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脚長差を指摘された患者さんはいませんか ? (脚长差侧弯症关系)

2017-11-19 14:21:31 | 脚長差と側弯症
初回記載:2017年11月19日
追記:2017年11月19日 pm6

脚長差と側弯症との関係について調べています。もし患者さんの中に脚長差を指摘されている方で、すでに脊椎固定手術を受けた方やこれから手術を受けられる方は、shoe lift(シューリフト補高靴)はどうされていますか ? せっかく作成したのに使うのを面倒がったり、作成自体を忘れておられませんか? 手術をした後も、脊柱アライメントを整えることは、将来の腰痛などを予防・軽減できる可能性を高めるという意味でとても大切です。




写真は、医学文献「Impact of spinopelvic alignment on decision making in deformity surgery in adults: A review.」Ames CP, J Neurosurg Spine. 2012 Jun;16(6):からの引用です。

「大人の脊椎変性疾患手術の決定要素としてspinopelvicアラメントの持つ意味」

左写真は患者さんの右足が左よりも短いので、レントゲン撮影にあたり「調整板」を用いて、正しい立位での撮影ができるようにしているものです。

中央の写真は、「調整板」を使用せずに撮影した時のレントゲン写真です。骨盤が傾斜していることと、その傾斜角度を補うために、脊柱がかなり曲がっている(脊柱側弯)のがわかります。

右の写真は、「調整板」を使用したときのレントゲン撮影です。骨盤傾斜がなく、またそれに伴って脊柱の曲がりも緩くなっているのがわかります。



上図も、同文献からの引用です。これは手術をする医師向けの説明図なのですが、患者さん方が脚長差と側弯症との関係を理解するのに役立つと思います。そして、ここから覚えておいて
いただいたほうが良いと思うのが、

 (脚長差を指摘されていて)脊柱固定手術をすでに受けた方
 ・脚長差をshoe liftで矯正せずに日常を過ごしていると、脊柱アラインメントが
  再び崩れて、将来的には腰痛などの不定愁訴の原因に繋がってしまう



 これから脊柱固定術が計画されている方で、脚長差を指摘されている方
 ・ご自分の脚長差がどの程度あるかを検査で調べておいてもらう
 ・レントゲン撮影時には、上記の左写真のように「調整板」で補正して正しい骨盤位置の
  立位での撮影
 ・手術後は、自分の状態に適したshoe liftを日常忘れずに使用する



くれぐれも自己判断で shoe liftを自作するようなことはしないで下さい。
 正しいレントゲン撮影で、正しい測定結果をもとに、専門の装具技師の方に作成してもらう
 ことが大切です。手術によって脊柱のカーブを矯正できることと、その効果を補てん
 するための装具も脊柱アライメントを維持する上で、重要な要素であることを忘れないで
 下さい。(このような装具を使用するときには、専用のリハビリと説明を受けることが
 必要になると考えます)



なによりも、ご自分の「状態」というものを把握しましょう。この場合の「状態」とは
 整体等で身体を施術されての「骨盤が曲がっている」とか「足の長さが違う」とかいう
 診断もどきのことではなく、側弯症に詳しい整形外科医院、病院にて
 立位でのレントゲン撮影をしたうえでの診断を言います。



医学文献によれば、大半の人には5mm程度から20mm程度の脚長差があるのはヒトの身体
 としては決して珍しいものではないようです。逆に左右均等、手足の長さも均等という人
 のほうが珍しいよう。
 
 その左右均等ではない「全身のバランス(アライメント)」を補うように
 ヒトの身体は無意識に調整していることで、日常生活、運動がスムースに行われて
 います。
 
 側弯症患者さんの場合は、このバランス(アライメント)の調整がうまく働いていない
 ことになりますので、解剖学的な実際の「差」を正しく測定し、その「差」に補てんが
 必要なのか、不要なのか、補てんが必要と考えられるならば
 どうやって補てんするのか等を.....特に、側弯症で手術をした(or検討している)方は
 主治医の先生とよく話し合われてみて下さい。





以上のことを図式してみたものです。

脚長差と側弯症との関係は、様々な課題とともに、側弯症患者さんにとっては大切な要素を
おおく含んでいそうなので、新たにカテゴリー「脚長差と側弯症」を設定しました。今後も継続して投稿することになると思います。



追記:2017年11月19日 pm6
この❝脚長差❞を調べていてわかったことのひとつに、「脚長差」測定方法は統一されたものがないのでは? という疑問です。
この疑問を提供してくれたのは、次の文献です。

Robert Cooperstein. The relationship between pelvic torsion and anatomical
leg length inequality: a review of the literature: Journal of Chiropractic Medicine (2009) 8

現在、1980年代に遡った形で、脚長差に関する文献を読んでいるのですが、2009年のこの文献のところまで来て、頭の整理が少しできてきました。 

・脚長差という現象自体は一般人にも理解できることですが、
・それには2種類あり、ひとつは functional(機能)に由来するもの。もうひとつはanatomical(解剖)に由来するもの。
・この区別をつけたうえで、文献やデータを読み進めないと、混乱の原因になる
・別の視点としては、測定方法が多数あり、統一されていないこと。
 これには医学(整形外科、理学療法、リハビリ)系はもとよりですが、カイロプラクティック系もあれば、国内では民間療法者による「脚長差をxxxxxxxで測定しました」という民間系まで含めると、あまりに多すぎて、どういうふうに内容を整理してよいのか頭を悩ませているところです。
・さらには、インターネットを見ますと、脚長差と骨盤矯正が表裏一体となって、その原因、対処法がこれも百花繚乱のごとしです。
・骨盤のゆがみとか、骨盤を矯正することで脚長差を治せる、という話を目にしますと、
なんだか、そこには特発性側弯症ビジネスと同じ臭いを感じてしまいます。
・さらには、1cm以内の脚長差は気にしなくていい、2cmまでは問題ない、という具合に
脚長差自体を問題視しない整形外科の先生の発言もあり、これも私の頭を悩ませているところです。
・このような背景のある「脚長差」ですので、何が問題なのか、という視点で中身を探り、理解できたことと、理解できないこと、疑問なことは何か、ということを皆さんに提示していきたいと考えています。


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


 august03


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