カフェウィステリアのワイドショー的アメリカ事

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産後の狂気で子ども5人皆殺し

2006年07月30日 | ワイドショー的アメリカごと
ごぶさたしておりました。

5年前のある朝、アンドレアはバスタブに5人の子どもを次々に沈めて溺死させた。7歳だった長男のノアは必死に抵抗したのだろう、バスタブを強く引っかいた後が爪に残っていたという。5歳のジョン、3歳のポール、2歳のルークそして生後6ヶ月だったマリーも母親の手でバスタブの水に突っ込まれた。

アンドレアは、マリーを産んだ後、産後の情緒不安定にあったといい、精神安定剤などを服用していたとされる。この事件の一審では、この母親の精神状態が争点となったが、判断能力に問題はなしとされ無期懲役の判決が言い渡された。5人の死という事件の重大性と、その仕事量の大きさからみても、狂気がなせる一瞬の間違いと言うには戸惑いがあったのも確かであろう。

しかし、精神科医が証言した「産後の鬱病」が引き金となって子どもへの殺意へとつながるケースについては、テレビ番組のストーリーに引っ張られた虚偽証言であったことが判明、陪審員の審議に影響を与えたとしてこの一審判決は破棄され、裁判をやり直すことになった。このやり直し裁判でも、アンドレア側は狂気による犯行のため無罪を訴えていたが、今回の判決で陪審員は全員一致でアンドレアの主張をみとめ無罪判決を下した。陪審員の一人は「今までごく普通の生活を送ってきた主婦がある朝突然5人の子どもを殺した。これが狂気でなくてなんであろう?」と、アンドレアの殺意を否定、彼女の責任能力を否定した。

ジョンソン宇宙センターのエンジニアであり、最近再婚して2児の継父になったアンドレアの元夫、ラスティもアンドレアの無罪を訴え彼女を応援してきた。ラスティ自身は、5人の子どもを一瞬にして失ったのだが、アンドレアの凶行を責めることなく、「彼女はそのとき産後の精神異常状態にあったのだ。」と言い、「彼女が適切な治療を受けることなく刑務所の独房で狂気のまま生きながらえるよりは、きちんとした治療を受け、後に通常な生活を送れるとすれば、その方がいいに決まっている。」アンドレアは凶行の前に、用もないのに何度もバスタブに水を張っていたといい、子ども達を沈める前に”適切な治療”を妻に受けさせておくべきであったのでは?という疑問に対しても、「我々は精神科にも行った。しかし医者は適切な診断が下せなかったのだ。責任は精神科医にある。」と反論している。

5年という歳月は5人の死に対する処罰感も軽減するのか。しかし陪審員は子ども達のいたいけない写真をみたり、彼らの死に至る過程についての実況も受けたという。判決を決める前に子ども達の霊に対し10分間の黙祷を行ったという。その上で、アンドレアの罪に問えない狂気を認定した。確かに、我が子を1人残らず殺してなお、無罪を主張できる神経はやはり狂気の沙汰としかいいようがない。もし、まともだったら、事実を前に正気を保てるわけがないから、やっぱり狂気には違いないのだろう。となれば、子殺しはことごとく狂気の沙汰になってくるような気もしないでもないが。

というわけで、母親が産後に主にホルモンバランスの変化や新生児を抱えた生活へうまく適応できず、情緒不安定になったり鬱状態になることは知られていたが、精神異常をきたし殺人を犯す場合もあるということが明らかになったのである。今後、Postpartum (産褥期)の精神的なトラブルに対するケアは重要なテーマになるであろう。罪に問えないほどの狂気も産後に発生するかもしれないのである。

尚、元夫ラスティは、子ども達のことを忘れていないし、アンドレアに定期的に面会してきた際、二人で子ども達の思い出を語ることもあるという。「しかし、死んだ子ども達やアンドレアといつまでもいっしょに生きていくことはできない。私は自分の人生を前に進めていきたい。今の家族との生活を考えていきたい。」
もっともであるが、何か割り切れないものも残っているような気がする事件である。特にアンドレアの狂気状態について、「そのとき彼女の中にはサターンが入ってきていた。彼女はこの行為(殺害)が違法だとはわかっていただろうが、サターンから救うためにはやむ得ないと思っていたのだ。」とは弁護側の主張。”サターンが入ってきた”から無罪ですっていう主張どっかで聞いたような…


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