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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

伊藤計劃『ハーモニー』米SF賞の特別賞を受賞

2011年04月23日 | SF・FT
アメリカのフィラデルフィアSF協会が選考し、アメリカ国内では最大のSF大会である
Norwesconで発表されるフィリップ・K・ディック記念賞にノミネートされていた、
伊藤計劃氏の『ハーモニー』が、本賞は逃したものの、審査員特別賞を受賞されたとのこと。
よしながふみ氏の『大奥』がティプトリー賞を受賞したのに続き、日本で書かれた作品が
またひとつ、権威あるSF賞を獲得しました。

伊藤計劃さんが遺してくれた作品が、いまや世界で認められ共有される物語となったわけで、
ファンの一人としては、その事実が一番うれしい。
英訳版を出版されたHaikasoruさんとVIZ mediaさんにも感謝です。
(VIZ mediaさんからは英訳版『大奥』も出版されてますね。)

伊藤作品では個人的に最も英訳して欲しい『虐殺器官』も、今回の特別賞受賞で
アメリカでの出版についての道筋がつくと、すごくうれしいのですが。
アレを読んだ米SF関係者の評価がどう出るか、それが楽しみでしょうがない。
いやー別に悪意じゃなく、当事者側からの感想が知りたいという意味ですよ(^^;。

さて、twitterで「究極映像研究所」のBPさんが『虐殺器官』アニメ化を希望していると
書かれてましたが、今あれを撮るなら押井守監督よりも、その弟子筋でいまもなお
世界を救う気まんまんの神山健治監督こそ適任でしょうね。
でも個人的には、クリストファー・ノーランの監督でハリウッドの技術を総動員した映像が見たいな。

さらに夢を語るなら、TVゲーム「メタルギア」シリーズで世界的に知られ、生前の伊藤氏と
深い交流を持つ小島秀夫監督こそ、『虐殺器官』の映像化に最もふさわしい人のはず。
小島監督がもし将来映画を撮るのであれば、ぜひご検討をお願いしたいものです。
ただし、作中で描かれた「肉体のリアリティと制御された現実認識とのギャップ」を
的確に表現するためには、オールCGよりも実写との併用が望ましいと思います。

それにしても、遺作となる『屍者の帝国』が完成しなかったのは重ね重ね残念。
設定といいテーマといい、あれこそ世界規格として世に問う日本SFになり得たように思います。
しかし「自分のいる世界のカタチ」を常に問い続けた伊藤さんのことですから、
自ら彼岸の住人となった今も、続きを書いているに違いありません。

未曾有の大震災と原子力事故に見舞われた今こそ、SFというジャンルの存在意義が
改めて問われているように感じます。
そんな時代に、伊藤氏から眺めた「生者の世界」がいったいどんな風に見えるのか、
直接聞けないのが本当に悔しいです。
そして伊藤氏の不在を埋めるためにも、SFの書き手と読み手がともに奮起して、
この時代を少しでも動かせるような作品を世に出していかなくちゃいけない。

だから今回のディック記念賞は、ここにいない伊藤氏から私たちに対して送られた
新たなエールということになるのかもしれません。

すなわち『Project Itoh』は、やはり今もなお着々と進行中なのです。



VIZ media版の表紙。
作者表記が「KEIKAKU ITOH」ではなく「PROJECT ITOH」なのが泣ける。


ハヤカワJコレクション版の表紙。
私にはこれが一番なじみ深いです。


2010年12月に出たハヤカワ文庫JA版の表紙。
文庫版『虐殺器官』と対照的に、白地に小さく簡潔なロゴを使用。
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