僕がスラッジの話をあれこれとしたのはこの『自動車学』をはじめて間もない頃である。当時の僕は「こんなこともあるんだョ」といった軽いノリで書いていた。軽いノリのつもりだったから、解説をしても「面倒くさいから覚えなくていい」と書いた。要するに、スラッジで悩んでいる方など今どきそうはいないだろう、と思っていたのだ。
しかし、スラッジの問題は今でも我々の身近なところにあるのかもしれない。と言うのも、『スラッジ』と検索してこの自動車学を訪れてくれた方がとても多いのである。スラッジ、と検索するということはスラッジに悩んでおられる、ということなのだろう。そこで今回はオイル管理とスラッジの問題を補足していこうと思う。
以前にも話したように、まずエンジンオイルの劣化を放置し、なおかつチョイ乗りばかりを繰り返しているとスラッジは発生しやすくなる。逆に言えばチョイ乗りばかりしているとエンジンオイルは劣化が進み、その結果スラッジが発生しやすくなる、ということでもある。エンジンオイルの劣化の進行過程については以前に説明したのだが、チョイ乗りがなぜエンジンオイルの劣化を早めてしまうのか、という点については詳しく説明していなかった。そこで、まずはこの問題から話を進めていく。
エンジンというのは燃料を燃焼した時点で排気ガスとともに水蒸気を発生する。寒い日にエンジンを始動するとマフラーから排気ガスと一緒に水蒸気の煙が立ち上るからよく理解できると思う。そしてチョイ乗り、つまり十分に暖まらないうちにエンジンを停止してしまうと、エンジン内部に留まっていた水蒸気はエンジンの冷たい金属面に触れて水になる。この水がエンジンオイルにとって有害なのだ。さらに、エンジンが冷えているうちはブローバイガスが多量に発生する。ブローバイガスとはエンジンの圧縮や爆発行程でピストンリングの隙間から漏れてクランクケースに流れ込むガス(混合気)のことだが、このブローバイガスの主成分は燃焼前の生ガスである。ブローバイガスが多量に発生するということは、燃焼前の多量の生ガスにエンジンオイルがさらされる、ということになる。多量の生ガスはエンジンオイルの劣化、つまり酸化を進行させることはいうまでもない。ややこしい話だが、チョイ乗りがエンジンにとっていかに過酷であるか、なんとなくでも想像していただけるのではないだろうか。
もうひとつの問題として、現代のクルマに数多く採用されているアイドリングストップのシステムがある。このアイドリングストップを多用するということは、要するにチョイ乗りを繰り返すのと同じ理屈になるのだ。エンジンが十分に暖まっていれば弊害は無いが、十分に暖まっていないうちにアイドリングストップを頻繁に作動させてわずか数キロ先のスーパーに買い物に行く、というような使い方を日々していれば、エンジンオイルの劣化は早まりスラッジが発生してしまう可能性は十分にある。アイドリングストップシステムによって、今後エンジン内部のスラッジ発生に悩まされる方が増加してしまうのではないか、と僕は懸念している。
スラッジの発生を防止するためにはどうしたらいいのか。これについては以前にも説明したようにオイル交換サイクルを早めるしかない。僕のサンバーはよくチョイ乗りをする機会があるのだが、オイル交換は三千キロ毎に必ず行っている。ちなみにレガシィのほうはサンバーほどチョイ乗りをする機会は無いので五千キロ毎での交換だ。よく「メーカーの指定は一万キロ毎での交換、となっているんだから一万キロで交換すればいいんだ!!」などと頑なに主張している人を見かける。なかにはネット上で「三千キロでオイル交換なんて、量販店の言うがままのおいしいお客ですね」などと人を小馬鹿にしたような物言いをしている人までいるが、僕はこれらの意見に対して「違う!」と声を大にして言いたいと思う。
自動車メーカーが指定しているオイル交換サイクルというのは、メーカーが指定しているエンジンオイルを使用して、なおかつメーカーが想定している走行パターンを消化したうえでの距離になっている。つまりチョイ乗りを繰り返す、などという過酷な走行パターンは全く想定していないのである。エンジンオイルの寿命はその使用状況下で大きく異なる。これを理解していない人がとても多い。冷静になって考えればおわかりいただけると思うのだが、例えばノーマルエンジンで自動車レースをやっている方が「このクルマのメーカー指定のオイル交換サイクルは一万キロだから、一万キロでオイル交換をすればいいのさ」などと言っているだろうか。エンジンというのは高温で使用すればオイルに過大な負荷をかける。そして低温で使用してもやはりオイルに過大な負荷をかけるものなのである。同じクルマであっても人それぞれ使用状況は異なる。にもかかわらず、オイル交換サイクルは一律でOK・・・で済むはずがない。
ちなみにオイルというのはクルマに乗らなくても酸化によって劣化していく。僕がユーノス・ロードスターに乗るのは年に三千キロにも満たないのだが、エンジンオイルの交換は毎年必ず行っている。
最後に余談だが、ネット上のあるサイトで「ビューエルのXBシリーズのエンジンオイル交換サイクルは八千キロである。だから八千キロ以下でオイル交換などする必要は無い!」と力説している方がおられた。しかしXBシリーズのメーカー指定のエンジンオイル交換サイクルは四千キロ(低温時にチョイ乗りをすることが多い場合は二千四百キロ)となっている。八千キロはミッションオイルのほうだ。僕はマニュアルを所有しているから間違いに気付いたのだが、マニュアルを所有していない方がこのサイトを見たら誤解してしまうのではないか、と心配になったために一言付け加えておく。
しかし、スラッジの問題は今でも我々の身近なところにあるのかもしれない。と言うのも、『スラッジ』と検索してこの自動車学を訪れてくれた方がとても多いのである。スラッジ、と検索するということはスラッジに悩んでおられる、ということなのだろう。そこで今回はオイル管理とスラッジの問題を補足していこうと思う。
以前にも話したように、まずエンジンオイルの劣化を放置し、なおかつチョイ乗りばかりを繰り返しているとスラッジは発生しやすくなる。逆に言えばチョイ乗りばかりしているとエンジンオイルは劣化が進み、その結果スラッジが発生しやすくなる、ということでもある。エンジンオイルの劣化の進行過程については以前に説明したのだが、チョイ乗りがなぜエンジンオイルの劣化を早めてしまうのか、という点については詳しく説明していなかった。そこで、まずはこの問題から話を進めていく。
エンジンというのは燃料を燃焼した時点で排気ガスとともに水蒸気を発生する。寒い日にエンジンを始動するとマフラーから排気ガスと一緒に水蒸気の煙が立ち上るからよく理解できると思う。そしてチョイ乗り、つまり十分に暖まらないうちにエンジンを停止してしまうと、エンジン内部に留まっていた水蒸気はエンジンの冷たい金属面に触れて水になる。この水がエンジンオイルにとって有害なのだ。さらに、エンジンが冷えているうちはブローバイガスが多量に発生する。ブローバイガスとはエンジンの圧縮や爆発行程でピストンリングの隙間から漏れてクランクケースに流れ込むガス(混合気)のことだが、このブローバイガスの主成分は燃焼前の生ガスである。ブローバイガスが多量に発生するということは、燃焼前の多量の生ガスにエンジンオイルがさらされる、ということになる。多量の生ガスはエンジンオイルの劣化、つまり酸化を進行させることはいうまでもない。ややこしい話だが、チョイ乗りがエンジンにとっていかに過酷であるか、なんとなくでも想像していただけるのではないだろうか。
もうひとつの問題として、現代のクルマに数多く採用されているアイドリングストップのシステムがある。このアイドリングストップを多用するということは、要するにチョイ乗りを繰り返すのと同じ理屈になるのだ。エンジンが十分に暖まっていれば弊害は無いが、十分に暖まっていないうちにアイドリングストップを頻繁に作動させてわずか数キロ先のスーパーに買い物に行く、というような使い方を日々していれば、エンジンオイルの劣化は早まりスラッジが発生してしまう可能性は十分にある。アイドリングストップシステムによって、今後エンジン内部のスラッジ発生に悩まされる方が増加してしまうのではないか、と僕は懸念している。
スラッジの発生を防止するためにはどうしたらいいのか。これについては以前にも説明したようにオイル交換サイクルを早めるしかない。僕のサンバーはよくチョイ乗りをする機会があるのだが、オイル交換は三千キロ毎に必ず行っている。ちなみにレガシィのほうはサンバーほどチョイ乗りをする機会は無いので五千キロ毎での交換だ。よく「メーカーの指定は一万キロ毎での交換、となっているんだから一万キロで交換すればいいんだ!!」などと頑なに主張している人を見かける。なかにはネット上で「三千キロでオイル交換なんて、量販店の言うがままのおいしいお客ですね」などと人を小馬鹿にしたような物言いをしている人までいるが、僕はこれらの意見に対して「違う!」と声を大にして言いたいと思う。
自動車メーカーが指定しているオイル交換サイクルというのは、メーカーが指定しているエンジンオイルを使用して、なおかつメーカーが想定している走行パターンを消化したうえでの距離になっている。つまりチョイ乗りを繰り返す、などという過酷な走行パターンは全く想定していないのである。エンジンオイルの寿命はその使用状況下で大きく異なる。これを理解していない人がとても多い。冷静になって考えればおわかりいただけると思うのだが、例えばノーマルエンジンで自動車レースをやっている方が「このクルマのメーカー指定のオイル交換サイクルは一万キロだから、一万キロでオイル交換をすればいいのさ」などと言っているだろうか。エンジンというのは高温で使用すればオイルに過大な負荷をかける。そして低温で使用してもやはりオイルに過大な負荷をかけるものなのである。同じクルマであっても人それぞれ使用状況は異なる。にもかかわらず、オイル交換サイクルは一律でOK・・・で済むはずがない。
ちなみにオイルというのはクルマに乗らなくても酸化によって劣化していく。僕がユーノス・ロードスターに乗るのは年に三千キロにも満たないのだが、エンジンオイルの交換は毎年必ず行っている。
最後に余談だが、ネット上のあるサイトで「ビューエルのXBシリーズのエンジンオイル交換サイクルは八千キロである。だから八千キロ以下でオイル交換などする必要は無い!」と力説している方がおられた。しかしXBシリーズのメーカー指定のエンジンオイル交換サイクルは四千キロ(低温時にチョイ乗りをすることが多い場合は二千四百キロ)となっている。八千キロはミッションオイルのほうだ。僕はマニュアルを所有しているから間違いに気付いたのだが、マニュアルを所有していない方がこのサイトを見たら誤解してしまうのではないか、と心配になったために一言付け加えておく。