自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

スラッジ発生を防止する方法

2012-10-19 04:17:43 | クルマを長持ちさせる方法
 前回までにスラッジが溜まりやすいエンジン、というのをいろいろと紹介してきた。しかしすべてが過去のエンジンだったため、きっと読んでいる方は、
 今現在のエンジンはどうなのよ?
 と思われているだろう。こう質問されたら、残念ながら僕は
 ごめんなさい。分かりません。
 と答えるしかない。クルマの仕事を辞めてから十五年以上経っているし、仕事をしていた時でもエンジンの耐久性というのは六、七年くらい経過しないとなかなか見えてこないものだった。様々なトラブルを実際に目の当りにしたり、いろいろな人からの情報を耳にしてはじめて問題を抱えたエンジンというのはしだいに浮かび上がってくる。いくら過去の経験があるとはいえ、現在の立場ではうかつに『このエンジンはスラッジが溜まりやすく、壊れやすい』などとは言えない。

 ただ、ネット上の様々なサイトを見ていると、スラッジの問題に対して苦慮している方が現在でも多いことに気付く。この前はトヨタのAZ型と呼ばれる四気筒エンジンについて、気になる書き込みを目にしたことがあった。
 そのクルマはトヨタ・ノア。型式はAZR60G、つまり先代のノアに搭載されていた1AZ-FSE(2リッター4気筒)エンジンについてである。書き込みをしたオーナーの方は購入してから五年十か月、距離は九万九千キロでスラッジによってエンジンが止まってしまったそうだ。ディーラーにクルマを持ち込んだら『スラッジが原因だ』という説明をされたそうである。これについてオーナーの方が、「これは構造上の欠陥なのではないか」という質問を掲載していたのだった。
 数分後にはエンジンが再始動できたのだが、異音がひどかった、と書かれていたことから、このエンジンは焼き付きを起こしてしまったのだろう。たぶんクランクメタルではないかと思う。再始動が可能、ということは焼き付きの程度としては比較的軽いほうだと思うが、それでも焼き付きは焼き付き、である。重症であることに変わりはない。焼き付きの原因としてまず考えられるのはオイル管理の不良、ということになるのだが、このノアのオーナーの方は半年に一度、もしくは五千キロ毎にオイル交換を実施。なおかつオイル交換二回ごとにオイルフィルターもきちんと交換していた、との事だった。もしこれが事実なら、オイル管理はほぼ完璧である。このオイル管理を実施していてわずか五年十か月、距離九万九千キロでエンジンが焼き付いてしまったら、『欠陥ではないのか』とオーナーの方が言うのも無理はない。トヨタはかつてのM型やG型のような粗悪エンジンをいまだに作り続けているのだろうか。

 僕がユーノス・ロードスターとレガシィを購入した理由は、単純に『好きだから』というだけではない。ともにエンジンが丈夫だということを経験上知っていたから購入したのである。しかしごく普通の人は購入するクルマのエンジンが丈夫であるかどうか、なんてことは分からないと思う。そして現在の僕もみなさんと同じように分からない人間になりつつある。
 ではスラッジに苦慮しないためにはどうすればいいのか。いくら分からない人間になりつつある僕でも、その方法は伝授することができる。その方法とは、以下の通りである。
 ①新車で購入した時点から五千キロ毎、もしくは一年に一回は必ずオイル交換を実施し、二回に一度はオイルフィルターを交換すること。
 ②ヘッドカバーにフィラーキャップが付いているエンジンであれば、新車時から必ず一年に一度はフィラーキャップを開けてエンジン内部の様子を見ること。
 ③新車時のエンジン音、フィーリングをしっかりと覚えておき、エンジンに変化がないかどうか観察すること。
 ④燃費を計測すること。

 まず①だが、オイル管理は最も重要である。現代のクルマの取り扱い説明書にはオイル交換は一万キロに一度、なかには二万キロに一度、などと明記されているが、これは環境問題を考慮しているためだろう。しかしこのオイル交換サイクルでスラッジとは無縁のカーライフを送れるとはとても思えない。
 ②も重要である。もしフィラーキャップを開けてキャップの裏側やエンジン内部に微量のカスのようなものが付着していれば、それはスラッジだ。スラッジ発生の初期段階である。①のようなオイル管理を実施していてもスラッジが発生してしまったのなら、オイル交換サイクルをより早めなければならない。フィラーキャップを外してエンジン内部を覗いて見ることによって、それまでのオイル交換サイクルが適正であるかどうかが判断できるのである。ちなみに初期段階であればエンジンフラッシングによってスラッジはきれいになる。
 ③はメカニカルノイズが大きくなっていないか、エンジンの吹け上がりが重くなっていないか、などを観察する。
 ④の燃費計測はエンジンのコンディションを知るうえで重要な情報である。

 以前、ネット上で「三千キロごとにオイル交換をしている」と書き込みをされた方に対して、「三千キロでオイル交換をするなんて、量販店の言うがままのおいしいお客ですね」と書き込みをしている人を見かけた。まるで人を小馬鹿にしたような言い方である。三千キロでオイル交換なんて無意味、と言いたいのだろうが、『知らぬが仏』とはまさにこのことだ。世の中には7M-GTEのようなエンジンも存在するのである。
 ちなみに小馬鹿にされた気の毒なこの方はST205に乗っている、と書かれていた。ST205というとセリカ、そして末尾が『5』だから4WDのGT-FOURだろうと思う。エンジンは3S-GTEだ。この3S-GTEエンジンはトヨタエンジンにしては珍しく、相当丈夫である。丈夫だからこそ、僕はユーノス・ロードスターを買う時にSW20のMR2も候補に挙げていた。
 3S-GTEエンジンなら、三千キロ毎のオイル交換は必要無いかもしれない。しかしターボエンジンというのはNAエンジンよりもオイルの環境が厳しい。したがって、この方の言うように僕もターボエンジンであれば三千キロ毎でのオイル交換をお勧めする。転ばぬ先の杖、というやつだ。