ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

Apple Watch 、Apple Watch series 2 。

2017年09月18日 | blog

今は2017年9月18日で、Apple Watch series3が発表されたところなので、愛用してきた初代とseries2について、ざっと総括しておきたいと思います。


初代:ステンレス42mmスポーツバンド

 様子見で安価なアルミモデルにした人が多かったと思いますが、結果的にステンにして正解だったと思っています。初代の魅力はとにかくそのトロッとした「モノとしての可愛さ」が強烈で、ステンのモデルはそこがずっと楽しめました。あまり言及されませんが、ガラスも素材が違っていて、ステンレスモデルのガラスの方がトロッと感は強いです。ゴロリとした重さも良かった。アルミとステンで機能差はないので、あくまで素材/仕上げのみということになりますが、「機能だけではない価値」はApple Watchの価値そのものなので、Apple Watchのあり方を理解するためにも選んで良かったと思っています。

そのぶんソフトウエアは未成熟で、特に動作の遅さが気になりました。iPhoneとの同期はBluetoothのみ。特に大容量の音楽の転送は不安定で、一度もうまくいきませんでした(Macとの接続手段はありません)。そもそも手持ちのBluetoothイヤホンはどれも繋がりませんでした(これについては別途、AirPodsについて書こうと思います)。写真は指定したアルバムの同期ができますが、アルバムをわざわざ変更しようという気にはなりませんでした(「お気に入り」を同期するようにしていて、そのままです)。

使用して一年ちょっと、ちょうど保証が切れた頃に、液晶の端に浸みができたように欠けてきて、新品交換になりました。AppleCareには入っていなかったので、25,000円の実費です。それでも捨ててしまうよりはマシ…と割り切りました。バッテリーは一日で70%くらい消費しますが、一年で本体が新品になっているので、バッテリーのへたりは今でも気になりません(おかげで、初代はいまだに現役です)。自分の周りにも、初代はハード的なトラブルで使えなくなってしまった人がいました。アルミモデルだとそのまま諦めてお蔵入りになった人が多いですが、ステンは高かったので諦められませんでした…そこはまぁ、良し悪しです。

文字盤がユーザーにしか見えない、というのも驚きでした。腕時計というのは多かれ少なかれ/好むと好まざるとにかかわらず、周りの人の目につくので、多彩なデザインの文字盤は「周りへのアピール」も大いに期待されたはずです。が、買った人はわかると思いますが、文字盤はユーザーが見ようとした時以外はほとんど点灯しません。同僚のApple Watchユーザーがどんな文字盤を使っているか、私はほとんど知りません。つまり、「見られる」のはあくまでハードだけで、そういう意味でも、ステンの存在感は良かったと思っています。


series2:アルミ42mmスポーツバンド

 2台目は、雰囲気より機能が欲しかったのでアルミにしました。スポーツバンドにしたのは、いくつかの種類のバンドが出ていますが、結局シリコンのスポーツバンドが一番完成度が高く、魅力的と思ったからです。マーク・ニューソンは過去の仕事(アイクポッド)でもほとんど同じバンドをデザインしているので、そこから脱却しない、できないほどの完成度があったのだと理解しています。

 2台目を買った理由は大きくは二つ。GPS内臓と、Apple Pay対応です。朝ランを始めたので、Apple Watchだけでワークアウトアプリが使えるのは重要でした。特にiPhoneが6Plusだったので、ランニングで持ち運ぶのはしんどかった。Apple Watch単品でのGPS測位はiPhoneと遜色ありません。

 Apple PayはiPhone7と同時に始めました。それぞれ個別のSuicaを持つ形になるので、メインとサブという使い方になっています。当初、Apple WatchでのSuica決済は手ぶらで良い!と思いましたが、FeliCaリーダーが「手に持った端末を受ける」前提に設置されているため、姿勢が不自然になりがちなので、どうしてもサブの扱いになっています。特に駅の改札では、一旦立ち止まって、変身ポーズのように左手を突き出すことになるのでいつも緊張します。また、手ぶらなのは事実ですが、そもそも四六時中iPhoneを触っている=大抵の状況でiPhoneを手に持っているので(笑)、それほど利便性を感じません。とはいえ、「いざという時のために500円玉が入るキーホルダー」ってあるじゃないですか。あれのすごい奴の感じ。オフィスで対応の自販機から水を買ったり、朝ラン中に切れた牛乳買って帰るには最高です。贅沢な使い方ですが。ちなみにどちらもオートチャージ設定です。

全体的に動作は速くなり、バッテリーは一日使って30%しか減りません。1〜2泊の小旅行であれば充電器は不要です(寝るとき電源を切っておけば安心です)。初代に比べ、だいぶ「本当にやりたいこと」に近づいたモデルと言えるでしょう。


Apple Watchが変えたもの

 時間を除く基本的な機能は「通知」です。腕時計に通知が来ることのメリットは、「通知の一次振り分け」ができるということ。もっと言うと、「大事な通知以外は、チラ見でスルー」を実現することです。どうでもいい通知をキッカケにiPhoneを開いてしまい、そのままズルズルとSNSを見てしまう…というスマホあるあるを回避できます(例えばFacebookがApple Watchアプリをリリースしないのは、このへんが理由と推測します。SNSは多かれ少なかれ、通知からの滞留を期待していると思いますので)。

ただ、これによって「本当にiPhoneを見る時間が減ったか」というと、そこはご想像の通りです(笑)。見ている時間は変わらず、見方がやや効率化されただけ…

 もう一つは、素直な付加機能です。特によく使うのは、天気、タイマー、スケジュール、リマインダー、日の出/日の入り、ワークアウト。

天気と気温は毎日気にします。
タイマーは、残りの作業時間を視覚化したり、新幹線の乗車時間や見ている映画の上映時間の残りを知るために。
スケジュールは次の予定を常に意識するために。
リマインダーは場所や時間に紐づけて、買い物や用事をリマインドします。
日の出は朝ランの時や小学生の娘の帰宅時間に陽があるかを知るために。
ワークアウトは朝ランもそうですが、その日の運動量の把握に。

 Apple Watchが真価を発揮するのが、それらの機能を割り当てた文字盤が、スワイプで瞬時に切り替えられることです。朝ランモード、仕事モード、出張モード、映画鑑賞モード、休日モード…と、あらかじめ仕込んでおいた文字盤をサクサク切り替えて使います。ここがApple Watchの真骨頂と言っていい。従来の腕時計にはできないところです。

series3への期待

 series3ではeSIMの内臓がアナウンスされています。つまり、iPhone無しでも通信が可能ということです。ソフトバンクではSMS/MMSは非対応とアナウンスされていますが、iOS機器同士のメッセージであるiMessageには対応しているようです。音楽プレーヤーとしても、単体でApple Musicへの接続が可能なので期待できます(本当は、最近はPodcastばかり聞いてるのでPodcast対応をお願いしたいんですが…ここはバージョンアップに期待)。

 大きな流れとして二つ感じていることがあります。
一つは、プロダクトの分割。全てがスマホに集まりすぎた状況を、(スマホを核にしながらも)分割して、利便性や所作を洗練させること。

もう一つは、プロダクトとしてのスマホの存在の希薄化です。iPhoneXではますます「画面だけ」の思想を推し進めましたが、要は「中身だけ」「UX」だけが目指すところで、究極的にはプロダクトは無くて良い。時計やメガネに「分解」してゆくのも、本体/スマホの存在を薄めてゆく流れの一貫と理解しています。

そして、eSIM内臓のseries3は、この二つをさらに推し進めてゆくのではないかと思っています。だって、iPhoneを携帯していなくてもできることが増えるんですから。
(※しかし引き続き、iPhoneを「所有」していることが前提ですが!)