いとう良一 「やっぱりペンギンは飛んでいる!!」 技術評論社 2007.04.25.
海鳥の進化を見ると、不思議な事に、南北両半球の離れた場所で、似た環境に似た進化段階の鳥類が現れている。北半球ではウミガラス類のオオウミガラスが、南半球ではペンギン類が現れました。しかし、オオウミガラスは1844年6月4日にこの世から消えたのです。人間の商業的な捕獲によって絶滅した最初の鳥です。 卵は食用に、羽毛は防寒の保温材として、また、ペンギンも食用や防寒以外に体内の脂肪を「ペンギンオイル」として欧州人が好みました。 日本には大正4年(1915)に1羽のフンボルトペンギンが上野動物園に来たことが最初です。現在、日本全国約100カ所の動物観・水族館に11~12種、約2,500羽のペンギンが飼育され、世界中の4分の1を占める世界最大の飼育国家となっています。 ペンギンのコロコロした体型は、見た目通り体重は重く、体長80センチのキングペンギンでは12~14キロと、同体長のウミウの3キロと比べても3倍以上あり、骨が他の鳥類と違って密度が高く、重くできています。また、全身が羽毛だけで覆われているのも、他に類をみない特徴です。ペンギンのよちよち歩きは意外と早く、アデリーペンギンで時速2キロ、水中では時速7キロで泳ぎ、深度100メートル潜水し、20分程度は海中に留まることができます。 中世以前では、肉、卵、脂肪、羽毛というペンギン自体の利用でしたが、近代に入ると、グアノという糞や死骸などの数千から数万年に渡って積み重なった土層の採掘が始まります。含まれている窒素とリンが目的で、おかげで、南アフリカや南米チリでは営巣地を追われたケープやフンボルトペンギンの繁殖数が激減しています。ニュージーランドでは入植者の森林開拓でキガシラペンギンが絶滅の危機を迎えています。また、イヌやネコなどの帰化動物、そして車による被害もあります。逆に、人の手が加わりにくい南極に生息する個体数は、減少から増加に転じています。 絶滅危惧種の生活環境が改善されれば、日本が持つ飼育・繁殖技術がペンギンを救う切り札となるでしょう。
海鳥の進化を見ると、不思議な事に、南北両半球の離れた場所で、似た環境に似た進化段階の鳥類が現れている。北半球ではウミガラス類のオオウミガラスが、南半球ではペンギン類が現れました。しかし、オオウミガラスは1844年6月4日にこの世から消えたのです。人間の商業的な捕獲によって絶滅した最初の鳥です。 卵は食用に、羽毛は防寒の保温材として、また、ペンギンも食用や防寒以外に体内の脂肪を「ペンギンオイル」として欧州人が好みました。 日本には大正4年(1915)に1羽のフンボルトペンギンが上野動物園に来たことが最初です。現在、日本全国約100カ所の動物観・水族館に11~12種、約2,500羽のペンギンが飼育され、世界中の4分の1を占める世界最大の飼育国家となっています。 ペンギンのコロコロした体型は、見た目通り体重は重く、体長80センチのキングペンギンでは12~14キロと、同体長のウミウの3キロと比べても3倍以上あり、骨が他の鳥類と違って密度が高く、重くできています。また、全身が羽毛だけで覆われているのも、他に類をみない特徴です。ペンギンのよちよち歩きは意外と早く、アデリーペンギンで時速2キロ、水中では時速7キロで泳ぎ、深度100メートル潜水し、20分程度は海中に留まることができます。 中世以前では、肉、卵、脂肪、羽毛というペンギン自体の利用でしたが、近代に入ると、グアノという糞や死骸などの数千から数万年に渡って積み重なった土層の採掘が始まります。含まれている窒素とリンが目的で、おかげで、南アフリカや南米チリでは営巣地を追われたケープやフンボルトペンギンの繁殖数が激減しています。ニュージーランドでは入植者の森林開拓でキガシラペンギンが絶滅の危機を迎えています。また、イヌやネコなどの帰化動物、そして車による被害もあります。逆に、人の手が加わりにくい南極に生息する個体数は、減少から増加に転じています。 絶滅危惧種の生活環境が改善されれば、日本が持つ飼育・繁殖技術がペンギンを救う切り札となるでしょう。