迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

夢見る映画。

2018-01-28 23:42:42 | 浮世見聞記
横浜市岩間市民プラザの「サイレントシネマ&活弁ワールド」へ出かける。

童話の世界を素直に活動写真化した演出に微笑みがこぼれる「ジャックと豆の木」(1902年 米)、私にはホラーよりも夫想ひな若妻の純真さが美しかった「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年 独)と、モノクロの世界が坂本頼光の声量豊かな活弁士ぶりによって、色彩豊かに展開される。

私が今回いちばん楽しめたのは、両作品の間に上映された「月世界旅行」(1902年 仏)で、SF映画の元祖とされてゐる作品。

ジュール・ヴェルヌの小説を原作としてゐるが、砲弾に乗って月まで飛ぶといふ設定以外は製作、脚本、監督、美術、主演を担当したジョルジュ・メリエスのオリジナルストーリーで、砲弾ロケットが月の片眼に突き刺さったり、



月にいるはずなのに三日月に座る女性が見えたり、



砲弾ロケットを発明した老博士が月世界の先住民と大立廻りを演じるなどユーモア満載で、むしろコメディーの元祖ではと思へるほど、上質な笑ひに満ちた名作だ。



それは、月へ行くといふことがまだまだ夢の話しであった時代、そして人間の想像力と創造力が無限の可能性を秘めてゐた時代の、大人のお伽話である……。
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