カフェウィステリアのワイドショー的アメリカ事

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水没ニューオリンズの悲劇(現在進行中)

2005年09月04日 | ワイドショー的アメリカごと
カリブ海からメキシコ湾へとアメリカに向って北上してくるハリケーンはアルファベット順に女性の名前が付けられる。カトリーナ(K)は、今年11個目のハリケーンだが、最強のランクであるレベル5とされ、強制避難勧告が出ていた。人々は当座のモノを車に詰め込んでニューオリンズから脱出、避難する車が高速道路を埋め尽くした。

しかし、ニューオリンズは街のほとんどが海抜ゼロ以下。高潮、堤防決壊によって、道路は冠水、市長の避難勧告はあっても街中に住む人々にとって物理的にルートはすでに失われていた。カトリーナ上陸から明けて、街は8割が水没、市外に出られなかった多くの市民はコンベンションセンターやスーパードームに逃げ込んだが、陸路が絶たれて孤立した。

阪神大震災のときも救援物資が届くまで3日かかったとされるが、数万人が集まったスーパードームには3日たっても救援物資は届かなかった。電気は切れたまま、ドーム内は蒸し風呂、トイレは汚物で溢れかえった。高齢者の中にはそのまま息を引き取った人もいたが、一目についきにくい裏側に布をかけられただけで放置されていた。人々は苛立ち、殴り合い、ヘリによる食糧投下も万単位の人間が集まっているだけにパニックが怖くて控えていると報道されていた。

ゴーストタウンと化した街中は発砲事件や略奪、殺人が横行していると伝えられ(あくまでも伝えられただけであるが)、医薬品を求めて病院が襲われ、ニューオリンズ市長は、「早く助けてくれっていってるんだ。4万人の軍隊がいるんだ。」と放送禁止用語を交えながら怒りをぶちまけた。そして被災地に最初に到着したのはマシンガンを構えたイラク帰還兵の部隊だった。

ルイジアナ州知事は、「彼らはついさっきまでイラクで戦いの最中にいた連中だ。マシンガンも使い慣れている。無法者に対しては容赦なく撃ってもらって構わない」と治安維持に断固たる姿勢を示した。

まるで、内戦でメルトダウンした国かと思わせる光景に、アメリカ市民もこれが自国の出来事とは信じられないだろう。そして、市内に取り残された人々は、脱出したくても車がなくて逃げられなかった貧しい人々である。アメリカの都市の典型として、低所得層は街の中心に多く住んでいるため郊外に住む中高所得層より脱出に不利だった。ニューオリンズ市はもともと人口の6割以上が黒人であるが、スーパードームの難民たちはことごとく黒人で、テレビは彼らに銃口を向ける治安部隊の映像を映し出した。

救援より治安優先のこのやり方には、各黒人団体も一斉に反発している。4日目になって冠水した道路を救援物資を積んだ軍のトラックが列をなして市内に入り、またスーパードームから被災者たちのバス搬送も始まったこともあって、多少の落ち着きを取り戻しつつある。5日目の今日には、さらに多くの治安部隊が到着、その司令官が、配置につく隊員に対して銃口を下げるように指示、隊員達がマシンガンを肩からはずすと、被災者達が拍手するシーンが映し出された。そうだ、輝かしいアメリカにおいて、市民に兵士が銃口を向けるなどあっていいはずがない。

被災民たちは空港までバス搬送され、空路でテキサス州の収容施設へ向っている。ヒューストンのアストロドームはすでに簡易ベッドで埋め尽くされ、他の二つの施設にも続々被災者たちが到着している。

犠牲者の数は公式にカウントされているのはまだ百数十人だが、メディアは数千人に及ぶとも1万人突破するだろうとも伝えている。水はポンプで汲み出さないといけないので水が引くまでには数ヶ月、街では不審な爆発から火災が発生しており、復旧と治安回復にはしばらく時間がかかりそうである。最近の地盤沈下の原因ともいわれているが、ルイジアナは主要な原油の産地でもあり、全米各地でガソリンの値段がさらに跳ね上がった。ブッシュ大統領は、救援が遅れていることを認め、ガソリンの便乗値上げをたしなめ、国民にガソリンを節約せよと言っている。

遠いイラクの治安のために毎日アメリカ兵の命を消費しているブッシュ大統領だが、突如起きたカトリーナ災禍はアメリカ国内の治安のもろさをみせつけた。やはり外交より国内が優先だろう。イラクに湯水のごとくカネをつぎこんでいるのなら、ニューオリンズにもつぎこんでいいはずである。ニューオリンズ救済が遅れれば、さらにブッシュ批判が勢いを増すことになるだろう。

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