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脊椎手術における死亡率

2014-04-29 02:16:07 | 手術による合併症


脊椎専門誌SPINE. vol39,Number 7 (2014年)
Defining Rates and Causes of Mortality Associated with Spine Surgery(脊椎手術に関連した死亡原因及び特長的な発生率)

・データは、思春期特発性側弯症も含むが、それに限ったものではなく、年齢をとわずあらゆる脊椎疾患により手術した症例での死亡率とその原因を分析したもの。
・データは、SRS(Scoliosis REsearch Society)により集計された。
・2004~2011までの、87,162症例を対象とする。
・このうち 131例 (0.15%) が死亡した。
・この131例の平均年齢は 50歳 (レンジ 2~92歳)
・原疾患別では、特発性側弯症 (1000例中に0.4例)、先天性側弯症(1000例中に1.3例)、神経性側弯症(1000例中に3.6例)、その他側弯症(1000例中に3.1例)、すべり症(1000例中に0.6例)、後弯症(1000例中に4.7例)




august03よりの説明・コメント:
昨日(4/28)の記事「手術のリスクを書くと整体が喜ぶ」にも書きましたように、私august03は、そくわん症に寄生して患者を食い物にしている整体を徹底的に否定しています。その最大の理由は、側弯症は命に係わる病気だからです。彼ら整体が、あたかも整体をすれば治るような宣伝をネットで展開してきたことで、世間において側弯症は誤った認識を植えつけられてしまいました。整体に行けば「治る」病気ならば、誰が長い時間待たされる病院にいこうなどと思うでしょう。学校帰りに、ちょっと整体に立ち寄って、整体体操等々を受ければそれで十分.... という間違ったイメージが広まった為に、過去においてどけだけ多くの子供たちが、手術の時期を逃してしまい、あたら難しい手術でなくてもよいものを、危険性の高い手術を受けるはめになってしまったことか。
今回取り上げたデータは、2014年の最新の報告です。このデータをもとに幾つかの分析と意見を述べさせていただきます。

☞ 進行性の側弯症が存在します。悪化させる前に手術しなければ、それは将来のリスクを大きくすること繋がります。このstep内のあちこちに、進行した場合の脊柱の写真を掲示していますが、手術のリスクは、カーブが大きくなればなるほど高まっていくことになります。側弯症の場合、その影響は肺-つまり、呼吸器系に悪影響を与えることとなり、カーブが進行するほどに肺が押しつぶされその影響は、長い時間をかけてジワジワと患者の健康を蝕むこととなります。
☞ Kyphosis....カイフオシスと読みます....脊椎後弯症の死亡率は、1000例あたり4.73例であり、側弯症の1000例あたり0.44例の10倍以上の死亡要因となっています。

上図を見てすぐにおわかりいただけると思いますが、これはいわゆる「大人の側弯症」に分類されるもので、思春期特発性そくわん症の患者にはまれな病態となります。 逆に、高齢者には比較的多くみられる病態であり、そして、この骨の状態が、肺や心臓、その他内臓を圧迫し、健康をむしばむことは容易に想像できることになります。この病態に加えて、患者が高齢者ということになりますので、手術による死亡率も高くなるわけです。
☞ 特発性側弯症 (idopathic)の年齢別死亡率を見ると、10歳以下はゼロ、10~18歳は1000例あたり0.34例、18歳以上が1000例あたり0.78例。つまり、率だけの比較でいえば年齢があがるほどに、少しづつではあるが死亡率が高くなっています。その理由についてはこの文献中には説明はありませんが、想像されることは、年齢が上がってから手術しているということは、もっと若い時に手術するタイミングを失ってしまい、カーブ進行が進み、かなりのコブ角度まで進行してしまってからの手術ではなかったか、ということです。

 側弯症は、整体やカイロのような民間療法で施術を受ければ治るというたぐいのものではありません。しっかりと専門医師のいる病院にいき、的確な診断のもと、適切な対応....手術も含めて......を受けなければなりません。
お子さんが、これからの長い人生を健康な体で生活していくために、どうすることが正しいことなのか、お母さんはしっかりと判断し、そしてその必要がきたときは、決断をして下さい。手術をするのは医師ですが、決断するのは、お母さんです。

august03


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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1 コメント

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Unknown (eri)
2015-11-29 08:35:31
こんにちははじめまして。

私の娘も今度手術するのですが勇気づけられます。
私も半年前に娘が側湾症と診断され経過観察の半年間整体に通わせました。

良くならなくとも進行しなければよいなと思い。
しかし、整体の先生の努力もむなしく進行してました。
ちなみに、整体は家族でかかっている馴染みの整体です。

で、いざ手術となると色々心配ごとが出てきまして、ここにたどりつきました。


実際に手術で失敗などのパーセントは高いのでしょうか?

私の言う失敗とは一部体が麻痺するとかです..

あと、感染症とか合併症とか手術で検索すると出てきたりしますが、小学6年生でもそういう危険性はあるのでしょうか?

お暇な時で結構です。よろしければ感想をお伺いしたいです。
m(_ _)m

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