椅子に座ってがっくりとうなだれながらタバコを吸っていて、ふと顔を上げると向かいにランが座ってた時がありました。
ランもライブをやるといつも汗だくになってましたが、その時は何と体中から湯気が立ってました。すごく驚いて「ラン、体中から湯気が立ってるよ」と言ったらランもタバコを吸いながらまじまじと俺を見て「・・・宏之もだよ」と言うのでした。「えっ?」と思って自分の腕を見たら確かに同じように湯気が立っていて、見回してみるとメンバー全員、バカ寒い楽屋でステージ衣装のまま、汗だくになって体中から湯気を立てて座っていたのでした。
続く
俺らが回っていたライブハウスは・・・まあ、どこも似たり寄ったりでした。楽屋が狭いのは当たり前で、みんなでくっつく程肩を並べてライブの準備をよくしてました。楽屋の壁や天井はライブをしに来たバンドマンのサインだらけ、バックステージ・パスが所狭しと貼ってあり、お世辞にも綺麗と言えるような場所ではなかったですね。俺はそういうところにサインなんか書くのは好きじゃなかったし書いた記憶も殆どありませんけど、なんとなく書き残して行く気分は分かりました。
「楽屋が暑くて困った」という記憶は無くて、思い出すのは冬場の、用意が終わってライブが始まるまでの間、楽屋で寒さに耐えていたことばっかりです。あの頃のステージ衣装はノースリーブのシャツに下は薄いスパッツとかだったので、冬場は着替えると寒くて寒くて仕方無かったです。身体を軽く動かしたり、スティックでウィーミングアップをしたりしても暖まらず、我慢出来ない時はドライヤーの熱風を身体にあてたりしてました。
身体が暖まらないうちに本番が始まると、やっぱり手足の動きも鈍いし、手の平に来るスティックの反動もきつくて痛かったです。それでも曲が進むとそのうち暑くなり、汗が出だして、ライブが終わる頃にはいつも汗だくになってました。最近は30~40分くらいのライブしかやらないのでこういう風になることなんて、多分もう無いでしょうね。ブリザードは基本的にライブは常にワンマンで、20曲・2時間くらいいつもやってました。
暑い時期のエアコンのあまり効かないような場所でのライブはきつかったです。酸欠気味になるとか、体力的にきつくなりやすい、というのもありましたけど「暑さに負ける」ということも多かったです。そしてやたら汗が出るんですけど、これが驚く程出るんですね、後から後から。目に入ると痛いし、着ている物なんかべったりと肌に張り付き、水でも浴びたようになることが殆どでした。
本当に苦しくなる時、というのは肘から汗が滴る程で、風呂に入ってのぼせた時のようになってしまうのでした。「これじゃあメイクしようが髪型決めようが全く無意味だな」と思って、途中からメイクもしなくなって、髪もムースとか使うのをやめてしまいました。ムースとかは汗に溶けて目に入るとすごい痛いんですよ。どっちにしたって叩いてる時は髪なんか気にしてられませんでしたし。
それでも冬場、汗だくになってライブが終わってステージを降り、寒い楽屋に戻った時は、冷気に当たって単純に気持ち良かったです。ある時、楽屋に戻って椅子に座ってがっくりとうなだれながらタバコを吸っていて、ふと顔を上げると向かいにランが座ってた時がありました。
ランもライブをやるといつも汗だくになってましたが、その時は何と体中から湯気が立ってました。すごく驚いて「ラン、体中から湯気が立ってるよ」と言ったらランもタバコを吸いながらまじまじと俺を見て「・・・宏之もだよ」と言うのでした。「えっ?」と思って自分の腕を見たら確かに同じように湯気が立っていて、見回してみるとメンバー全員、バカ寒い楽屋でステージ衣装のまま、汗だくになって体中から湯気を立てて座っていたのでした。
続く