グリーンブルーのカーボン・オフセット

カーボン・オフセットプロバイダーのグリーンブルー株式会社が、地球温暖化に関連するニュースやその時々の話題をお届けします。

データを支える裏方(メンテナンス)にも注目を

2014-06-29 15:00:40 | 大気汚染
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


地球温暖化やPM2.5をはじめたとした大気汚染、日々の天気予報とも、いずれもデータが基本です。

“何を今さら?”という感じですが、今回は大気汚染をきっかけに、その裏側を少し紹介したいと思います。

正しい信頼性のある測定データが日々提供されるためには、窒素酸化物(NOX)、浮遊粒子状物質(SPM)、微小粒子状物質(PM2.5)、オキシダント(OX)、二酸化硫黄(SO2)などの大気汚染物質を測定する機器の正常稼働や、測定データを収集、解析、公開するためのテレメータシステムの正常稼働が必要です。
また、定期的にズレを見直す測定機器の校正も必要です。

これまで何回か、大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)を紹介してきましたが、グリーンブルーは、それを裏側で支えている、大気汚染測定機器のメンテナンスや校正、テレメータシステムの開発やメンテナンスを実施しています。

そらまめ君にデータ提供を行っている大気汚染の常時監視は、大気汚染防止法第22条に基づき、現在全国130の地方自治体(都道府県、政令指定都市、中核市、特例市、大防法政令市)により実施されています。また、大気汚染防止法に規定されていなくても、東京都23区の特別区のように自主的に実施している自治体も存在しています。

グリーンブルーは、測定機器のメンテナンスについては、首都圏を中心に、東北や関西の地方自治体をお客様として展開し、テレメータシステムについては、全国の地方自治体をお客様として、サービスを提供しています。

さて、少し話は変わりますが、最近、テレビ番組において、新幹線の正常運行を支えている裏方(システム)が紹介されていました。新幹線の時間の正確さを当たり前のように享受している我々一般利用者にとって、それがあまりにも当然のことのため、テレビ番組において紹介されない限り、改めて意識することはほとんどありません。

新幹線の列車自体のスピードでは、直線コースの多いフランスのTGVに劣っていますが、時間の正確さや安全性、快適性については、TGVを凌駕していると言われています。
※ネットに様々な比較サイトが存在するので、ご確認ください。
そして、それを支えているのは、メンテナンスを含んだ全体のシステムが優れているからです。

新幹線は、究極のメンテナンスの姿かもしれませんが、街を見渡せば、ビルやエレベータメンテナンス、OA機器のメンテナンス、高速道路のメンテナンス、プラントのメンテナンスなど、様々なメンテナンスに支えられていることがわかります。

しかし、筆者の主観も入っていますが、メンテナンスは業務の重要性と比較した場合、社会的な地位が必ずしも高くないと感じています。メンテナンス技術者の立場からすると、「正常稼働で当たり前、異常になったら怒られる、割に合わない業務」という感覚もあります。

何か異常が起きた時、初めてその存在意義がわかるメンテナンスという業務は、ニュースとして話題になる時も、その異常が話題の対象であり、それまで正常に稼働していた何十年にも及ぶ実績が話題になることはほとんどありません。
(例えば、最近でもトンネル事故やエスカレータ事故等、メンテナンスの不備に焦点を当てた報道がなされていました。)

高度成長期に建設された高速道路や橋梁、トンネル、ビル等の各種インフラは、財政的な制約がある中で、一部については寿命を迎えつつあります。
※社会資本整備を主な研究対象とする土木学会では、この問題について「アセットマネジメント」の必要性等に見られるように、以前から警告を発していました。

大気汚染の常時監視についても、高度成長期における大気汚染の深刻化に合わせて一気に測定網が整備されてきた経緯があり、オキシダントやPM2.5を除く各測定項目において、環境基準の達成率が向上している現在は、見直しに向けた過渡期といえます。

このような時代の変わり目において、適切なメンテナンスの実施は、危険回避のための予防保全や、測定機を含む各種インフラの長寿命化にも貢献します。

また、ICTの進歩につれて、メンテナンス業界においても、遠隔監視等、様々な技術革新が進んでいます。

メンテナンス業界は、新たな発見や発明、開発と比較して、派手さはありませんが、社会インフラを支えていることは事実です。

当たり前を支えている裏方(メンテナンス)にも注目していただけると幸いです。

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PM2.5を含むエアロゾルと雲の微妙な関係

2014-06-26 16:05:01 | PM2.5
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


エアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子)は気象とも大きくかかわっています。

エアロゾルは、昨(2013)年のPM2.5騒動から、大気汚染を象徴するワードの1つとなっていますが、今回は違う側面から、紹介したいと思います。

突然ですが、皆さんは、海は水で満たされており、その上空は水蒸気が十分に供給されているはずなのに、地上に比べて雲が少ないことを不思議に思ったことはありませんか?

以下、畠山氏等を参考に、紹介していきましょう。

・雲はエアロゾルの一種といえ、粒径は比較的大きく、5~80ミクロン程度。
・空気1cm3中の雲粒の数は100~1000個くらい。
・水蒸気を多く含む空気が冷やされると、水蒸気が冷やされて細かな水滴となり、雲ができる。
・太平洋のど真ん中などでは、空気中の水蒸気濃度は高いのに、なかなか雲ができず雨が降りにくい。これは空気が非常にきれいで核になるものがないため、雲ができにくいことによる。
・エアロゾルのような細かな粒子があると、その表面で水蒸気が凝結して水となり、雲の粒が形成される。雲ができるためには水蒸気だけでなく、核になるものが必要。
・水蒸気のみで液滴の雲粒を作るとすれば相対湿度で400%もの過飽和状態が必要となる。一方、エアロゾルがあると、100%を少し超えるくらいの過飽和状態で液滴が出来始める。

この現象は、冬場に吐く息が白いことでも説明ができます。冬場の白い息は、水蒸気が冷やされて、細かな水滴になったものですが、南極では、日本の冬よりも圧倒的に寒くてもあまり白くならないそうです。その理由は、南極の空気が非常にきれいなので、エアロゾルが少なく、水滴を作るときの核になるものがないため、水滴ができにくいからです。

また、雲は温暖化との関係でも注目されています。以下は、国立環境研究所の永島氏の説明です。

雲を構成する雲粒は、エアロゾルを核として水蒸気の凝結により生成されますが、エアロゾルの数が多い場合は少ない場合に比べて、同じ量の水蒸気がより多くのエアロゾルに配分されることになるため、雲粒ひとつひとつのサイズが小さくなります。このような小さい雲粒からなる雲は太陽光を反射する効率(この効率をアルベドと呼びます)が高くなります(雲アルベド効果)。また、小さな雲粒は雨粒にまで成長して大気中から除去されるまでの時間が長くなるので、雲として存在する時間が長くなり、太陽光を反射している時間がより長くなると考えられています(雲寿命効果)。いずれも地表に届く太陽光を減少させる効果があります。

PM2.5を含むエアロゾルは、中国からの越境汚染の影響で、非常に世間の関心を集めています。世間の注目が集まっている時期は、色々なものが動く可能性があります。
例えば、PM2.5の越境汚染の影響で、環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)につながっている九州地方の測定地点は、2地点から95地点に増加しました。

エアロゾルは、研究分野においても、大気汚染と気象をつなぐ、重要な位置づけにあると筆者は考えています。

エアロゾルは、将来の気候変動を正確に予測する際の不確定要素の1つになっています。PM2.5の越境汚染だけでなく、皆様のエアロゾルに対する関心が集まり、より一層の研究体制や行政施策が充実していくことを期待している次第です。

参考文献
畠山史郎、2014、越境する大気汚染 中国のPM2.5ショック、PHP新書
畠山・三浦編、2014、みんなが知りたいPM2.5の疑問25、成山堂書店

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大気汚染情報の有効活用に向けて

2014-06-23 20:46:51 | 大気汚染
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


本ブログでは、地球温暖化やカーボン・オフセットの情報を中心に紹介してきましたが、筆者も含めて、グリーンブルーにとって、大気汚染がメインの業務フィールドのため、今後は大気汚染についても、情報発信を始めたいと思います。

ただし、筆者自身、大気汚染については、カーボン・オフセット以上に、業務上、行政や学識経験者とのつながりが強いため、情報の取り扱いにつき注意する必要があり、限定的な情報発信になることをあらかじめご了解ください。

さて、皆様は、日常生活の中で、大気汚染の情報をご覧になることはあるでしょうか?
最近は、テレビの天気予報でも、通常の天気予報と合わせて、PM2.5の濃度を紹介するところが現れていますが、必要な情報は得られているでしょうか?

昨年のPM2.5騒動の影響で、すでに存じの方も多いかもしれませんが、それらの情報源は、環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)や、各自治体のホームページに依拠しています。関心のある方は、ご確認ください。

皆様はこれらのホームページをご覧になり、どのような感想をお持ちでしょうか?
ご自身が“見たい”、“知りたい”と思う情報は得られているでしょうか?

環境省は、昨年のPM2.5の騒動以降、PM2.5の情報発信に特に力を入れており、「微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報」というホームページより、適宜情報発信を行っていますが、わかりやすい内容になっているでしょうか?

近年、大学等の研究機関においても、アウトリーチ(研究成果公開活動)が推進されています。具体的には、科学について気軽に語り合うサイエンスカフェ、一般向けの公開講座・シンポジウムなどのイベント活動、WEBや書籍などのメディアを使ったコンテンツの発信などが挙げられます。

これらの活動は大学だけでなく、学術会議(学会)のレベルでも、公開講座や一般向け書籍の販売等に見られるように進展しています。

※ちなみに、PM2.5関連の一般向け書籍では、畠山史郎氏の『越境する大気汚染 中国のPM2.5ショック』、PHP新書が、わかりやすい内容になっていると思います。

このように、これまで比較的一般の方々とは距離感のあった行政(特に霞ヶ関)や大学、学会等が積極的に情報発信を行うようになってから、情報を求める人には比較的入手しやすい環境になってきているといえるでしょう。

しかし、これらの動きは、依然として一部に限定されているように思います。その原因の1つとして、情報発信の方法や、提供している内容が必ずしも一般の方々のニーズにフィットしていないことが推測されます。

これまでよりは改善しているとはいえ、行政、大学等の専門家やグリーンブルーのような専門業者は、必ずしも情報発信が“うまい”とはいえず、まだまだ改善の余地があると考えています。

皆様にとって、有効な情報提供に努めていきたいと考えていますので、「こんな情報があれば・・・」というご要望をお聞かせいただけると幸いです。

グリーンブルー株式会社 カーボン・マーケット企画室
メール:bonoff@greenblue.co.jp

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「リスク」と「ハザード」を整理する

2014-06-19 20:19:50 | 防災/減災
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


関東地方においても梅雨入りし、例えば、6月5日の降り始めから8日午前5時までの雨量が、神奈川県箱根で419.5ミリ、東京都青梅市で340ミリ、東京都心では209.5ミリに達するなど、各地点において、6月1ヶ月分に匹敵する大雨が記録された、との報道がなされているところです。

近年は、地球温暖化に伴う異常気象が指摘されていることから、なお一層の警戒が必要です。

では、このような大雨等に伴う災害リスクを、どのように考えればよいのでしょうか?
ここでは鬼頭氏を参考に整理してみます。

リスクは、(1)リスクを引き起こす可能性のある危険な現象(ハザード)、(2)ハザードの影響により損失を被る可能性のある地域社会の場所(曝露、つまり人やインフラおよび経済的・社会的、文化的資産が悪影響を受ける可能性にある場所)、(3)その地域社会が有するハザードの悪影響を受けやすくする状況(脆弱性)の3つが合わさったところで決まるといいます。

したがって、いくら大雨が降ったり、強風が吹こうとも(ハザード)、そこに人がいなければ(曝露がなければ)リスクはなく、また、そこに人がいても強固な建築物などで守られている状況であれば(脆弱性がなければ)リスクはないということです。

災害に関する上記の考え方を知った当時、たとえ土砂崩れが起きても、津波が起きても、そこに人がいなければ、災害リスクはなく、ただの自然現象として捉えることができるというわけで、指摘されてみれば当然だけれども、妙に納得したことを覚えています。

また、西澤氏はリスクコミュニケーションの観点から、リスクとハザードの理解不足の問題点を指摘し、リスクとハザードを次のようにわかりやすく整理しています。

リスク = ハザード × 曝露量
リスクは、好ましくないことが起こる可能性、危険度。ハザードは好ましくないことを起こす原因となるもの、危害因子、有害性、というものです。

今後、深刻化することが予想されている地球温暖化対策の方向性についても、上記の考え方は示唆を与えてくれています。

すなわち、地球温暖化対策は、原因となる温室効果ガスの排出を削減し、大気中の温室効果ガス濃度を安定させる「緩和策」と、気候変動やそれに伴う気温・海水面の上昇などに対して人や社会、経済のシステムを調節することで影響を軽減しようという「適応策」とに分類できますが、そのうち「緩和策」はハザードそのものの低下を目指すものであるのに対して、「適応策」は曝露や脆弱性の低下を目指すものであるということです。

今回のブログ記事は、リスクとハザードにつき、既に存じの方については、何を今さらという内容かと思われますが、西澤氏が指摘しているように、一般的には依然として、浸透していないのでは?との思いから、記した次第です。

参考文献
鬼頭昭雄、2013、気候は変えられるか?、ウェッジ選書
西澤真理子、2013、リスクコミュニケーション、エネルギーフォーラム新書

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環境価値を“みなすこと”の難しさ

2014-06-16 21:09:13 | 考察
カーボン・マーケット企画室 三阪和弘


“カーボン・オフセットやグリーン電力は難しい”、“何となく納得できない”、という意見を聞くことがあります。

それには様々な理由があると思われますが、ここでは“みなす”というキーワードに焦点を当ててみたいと思います。

まずは、グリーン電力の考え方に注目しましょう。
以下は、エネジーグリーン社によるグリーン電力の説明です。

グリーン電力とは、風力、太陽光、バイオマスなどの自然エネルギーにより発電された電力のことをいいます。太陽光や風力といった自然エネルギーによって生まれた電気は「電気そのものの価値」の他に、省エネルギー(化石燃料の使用量削減)やCO2排出量削減などといった「環境付加価値」をもっています。この「環境付加価値」を「電気」と切り離して、証書(グリーン電力証書)というかたちで取引をすることで、自然エネルギーによって発電されたグリーン電力を使用していると“みなす”ことができます。

次に、カーボン・オフセットの考え方を復習しましょう。

カーボン・オフセットは、自分たちの温室効果ガス排出量を把握し【知って】、それらの削減努力を行い【減らして】、それでも減らない部分について、他の場所で実施された温室効果ガス削減・吸収量(クレジット)を購入することによって、排出量を埋め合わせる【オフセット】という考え方です。
この埋め合わせるという部分には、温室効果ガスを削減・吸収したと“みなす”という考え方が含まれています。

一般消費者/企業は、この“みなす”という点において、立ち止まることが多いような気がします。すなわち、「知って」、「減らして」までは理解し納得しても、「オフセット」を行うことによって、温室効果ガスを削減・吸収したと“みなす”という点には、疑問符がつくというものです。

さて、人は、因果関係を求める性質をもっており、自分の行動の結果、発生する成果が見えないとストレスを感じることが知られています。言い換えると、原因と結果の関係を求めるというものです。

卑近な例でいうと、ダイエットや勉強を思い浮かべて下さい。努力(原因)と成果(結果)が連動するほど、モチベーションが維持されることからも理解できるでしょう。

一方で、人は、自分の行動の結果とは無関係に物事が進むときや、自分が何をやっても結果は変わらないという信念をもつとき、無力感をもつことが知られています。
※セリグマンの「学習性無力感」が有名です。

ここでも卑近な例でいうと、“どうせ選挙で1票を投票したところで何も変わらない”や、“どうせ一人で省エネに励んでも温暖化への影響は変わらない”、といった思いなどが当てはまるでしょう。

以上を前提に考えると、グリーン電力もカーボン・オフセットも、自分の行動が如何に温暖化対策に役立っているのかを示すことの必要性がわかるでしょう。
言い換えると、“みなす”という行為で一旦途切れかけた因果関係を、“見える化”によって修復することの必要性です。

さて、先日、ある自治体の森林環境部の方と、J-VERの森林プロジェクトについて立ち話をする機会がありました。そのとき申し上げたことは、「たとえ県有林であっても、J-VER購入者が、あのエリアのあの木々は、自分の資金によって生かされているという実感をもっていただく必要があるのではないでしょうか?」というものでした。

地球温暖化対策や森林保全に貢献したいと考えている方は、大勢いらっしゃると思います。
そして、それが具体的な形で見えれば、愛着もわき有難いと思う方もいらっしゃると思います。

グリーンブルーは、そのような方々の橋渡しができればと考えています。


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