CELLOLOGUE

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"DEWEY"(『図書館ねこ』)を読む

2009年12月26日 | 折々の読書
  
また,猫の本で恐縮です。

図書館ねこ。図書館には猫が相応しい。司書の机の上や書架に自由にしなやかに佇む様子は違和感がないだろう。
この,図書館員になった猫の物語については既にテレビや翻訳書でご存知の方も多いと思う。

簡単に紹介すると,1988年の冬,アイオワ州スペンサー市の図書館の図書返却ポストに捨てられた猫が図書館員(著者)によって拾われ育てられる。デューイとは図書分類法の考案者に因んで名付けられた(正式には,Dewey Reedmore Books)。この小さな雄猫は,最初は反対にあったが,まず子供達に,やがて市民にも受け入れられて図書館の中で過ごすようになる。利用者を迎えること,広報を担当すること,会議に参加することなど「仕事」も与えられるが,図書館ねことしての資質があったのか(笑),膝の上に乗って利用者を癒したり十二分にその役目を果たす。そして全米,全世界の人気者になっていくのである。

日本でもTVで放映され知られるところとなった。それだけなら「ねこ駅長」とあまり変わらないのだが,この物語の特徴はデューイの育ての親であるヴィッキーさんの人生がより濃く反映されていることだろう。この方は最初からスペンサー市のライブラリアンだったのではなく,近郊の農家に生まれ育ち結婚,そして夫の飲酒癖により離婚,娘を育てながら苦学して司書となった女性だ。仕事,娘の子育てと忙しい中図書館経営や改築を担当した努力の人である。

さらに自ら乳ガンを宣告され,両親や親戚にも不幸が続く。そんな中でこの捨て猫が彼女の人生に果たした役割はいかほどだろう。先日の『愛しのチロ』にも書いたが,ペット以上の存在であり,人生の伴侶とも言える存在だったのではないだろうか。デューイを巡る人々,図書館員,子供達,市民,評議会のメンバー,獣医などとの交流が描かれていて興味深い。特に私が面白かったのは市立図書館の運営が評議会で運営されていることだ。デューイを飼うかどうかもこの会議で扱われている。何かと評議会は面倒な存在でもあったようだが,闊達な議論を通して図書館の運営に風通しをよくしていたことは理解できる。一方,日本の図書館の運営はいかがだろうか。

デューイは穏やかな性格で図書館利用者に怪我をさせたりすることはなかった。図書館と市民との懸け橋でありその象徴であったに違いない。あるいは両者の図書館への思いの具現された存在であったのかも知れない。
晩年のデューイは重病となりヴィッキーさんの腕の中で息を引き取るが,その最後のくだりは涙なくしては読めない。

動物好きな方だけでなく多くの人を惹きつける物語だと思う。英文はそれほど難しくなく私にもよく理解できた(多分(笑))。今回のリーディングでは単語単位よりも文章単位でアンダーラインを引くことが増えたこともその証明である。例えば,デューイのような茶トラの猫はorange catと言い,獣医は単にvetと言うなど,単語やいくつかの言い回しはこれからのために参考になりそうだ。
翻訳はこちら

■DEWEY: The small-town library cat who touched the world by Vicki Myron. Grand Central Publishing, March, 2009.


1 コメント

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Unknown (藍色)
2010-02-24 01:38:09
こんばんは。同じ本の感想記事を
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