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原発問題の深層5 : 政策転換について

2012年08月19日 | 連載完 原発問題の深層


原発を急激に廃止にすることは大きな経済ロスと不安、そして抵抗を生むはずです。

そこで、かつて日本の産業構造が大きく転換したことに触れます。



2年前の電力業界の売上げは16兆円、労働者数12万人でした。

原発比率30%に相当する売上げ、資本、労働者がおり、加えて原発設備産業、関連学会、官庁(財団法人)などにも従事者はいる。

これらを背景に原発廃止に対する大きな抵抗力が生まれるだろう。

すこし過去を振り返ろう。

かつて世界に技術を誇り日本を支えていた繊維や造船などもやがて後進国に地位を奪われた。

それは苦しみを伴ったが世界の自由市場化の流れには逆らえない、日本は次の産業へと向かわざるを得ない。




< 造船不況 >

1960年代の石炭政策転換の流れは象徴的である。

この時は経済界が、コストが高くて将来枯渇する国内産石炭よりも、海外の安い石油に転換することを望んだ。

これに政府は同調し廃鉱・閉鎖を推進した。48年当時炭坑労働者48万人、事務職5万人いた。

当時はまだ高度経済成長の前であったから、失業は労働者に取って苛酷だっただろう。

労働争議は全国的規模となり、炭坑労働の失業者は巷に溢れ、政府は失業対策などの手を打った。

労働者は炭坑でガス爆発、粉塵被害、落盤事故に晒されていた。

彼らは大きな犠牲を強いられたが、労働者と国にとって石炭依存から石油への転換は正しい道だった。

このような大きな産業転換を戦後から幾度かやり遂げている。

このようなことからすれば多少の経済効率の低下を招いても、既に道は示されているのだから代替エネルギーへの転換は不可能ではないはずだ。

ただこれらと大きく状況が異なることに注意が必要です。




< 炭坑争議 >

先ず経済メカニズムが効かない業界。原発製造会社、電力会社(原発購入)、経産省(電力料金決定)がスクラムを組んでいたので、競争原理が働かない構造になっている。

原発を即廃止すると原発設備の残り価値7兆円(推測)が無駄になり、廃炉と核廃棄物費用17兆円が直ぐ必要になる。当然代替設備費用もいるので、莫大なロスが発生する。

これらは大きな抵抗を生むだろう。


苛酷放射能事故の被害は長期間広範囲に及び、その発症は10年以上遅れ、異常が出ても因果関係を特定するのが困難だろう。

結論として、代替技術と経済コストの関係もあり、期間(10年とか)を設けて全廃を目指すべきだろう。

当然、52基の内、安全な立地と改造を実施したものだけの運転に限定し、季節的な運転に限定すべきだろう。


次回は、マスコミと世論の問題を扱います。





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