カフェウィステリアのワイドショー的アメリカ事

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カーター前大統領のごめんなさい

2007年01月28日 | ワイドショー的アメリカごと
南部はジョージア州ピーナッツ農家出身の大統領として1976年から80年まで第39代米大統領を勤めたジミー・カーターは82歳になる今も精力的に発言を続け、影響力を残すおじいちゃんである。

現役大統領時代は、「人権外交」の追及者でありイランの米大使館が占拠され多くの職員が人質になったときも、今のブッシュ大統領のように空爆したりしなかった。

長年の宿敵だったエジプトとイスラエルの和平協定を実現させた功績でノーベル平和賞を受賞した前大統領は、中東平和に情熱を持ち続けている。

そのカーター爺が書いた21冊目のベストセラー(になるだろう)、「パレスチナ:アパルトヘイトでなく平和を」が、なんと大ブーイングの嵐を引き起こしている。

パレスチナ問題を扱った本は、パレスチナ側に甘すぎるとして在米ユダヤ人社会から総スカンをくらっているのだ。そもそもタイトルに「アパルトヘイト」というかつての南アフリカの人種差別政策を指す言葉をセンセーショナルに使ったことが許せないという。これではイスラエルが「アパルトヘイト」な国だと誤解されるからだという。カーター爺は、「アパルトヘイトという言葉は刺激が強いが、私は何もイスラエルがそうだといっている訳ではなく、現在のヨルダン川西岸の状況(ユダヤ人入植者のみに土地の所有権を認めて領土化を進めている)を見て、将来のことを憂いているのだ」と主張しているが、誰も聞く耳は持たないようだ。

また、この本があまりにパレスチナ寄りに書かれ、カーター爺の偏った意見を事実のように書いているのは許せないとして、エモリ大学にある人道支援団体カーターセンターの理事が14人も辞任してしまったのだ。その中には、側近でカーター爺と共著の経験もあるエモリ大学歴史学教授のケニス・スタイン教授も含まれていた。

頑迷な反ユダヤだの、嘘つきだの、盗作よばわりされたのは生まれて初めてだと82歳の前大統領はため息をつき、「イスラエル批判は一切認めないというのか」と嘆く。しかし、批判者達は目を皿のようにして本の細部に至るまで検証し、カーター爺の本がいかに不正確で歪んだ見方をしているのかケチョンケチョンにやっつけ続けている。

ついにカーター爺は、ブランダイス大学の招待を受けてスピーチをし、この本がイスラエルを「やっつける」ための本ではなく、対話の必要性を説いた本なのだと説明した。ブランダイス大学は、ユダヤ人創立の唯一の一般大学(宗教大学でない)であるが生徒の半分は世界中から集まったエリートユダヤ人の子女達である。生徒の1人から、「イスラエルが対話に応じればすぐさま自爆テロは終結する」という一文は言いすぎではないかという指摘には、さすがのカーター爺も素直に謝って次ぎの版からは訂正すると答えた。これが、また「カーター陳謝」という見出しで全米を駆け抜けた。

日本人からみれば、この神経質さは驚きだが、ユダヤ人1300万人のうち600万人がアメリカに住んでおり、その数はイスラエルより多い。とはいえ、全米人口3億人のうちの600万人なのだが。

まあ、世の中に出る啓蒙本のどれもが、専門家の精査に耐えうるほど正確とは思えないが、何か伝えたい「いい」メッセージが含まれているものだ。カーター爺の本も、パレスチナ人だけでなく多くのイスラエル人達が納得するメッセージを含んでいる。誰だって平和な国に住みたいに決まっている。批判とは裏腹に本は順調に売れているようである。


1 コメント

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Unknown (ざっく)
2007-02-05 01:19:18
昔、ユダヤ人の同僚が「皆俺たちのことを悪く言うけど、パレスチナ人はマスコミにユダヤ人が悪者に見えるように、うまく被害者面を演出している。卑怯だ」と言っていたことを思い出しました。パレスチナもイスラエルも結局、「自分たちは被害者だ」論理なので、時間がかかるかなと思いつつ、税負担増加でイスラエル国民は悲鳴を上げているので、そろそろ妥協点を探る時期に来ているのではないかと思います。