嵐の月曜日

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本当は怖い? 崖の上のポニョ

2008-09-20 04:20:17 | 日々の随想録

崖の上のポニョの感想にセフ氏から興味深いコメントがあったので、色々考えてみた。

ちなみにそのコメントは、
>文明と自然は共存できないんじゃね?って結論めいたものが出たのが「もののけ」だったと思うんだけどね。
という私のコメントへの返答で、少し長いが引用させていただく。

>文明と自然は共存できないんじゃね?
ってのは前から言ってたけど、「もののけ」ではそれでも自然を敬いながら人間は人間で「生きろ。」って話じゃない。
>でも「ポニョ」は、共存できないから一回水に沈めて人間の世界を終わらせたわけでしょ。
>洪水のあとの世界は、人間視点からいうと「黄泉」でしょう。
>だから婆さんどもは肉体感覚から解き放たれて歩けてるわけだ。
>で、生き残ってるの人間は宗介のみで、人間を新しい世界に連れて行くかの審判が下される。
>結果「ポニョが好き」という単純な理由で新しい共存の世界が始まるけど、おそらくその後の世界では、人間はフジモトのように泡に守られてないと生きていけないのでは?
>最初にそっちの世界に行った先駆者がフジモトなわけだよ。
宮崎的人類補完計画だと思うんだよな…。
(太字筆者)

成程、そう考えると私がどうしてもわからなかった、婆さんたちの脚が治癒したことにも合点がいく。
確かに、相当能天気な人か、純粋に子供の心を持ち続けている人以外は、ポニョを観ている間に何か薄気味悪いモノを本能的に感じるんじゃなかろうか(私は感じました)。

やや深読みすると、ポニョの本当の名前が「ブリュンヒルデ」というのは、北欧神話で戦死者をヴァルハラ(天国)へと導くワルキューレの長女と同じ(ブリュンヒルデはオーディン(=フジモト?)の怒りに触れて神性を剥奪され(人魚→人間?)、ジークフリート(=宗助?)と結ばれる)。
そう考えてみると、ポニョが「血を吸った宗助」以外の人間に取っている行動には、死を連想させる暗示がそこかしこに感じられる。

最も象徴的なのは、水没後の世界で宗介とポニョが船で旅立った時に出会う、ボートに乗っていた母親と赤ん坊シーン。
あの場ではなんだかよくわからないやり取りが繰り返された後、ポニョが赤ん坊に顔をグリグリして去る…どうにもおさまりの悪い、奇妙なやり取りが描かれている(実際あのシーンでのポニョはかなり不気味)。
この「頭グリグリ」をポニョによる死のしるしととらえると、もがいていた赤ん坊はポニョの一撃で殺され、安らかに葬送されたと考えられないだろうか(後のシーンで、この母子から受け取ったロウソクの火は消えてしまう)。

また、船で高台へと避難しようとしていた宗助LOVEの同級生:クミコは冒頭で既にポニョから忌避されている(宗助の船の方に乗りたがるクミコを宗助は拒絶→死の宣告?)。
そう考えていくと避難民たちの集まった「山の上ホテル」はどう考えても天国のイメージを具現化したものと思われるし、最後までポニョやフジモトの存在を否定して一人で高台に残っていたトキさんにもポニョが一撃を加えて、殺害

さらには宗助の両親についても同じで、母親については乗り捨てられた自動車が死を暗示している。
これは考えすぎかもしれないが、「山から誰かが送った合図」によって宗助から離れていることから、誰かの罠により殺されたのかもしれない。
父親に至ってはもっと直接的に嵐を潜り抜けて船の墓場みたいなところに辿り着いていることから、グランマンマーレにとり殺されたともとれる(ギリシア神話におけるセイレーンの暗喩)。

なお、本作中で唯一人、一貫して理性的な行動を取っているフジモトは、もっと緩やかな形で人類から次の「何か」への移行を目論んでいたようだが、偽悪的な振る舞いとは裏腹に、人類のことを一番考えて行動しているキャラクタのように思える(痩せても枯れても元・人間だし)。
ポニョによって彼の計画は頓挫してしまった訳だが…。

こうした偽装は「千と千尋の神隠し」ではもっと誰にでも連想できる形(「油屋」=温泉街の売春宿千尋→千=源氏名)で成されていた。
が、ポニョではさらに巧妙に偽装されている(「大津波」=「人類絶滅」ポニョ=死出の水先案内人)。

そう考えてみると最後のメデタシメデタシも、全員死滅して天国でヨカッタネ…という怖い話のようにも受け止められる。
なんだか宗教映画っぽいぞ…。
これを「子供に最初に見せる」ことで、死後の世界に慣れさせる洗礼(洗脳?)を施しておこう、ということなのかもしれませんね。

もっとも私はフィルムになってるものが全てで裏設定とかどうでもいいと思ってる人なんで、色々書いたけどどうでもいーや!フハハハポニョ見ろ、人がゴミのようだ!
…という心境。

付記:
ちなみに北欧神話に着想をえて作られたワーグナーの「ニーベルンゲンの指輪」では、ブリュンヒルデはジークフリートと結ばれた後、思い違いからジークフリートを余人に殺害させ、自らも悲嘆にくれて死んでしまいます…。
地球オワタ\(^o^)/


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (梅千代)
2008-09-20 12:07:21
深いね~。

真偽は別として単純な子供向けアニメとしか考えてなかったよ。


Unknown (toha)
2008-09-20 15:19:14
見ていないので、突っ込んで話せないのが残念ですが
セフさんと智くんのやりとりがとても興味深かった

あなたたちインテリね
こういう話酔っ払って聞くの好きだわw

ちなみにポニョは旦那と娘で見に行ったけど、こんな深い話だという感想は一切聞かれませんでしたw
Unknown (acco)
2008-09-20 15:48:37
これ宮崎氏に読ませてあげたいわ。
絶賛されるか、こっぴどく叱られるか、どっちかだw

近々観ようと思ってましたから、この視点で観る事にします。
Unknown (セフ)
2008-09-20 21:12:23
そうそう「ブリュンヒルデ」ってのも暗示ポイントだよな。

昨日、酔っぱらって友達に電話して、
小一時間こんな話をしたら呆れられたよ。

たびたび智のブログのコメント欄を汚すのも何なので、
自分のポニョ解釈については、
先ほどmixiの自分の日記でまとめてみた。

ヒマがあったら読みに来てちょ。
Unknown (智)
2008-09-21 01:52:16
>梅千代
頭痛くなってくるからあんまり深読みするもんじゃないね。
やっぱアニメはスカッとサワヤカな方が好きだ。
Unknown (智)
2008-09-21 13:58:28
>toha
インテリつーか、酔狂人??
娘さんの年頃が純粋に楽しめるんじゃないかなー。
感想、聞いてみたいです。
Unknown (智)
2008-09-21 14:00:13
>acco
多分叱られるw
御大を前にしてこんな与太話を一席ぶつ勇気があれば、だけど…
多分素直に何も考えずに観た方が楽しいと思います。
Unknown (智)
2008-09-21 14:01:05
>セフ
見終わった後は「なんか不気味だな~」としか感じてなかったんだが。
婆さんの件と「ブリュンヒルデ」ってとこだけちょっと引っかかってたんだ。
私の船の親子のシーンは三途の川のメタファーだと思いましたよ。
船で現実と違う世界(常世)に行くっていうのは、日本神話でも散見される(浦島太郎とか…)し、宮崎監督も好んでいる諸星大二郎作品でも頻繁に登場しますね。