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《読書》中島義道『戦う哲学者のウィーン愛憎』角川文庫

2006-08-14 12:06:29 | 読書

●〔54〕中島義道『戦う哲学者のウィーン愛憎』角川文庫 1999
(2006.08.06読了)

 東大で二つの学部を卒業したものの、社会不適応を繰り返す中島青年。明日死ぬなら何をしたいか?せめて重度の「哲学病」を全うしたい、との願いのみ。三十三歳、逃げ場無し。ウィーンで自分を変えられるかもしれない…。だが、待ち受けていたのは頑固・高慢・偏見に凝り固まったヨーロッパだった。家を借りる、試験を受ける、映画を観る、とにかくすんなり事が運ぶためしはない。泣き寝入りもままならず、青年は決意する。ヨーロッパ人と顔突き合わせ喧嘩することを。戦うことと、哲学することはどこか似てる。自分自身になるための、怒りと涙と笑い溢れる奮闘を綴る、ウィーン喧嘩留学記。

◎中公新書版と角川文庫版の違い
 前にも書きましたが、『ウィーン愛憎』は私が中島義道に興味を持つきっかけとなった本です。本書(角川文庫版)は元版の中公新書版で削除された部分があるということなので、買って読みました。

 なお、本書は一九九〇年一月に中公新書から刊行されたものであるが、今回角川文庫に入れられるにさいして、ウィーンで最も悲しかった体験を具体的に書き加えた。もともと原稿にはあったのだが、中公新書の担当の編集者に「あまりにもなまなましいので」削除するように命ぜられたのである。だが、そこを書かねば私と妻のウィーンでの体験は完結しない。なぜウィーンを離れるとき飛行機の窓から遠くに霞むウィーン市街を見て妻の目から涙がハラハラ流れたのか、なぜ私たち家族がいつまでもいつまでもウィーンにこだわり続けるのか、なぜ私が毎年ウィーンに滞在して仕事をしているのか、なぜ妻がウィーンに住みたいと言いだしたのか、伝わらない。(「文庫版へのあとがき」pp.239~240)

 たしかになまなましい記述でした。

◎内容
 本書を読むと、あんまりヨーロッパには住みたくないなという気になりました。

 明治以来わが国はヨーロッパの文物を貪欲に吸収したが、ただ一つ学ばなかったものがあるとすれば、それは、ヨーロッパ人の体感にしみついた中華思想だと思われるのであるが、いかがなものであろうか。(p.79)

◎解説
 解説は池田清彦です。

 私は中島義道の愛読者の一人である。右記した本は全部読んだ。それらは私には珍奇動物の行動記録みたいに興味深い。(p.241)

 私は中島義道と二人だけで酒は飲みたくないが、面白い体験談はもっと読みたい。だからしばらくは元気で頑張ってほしい。中島義道は日本にたった一人しかいない歩く天然記念物だと言ったら、中島さんは怒るだろうか。(p.245)



※本ブログ「《読書》中島義道『続・ウィーン愛憎-ヨーロッパ、家族、そして私-』中公新書」

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