カフェウィステリアのワイドショー的アメリカ事

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スペースシャトル打ち上げ延期

2005年07月15日 | ワイドショー的アメリカごと
すでに船内に乗り込んでいたミッションスペシャリストの野口さんも思わず小さなため息をつかれたのではないだろうか。もちろん、野口さんがちょっとやそっとでは心を乱されるような凡人でないことは承知であるが。ディスカバリの打ち上げ延期は発射時刻20分前というところで決定された。理由は天候ではなく、「燃料センサーの不具合」であった。

5月に一度は発射台に備え付けられたシャトルは、その時も打ち上げのゴーサインがでず再点検のために再び作業錬へと戻されてしまった。今回も技術的にはほぼゴーサインが出ているとみられていたのだが、結局ダメだった。ケネディー宇宙センターがあるフロリダは本格的なハリケーンの季節を迎えておりますますシャトル打ち上げのスケジュールは難しくなっており、次のターゲットは秋口までずれ込む可能性もある。

もちろんNASAがこれほどまでに神経質になっているのは、コロンビアの惨事から2年半あまりシャトル再開にもはや失敗は許されないからである。再び事故が起こればシャトル計画そのものが頓挫する。

シャトルの事故は過去2回起きている。一度目は1986年のチャレンジャーの打ち上げ直後の空中爆発。この事故は、ビジネススクールの生徒なら一度は「チャレンジャ-ケース」としてケーススタディの題材としてお目にかかったことがあるだろう。真冬の氷点下という低温で、燃料タンクと本体をつなぐ「Oリング」という部品の耐性に問題があることは技術者の間では理解されていたが、NASAのお偉方達は「スケジュール通り」の打ち上げにこだわっていた。すでに、昨年からの延期に次ぐ延期が、彼らを追い詰めていた。
「今頃何をいっているんだ。どうしてシャトルは打ち上げられないんだ!」
イラつくNASA幹部に、技術者達は口をつぐんでしまう。みんな、NASAの置かれた立場を痛いほどわかっていたのだ。宇宙にはカネがかかる。巨大な予算を獲得するためには政治家のみならず国民の支持が必要だ。一度、「アポロ」で味わった栄光をもう一度。シャトルがまるでバスのように定期的に宇宙と地球を往来する安全で身近な乗り物だと証明したい。チャレンジャーには、若くて美しい小学校の女性教師も乗り込んでいた。子ども達に宇宙から授業をするために。そして、「Oリング」はもたなかった。

チャレンジャーケースは技術的には事故が予見できていたにもかかわらず、マネジメントや組織上の問題から事故を引き起こしてしまったとされる。しかし、2年半前のコロンビアの事故は、打ち上げのときに落ちてきた耐火レンガの破片が翼に小さな穴を開け、その穴が大気圏再突入の際の空中分解の原因になったとされる。つまり、技術的な問題なのである。NASAが誇る「フェールセーフ」で完全に整備したハズだったのに。コロンビアの事故はNASAの「技術力」に疑問符をつけてしまったのだ。シャトル計画ばかりでなく宇宙を扱うNASAそのものへの安全性への疑念を払拭するためにも、シャトルを再び運行させてみせないといけない。

ブッシュ大統領はコロンビアの事故の後も「宇宙開発」を積極的にすすめることを強調しており、宇宙ステーション計画の続行や「火星有人探査」も約束している。しかし、金食い虫の「宇宙ステーション」もロシアが金欠状態で日本も昔ほど大盤振る舞いもできない状態で、当初計画を縮小したり、結構重荷になっているのも事実。地面での「テロ対策」やイラクなど地球上の民主化に巨大なカネがかることもあって、NASAの旗色もさえないのである。NASA復権をかけてシャトルの完璧な打ち上げへのストラッグルは続いている。

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