グリーンブルーのカーボン・オフセット

カーボン・オフセットプロバイダーのグリーンブルー株式会社が、地球温暖化に関連するニュースやその時々の話題をお届けします。

今もホットな“光化学オキシダント”

2014-07-26 15:05:13 | 大気汚染
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


関東地方も平年より1日遅れで、7月22日に梅雨が明けました。梅雨明け以降、真夏日や猛暑日が続いています。

ちなみに、真夏日とは、1日の最高気温が摂氏30度以上(35度未満)になる日をいい、猛暑日とは、1日の最高気温が摂氏35度以上になる日をいいます。

“猛暑”ということで、地球温暖化との関連がすぐに思い浮かびますが、今回は「光化学オキシダント」に焦点を当てて紹介します。

さて、横浜市環境創造局が光化学オキシダントについて、丁寧に説明していますので紹介します

光化学オキシダント(OX)とは、「光化学スモッグ」の原因となる大気中の酸化性物質の総称です。
工場や自動車などから大気中に排出された「窒素酸化物」(NOX)と「炭化水素」(HC)は、太陽光線に含まれる紫外線を受けて「光化学反応」を起こして変質し、オゾン(O3)を主成分とし、アルデヒドやパーオキシ・アセチル・ナイトレートなどを含む酸化性物質が二次的に生成されます。一般にこれらの大気中の酸化性物質のことを総称して「オキシダント」と呼びます。

大気汚染防止法では、このオキシダントのうちで、中性よう化カリウム溶液と反応して、よう素を遊離する物質のことをオキシダント(「全オキシダント」)と呼びます。さらに、この全オキシダントの中から、二酸化窒素(NO2)を除いたものを「光化学オキシダント」(OX)と呼び、光化学スモッグが発生しているかどうかの指標物質として、環境基本法に基づく環境庁告示により環境基準が設定されています。
大気の常時監視において、単にオキシダントと言えば、環境基準が設定されている光化学オキシダントのことを指します。

光化学オキシダントの環境基準は、「1時間値が0.06ppm以下であること」と定められています。また、環境基準のほかに、以下のような注意報、警報の発令基準が設けられています。

注意報:光化学オキシダント濃度の1時間値が0.12ppm以上で、気象条件からみて、その状態が継続すると認められる場合に、大気汚染防止法第23条第1項の規定により都道府県知事等が発令します。
警報:警報各都道府県等が独自に要綱等で定めているもので、一般的には、光化学オキシダント濃度の1時間値が0.24ppm以上で、気象条件からみて、その状態が継続すると認められる場合に都道府県知事等が発令します。

光化学スモッグは、4~10月の間、陽射しが強く気温が高く、風が弱いなどの気象条件が重なり、大気中で拡散されずに滞留して、濃度が高くなると発生します。
空が霞んで、白いモヤがかかったような状態のことを「光化学スモッグ」が発生しているといいます。

東京都は、光化学オキシダントが高濃度になる条件を次のように整理しています。
気温:日最高気温が25℃以上
日照:日照があること(日射量13MJ/㎡/日以上)
海風:東京湾及び相模湾からの海風の進入があること
安定度:安定であること。館野高層気象台9時の状態曲線0~1000mの僅差が7℃以下
上空の風:館野高層気象台9時の状態曲線で1000m以下の風が南よりの風でないこと
天気図:太平洋高気圧に覆われた夏型の気圧配置(鯨の尾型)、移動性高気圧に覆われた気圧配置、低気圧や前線の間の高圧部で気圧傾度が緩い場合

環境基準が設定されている大気汚染物質の中で、光化学オキシダントのみ、達成率(平成24年度)が一般局で0.4%、自排局で0%であり、PM2.5を除く他の項目の達成率が軒並み100%に近い中で、極端に低い数値となっています。

環境省は達成率の改善を目指して、これまでも原因物質である揮発性有機化合物(VOC)や窒素酸化物(NOx)の削減を進めてきました。その甲斐あって、VOCやNOXは減少しましたが、一方で、光化学オキシダントについては一向に改善が見られず、むしろ注意報発令地域の広域化が進みました。

依然として、光化学オキシダントが高濃度になっている真因はつかめていませんが、環境省は専門家による検討会での議論を通じて、以下の2点を挙げています。(長期トレンドとして3点を挙げていますが、3点目は減少要因のため割愛しました)
(1)窒素酸化物の排出抑制による局所的NO濃度低下によってもたらされた「NOによるタイトレーション効果※の低下」による都市部におけるオキシダント濃度の増加。
※タイトレーション効果とは、一酸化窒素(NO)がオゾンと反応して二酸化窒素になり、同量のオゾンを減少させること。
(2)「越境汚染の増加」によってもたらされた光化学オキシダント濃度の増加に基づく中位、下位及び平均の光化学オキシダント濃度の増加(これらの傾向は、大陸に近い西日本で特に顕著にみられた。)

現在、光化学オキシダントに関する議論は、環境基準の見直しへと移っており、本(2014)年3月には、世界保健機関(WHO)の指標や米国の環境基準と同様の「8時間値」を念頭に、基準値が設定されることになりました。

光化学スモッグは、あまり報道されないため、遠い過去の現象と思っている方も多いかもしれませんが、大気汚染分野では、現在でも濃度の減少が見られない、ホットなトピックといえます。

連日の暑さのため、熱中症に注意することはもちろんですが、光化学オキシダントについても、高濃度になり、注意報や警報が発令されやすい季節ですので、発令された際には、屋外での活動を控えるなど、注意されることをお薦めします。


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天気と大気汚染を主な対象として、予報やデータの需要を考える

2014-07-20 01:01:23 | 大気汚染
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


日本に暮らす我々にとって、天気予報は毎日チェックするものであり、もっとも身近な自然科学の知見を利用する機会といえるでしょう。

では、なぜ天気予報は我々にとって必要なのでしょうか?
思考実験として、次のことを考えてみましょう。
もし連日晴天が続くとわかっていたとしたら、もし連日30℃以上が続くとわかっていたとしたら、天気予報は必要でしょうか? 極端な事例として、降雨がまれな砂漠地帯での天気予報を想像して下さい。

しかし、“残念ながら”日本の天気はそのように単調ではありません。
杵島氏らが日本の天気の特徴をわかりやすくまとめていますので要約します。

日本は地理的要因から、季節の変化が明瞭な国である。日本列島は中緯度の温帯域に位置し、冬には北方の寒気に、夏には南方の暖気に覆われるため、気温の変化が大きい。春や秋にはジェット気流が上空を流れ、低気圧や高気圧を西から次々に運んでくるので天気の変化が目まぐるしい。またユーラシア大陸の東縁に位置し、大陸の乾いた大気と海上の湿った大気の双方の影響を受ける。モンスーン気候にも属し、梅雨のような雨の多い季節もあれば乾燥した季節もある。

では、なぜ天気予報は我々にとって、重要なのでしょうか?
それは、天気の違いによって、日常生活や業務に影響が及ぶからといえるでしょう。身近なところでは、傘の必要性や屋外行事を実施すべきかどうかの判断があり、影響が大きいところでは、台風やゲリラ豪雨による生命・財産の危険性が挙げられます。

ここで視点を変えます。
では、皆様は天気予報のほかに、何の予報があれば役立つとお考えでしょうか?
放射性物質拡散予報でしょうか? PM2.5予報でしょうか? 地震予報でしょうか?
前二者については試行的に運用がスタートしています。
以下、順番に考えていきましょう。

放射線量の情報については、3.11以後、各種マスコミにおいて、詳細な情報提供が行われていましたが、3.11から3年が経過した現在では、少なくとも首都圏においては日常生活レベルにおいてデータを目にする機会は減少しました。
これは放射線量が低下したからであり、今後を見据えても、人々が気にする発生源が自然放射線ではなく、原子力発電所であり、かつ、事故由来に限定されるからといえるでしょう。また、現時点において、原発が停止していることも挙げられるでしょう。
このことを前提とすると、緊急時を除き、予報(予測)を必要とする人々も減少していることでしょう。

ちなみに、放射線の予測については、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が、原子力発電所などから大量の放射性物質が放出されたり、そのおそれがあるという緊急事態に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度および被ばく線量など環境への影響を、放出源情報、気象条件および地形データを基に迅速に予測することになっています。

次に、PM2.5についてはどうでしょうか? PM2.5は2013年の1月に中国からの越境汚染が報道されて以降、急激に注目度が高まりました。PM2.5自体は、2013年以前から中国より飛来しており、PM2.5のデータを日常業務において扱っている研究者や環境省、グリーンブルーのようなモニタリング企業にとっては、特別なことではありませんでした。

越境汚染の影響を受けやすい九州をはじめとした西日本は、引き続きPM2.5の情報に対して敏感でしょうが、東日本では一時の報道が沈静化したこともあり、注目度は下がっているように思われます。
PM2.5の予報は、国立環境研究所の大気汚染予測システムなどより情報公開されていますが、一時ほどの注目度はないように思われます。

PM2.5以外の大気汚染物質では、光化学オキシダントに注意報、警報の発令があり、また、環境基準をクリアしていないことから、対策の重要性は高いのですが、あまり話題になることはありません。ましてや環境基準をクリアしている他の物質については話題になることはほとんどなくなりました。

次に、地震についてはいかがでしょうか? 3.11以降、東海・東南海・南海地震や、首都圏直下型地震に対する危機感が高まっています。地震はひとたび発生すると、影響が甚大なので、予測に対する需要も高い状況にあります。
しかし、日本地震学会のホームページを見ても、
「地震予報」は、現在のところ行っていません。時間を指定した短期的な予知は、 現在の技術では「ほとんど」できないと考えられているからです。
と記さています。

上述のようなデータや予報についても、他の商品やサービスと同様に、需要と供給のバランスによって決まり、その背景には必要性と重要性の要因があると考えられます。

予報の重要性は、天気、放射線、PM2.5(大気汚染)、地震ともいずれも高いと思われますが、日常生活における予報の必要性については、天気と(予測困難でかつ、影響の大きい)地震以外は、高くないように思われます。

さて、筆者らは日常生活において、重要性が高いながらも、一般の人々の関心をあまり集めることのなくなった大気汚染領域において、測定データの精度管理の重要性を地方公共団体の関係者に熱心に説明しています。しかし、冷静に考えると、それも需要と供給によって必要性が決まります。

天気予報のように、人々の関心(必要性)が高く、予報の外れが問題視されるような領域では、非常に高い精度に対する需要がありますが、環境基準を達成し、人々の関心も薄い大気汚染データについては、精度に対する需要もそれほど高くありません。

本来、一般環境大気の汚染濃度は、数ppbの単位で議論すべきですが、場合によっては、1桁違った単位で、判断されることもある状況です。

筆者らはその問題点を繰り返し指摘していますが、供給側の論理であり、なかなか受け入れられません。
それは、多くの項目で環境基準をクリアした我が国において、そこまでの精度を求めても仕方がないという社会の判断なのでしょう。

皮肉なことですが、環境が改善することによって安全性が増すと、大気汚染の予測の必要性はなくなり、環境が悪化し、社会が不安な状況になると予測の必要性は高まります。言い換えると、社会が問題視したときに、予測や測定データに対する需要が高まるということです。

当然、環境改善を目指す企業としては、これまでの延長線上において、大気汚染データの需要が高まることを期待できません。
この先も大気汚染防止法が存在することから、公的需要は続くでしょうが、BtoCを視野に入れるならば、天気予報と同様に必要とされる情報を提供していくしか方法はないでしょう。具体的には、個人特性(ex.高感受性者)にあった情報提供や、小児・高齢者の施設や病院に最適化した情報提供など、需要を見据えた展開が考えられます。
精度が高いデータだから・・・、信頼性の高いデータだから・・・の論理ではない、需要ありきのデータこそが価値ある情報といえるでしょう。

理想に燃えると、あるべき論に走りがちですが、自己満足に終わらないためには需要を見極めることの大切さを改めて考えた次第です。

参考文献
杵島・松本・左巻、2006、新しい高校地学の教科書、講談社ブルーバックス


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夏祭りの起源をもとに、防災を考える

2014-07-19 17:27:27 | 防災/減災
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


夏祭りのシーズンになりました。
東京の隅田川の花火大会(7月26日)をはじめ、全国各地で、花火大会や夏祭りが予定されています。

夏祭りは豊作を祝う秋祭りとは異なり、死者を供養し災いを鎮める慰霊、鎮魂の意味合いも強いと言われています。

例えば、隅田川花火大会のホームページを見ると、以下のように由来が記されています。

享保17年(1732)の大飢餓で多くの餓死者が出、更に疫病が流行し国勢に多大な被害と影響を与えました。
幕府(8代将軍吉宗)は、翌18年(1733)5月28日(旧暦)犠牲となった人々の慰霊と悪病退散を祈り、隅田川で水神祭を行った。この時に、両国橋周辺の料理屋が公許(許可)により花火を上げたことが由来とされています。

また、日経新聞では、2011年6月23日に「隅田川花火・仙台七夕…夏祭りの起源は災害 鎮魂担う」という記事にて、災害と祭りの関係を次のように整理しています。

・貞観4年(862年):京都で疫病流行 ⇒ 京都で朝廷主催の「御霊会」(863年)
・貞観11年(869年):悪疫流行や貞観地震・津波 ⇒ 祇園祭の始まり(869年)
・享保17年(1732年):享保の大飢饉 ⇒ 両国の川開き(1733年)、現・隅田川花火大会
・天明2-8年(1782-88年):天明の大飢饉 ⇒ 仙台七夕(1783年)

さて、近年、地震、津波、洪水、土砂崩れなどの自然災害に対して、自然科学と人文科学(歴史、民俗学等)から、ともにアプローチする動きが見られます。

櫻井氏は、「災害の民俗的イメージ」の中で、それぞれのアプローチを次のように説明しています。
「地震、津波、洪水、噴火、落雷、土砂崩れなどはなぜ起きるのか。自然現象としてみた場合、科学的な立場においては、理工学的な視点から自然災害の要因分析をするであろう。しかし民俗学的な災害論は、自然災害を社会現象あるいは文化現象としてとらえ、要因を人為的因子に求める。人為的因子である以上、災害の発生は決して不可解なのではなく、人間世界に原因があることになる。災害は神意のあらわれ、天からの警告として解釈された。」

櫻井氏の上記の論文の中には、多くの興味深い伝承が記さています。例えば、土砂流を杭でせき止める技術に関する伝承として、龍女の話を紹介しています。

新潟から東北地方には、大蛇の化身と思われる龍女が山津波を起こし、麓の村を押しつぶそうとする伝説が分布している。龍女は琵琶を聞かせてくれた御礼に座頭だけを助けようとするが、座頭は山を下りて村人に知らせ、龍女の嫌う鉄の杭をあちこちに打ち込んで村を守ったという話である。水神の龍が鉄を嫌うのを利用した予防伝承である。

また、祭祀・儀礼にも焦点を当て、次のように紹介しています。

水害に対しては、たとえば大井川の流域に多くの「川除け地蔵」「水除け地蔵」が建つように、地蔵が水害から守ってくれると信じて祀る。近世中期以降、新田開発で洪水の恐怖にさらされていた地域(宮城県北上川流域など)には虚空蔵信仰が残っている。それは虚空蔵菩薩に水害防止の性格があるからである。また虚空蔵信仰が分布している地域では鰻を食べない習俗があるが、それは鰻が虚空蔵の化身と信じられているためである。

実は、祭り・信仰については、国土交通省もデータベースを整理しており、約70例を紹介しています。

夏祭りや鎮魂については、3.11以降、災害伝承の観点からも見直されています。
津波にまつわる伝承としては、「稲村の火」が有名です。ウィキペディアをもとに紹介します。

村の高台に住む庄屋の五兵衛は、地震の揺れを感じたあと、海水が沖合へ退いていくのを見て津波の来襲に気付く。祭りの準備に心奪われている村人たちに危険を知らせるため、五兵衛は自分の田にある刈り取ったばかりの稲の束(稲むら)に松明で火をつけた。火事と見て、消火のために高台に集まった村人たちの眼下で、津波は猛威を振るう。五兵衛の機転と犠牲的精神によって村人たちはみな津波から守られたのだ。

我々は、自然災害を考えるとき、自然科学のみを念頭において、対策を考えがちです。しかし、数十年に1回、数百年に1回、起きる大災害に対しては、依然として自然科学の力だけでは対応が不可能です。それらを補う意味でも、祭祀・儀礼・伝承は意味があるでしょう。

冒頭に記したように、多くの夏祭りには、鎮魂の意味があります。それをふまえた上で、起源となった災厄を知ることは、今後の防災を考える上でも意義のあることでしょう。

楽しいだけの祭りから、祭り本来の意味を考えてみる必要があるように思います。

参考文献
櫻井龍彦、2005、災害の民俗的イメージ -「記憶」から「記録」へ、そして「表現」へ、京都歴史災害研究、第3号、pp.1-20

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異常気象と地球温暖化とヒューリスティック

2014-07-06 22:51:53 | 地球温暖化
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


6月以降、異常気象を思わせる事態が頻繁に発生しています。
例えば、6月24日午後には、東京都世田谷区や練馬区、調布市、三鷹市において、大量の雹(ひょう)が降り、一部では真冬のような銀世界になりました。
また、6月29日には、激しい雷雨や強風の影響で、東京都と埼玉県において、9,000世帯以上が停電になりました。

いずれも異常気象を思い起こさせるような事象ですが、1つ1つの事象の原因を地球温暖化と直接結びつけることはできません。それは、時間と空間のスケールが異なるからです。三隅氏は次のように説明しています。

「ゲリラ豪雨の空間の大きさは数キロメートル、時間の長さは約1時間。一方、地球温暖化の空間的な大きさは地球全体で、時間の長さは百年程度。このように空間の大きさも時間の長さもまったく異なった現象を原因と説明するのは飛躍がある。」

※また、三隅氏は、「集中豪雨」と「ゲリラ豪雨」の違いにつき、次のように説明している。
どちらも学術用語ではないため、はっきりとした定義はない。マスコミ報道では、3時間以上続くような梅雨前線に伴う大雨を「集中豪雨」と呼び、1時間程度の時間で、被害を発生させるような激しい雨を「ゲリラ豪雨」と呼んでいるようだ。

では、なぜ我々は、1つ1つの事象と温暖化を結びつけてしまうのでしょうか?
それには、利用可能性ヒューリスティックの存在が考えられます。利用可能性ヒューリスティックとは、取り出しやすい(想起しやすい)記憶情報について、頻度や確率を高く見積もり、優先的に頼って判断してしまうことをいいます。
これには、マスメディアがどれだけ報道したのかという背景もあります。

では、どのように考えればいいのでしょうか? それにはデータに基づいて判断することが挙げられます。

実は、気象庁のホームページをみると、様々な統計データがあります。
例えば、歴代全国ランキングのページをみると、最高気温や最低気温、最大1時間降水量や日降水量、最大風速の20位までの記録がわかります。
ちなみに、記憶に新しいところでは、高知県の江川崎で2013年8月12日に41.0℃を記録したことが記されています。

また、雨量については、最大1時間降水量の1位として、千葉県香取(1999年10月27日)と長崎県長浦岳(1982年7月23日)で153mmを、日降水量の1位として、高知県魚梁瀬(2011年7月19日)で 851.5mmを、記録したことが記されています。

その他、全国1位だけでなく、各都道府県の観測地点ごとの歴代1位の記録も10分単位で更新されているので、時間のあるときに確認されるといいでしょう。

忙しい日々で、時間の制約もあるでしょうが、これらのデータと日々の降水データを比較すれば、どれくらいの規模の降水量かがイメージできることでしょう。

さて、IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書では、気候システムの温暖化に疑う余地はなく、降水量は増加傾向にあると記されています。また日本に限っても、1時間降水量50mm及び80mm以上の短時間強雨は増加傾向が明瞭に現れていると記されています。
また、将来予測についても、今世紀末までに極端な降水がより強く、より頻繁となる可能性が高いと記されています。

筆者はIPCCの報告書の予測を信用していますし、それに対する危機感も有しています。
しかし、それでも1つ1つの事象と温暖化を短絡的に結びつけることはできないと考えています。

筆者としては、「温暖化が原因だ!」という内なる思いを抑え、ヒューリスティックではなく、時間、空間を捉えた説明こそ、科学的と考えています。つまり、1つ1つの事象と長期的傾向を混同することなく、冷静に見つめる複眼的思考が重要と考えています。

参考文献
三隅良平、2014、気象災害を科学する、ベレ出版

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