久しぶりに大久保(新宿区)を歩いてきた。
ご案内くださったのは、以前、CHCのミニセミナーで、
「大久保の町の変遷」をお話しいただいたI女史。
(NHK「ブラタモリ」でも、タモリさんをご案内したらしい。
残念、その番組は見逃した!)
彼女からいただいたメールに、
「(大久保は)近頃ムスリム達の勢いがすごいです!」の一文に、
私はすぐに飛びついた。
善(?)は急げ、小雨の振る日、大久保の駅に降り立つ。
この活気は何なんだ!
他の街は、雨の中でひっそりしていたのに、ここは別世界。
街は明るく輝いており、傘を差したままでは、前にも進めないほどの人混み。
そして、私はその街の雑踏の中で、なぜかほっとするような気持ちになっていた。
早速、彼女の案内で新しく変わってきた街の一角に。
「あ!」、彼女が小さく声を上げた。
お店が1軒、また変わっていたらしい。
すごい、彼女は大久保の街のすべてのお店が頭に入っているようだ。
早速、その周辺を探索。
ムスリム用の食材を売っている「ハラールフード店」が
あちこちにある。
「このビル、入ってみましょうか。どんな店が入っているのか、
最上階から見てみましょう!」
早速、近くの5階建てのビルに入る。
壁には、見たこともない文字のチラシが、所狭しと貼られている。
上階は、住居になっているらしいが、3階くらいまでは、ネパール料理店、
ハラールフード店、小さなモスクもあるらしい。
階段ですれ違う人たちは、全部外国人。
自分が今どこにいるのか一瞬わからなくなる。
街の探索を終え、インドネシア料理店へ。
けれどお店のご主人はブラジル人で、何を注文しても、
まだ家にいるらしいインドネシア人の奥さんに電話で確認し、
「すみません、それ今ないです」というのには笑った。
お店に入ってからは、二人で話しが止まらなかった。
その話の中で、「多様性」という言葉が出たとたん、
「よかった!差し上げようと思って私が原稿を書いた
冊子を持ってきたのに、すっかり忘れてた!」と
小さな冊子を取り出した。
その冊子は、「多様性」について、さまざまな研究者が書いたもので、
他の人の文章は、硬くてあまり読む気になれなかったが、彼女の文章は
帰りの電車の中で一気に読んだ。
CHCの「理念」にも、
コレクティブハウジングの考え方は、
「多様な暮らし方・生き方を受け止められる住環境づくり」
と書いてある。
そして、今、あちこちで「多様性」ということが注目されている。
けれど、ふわふわした「多様性」をイメージしているだけで、
本当に自分の生活の中に、実感として、自分と違うさまざまな「多様」を
受け入れることまで覚悟が出来ているのか、と思うことがある。
以下は、彼女の文章の一部である。
大久保を通して見えてくること、それは、本気で「多様性」を求めるならば、
それなりの覚悟が必要ということだ。
本来関わりたくないような、面倒でやっかいなことも含めて受け入れられるか、
自分も変わっていくことを受け入れられるか、その覚悟がないと
「これでいいのだ」とは、なかなかいえない。
私を惹きつけてやまない大久保の魅力とは、まさに、その懐の深さにある。
(世界思想社 2010年春「世界思想」37号より)
この文章、いつもコレクティブハウスの見学会で、見学会参加者から出る
「皆さんは、トラブルもなく楽しく暮らしているのですか」というような質問に、
居住者が答えている言葉と通じるものがある。
コレクティブハウジングは、他人とゆるやかに関わって暮らす暮らし方である。
面倒くさいことも、他人は自分と違う考えを持っているということも全部含めて
受け止め、それではじめて「多様な他人と『暮らす』」ことになる。
「多様」を受け止めたあとに何が待っているのか、それはわからないが、
「これでいいのだ」といえることを願っている。
taka