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病と医術の歴史 12:古代エジプト 2

2013年10月17日 | 連載中 病と医術の歴史

< 医師の墓の壁画、手足をマッサージ、BC2200年頃 >

今回は、病気と治療について書きます。



< 旧約聖書ヨブ記、皮膚病に襲われたヨブ、9世紀、ローマ >

病気
彼らは約200種類の病気を認識していたが、肺や肝臓、膵臓、腎臓などの病気に関する記述はない。
彼らの理解を超えていたのだろう。
内科的疾患で明確なのは便秘、直腸の炎症、膀胱炎、住血吸虫による血尿のみである。
しかし外部の病変と外傷についての記述は明瞭である。
よく現れる病気は気管支喘息、丹毒、熱帯性肝炎、淋病、壊血病、てんかん、小児麻痺、寄生虫疾患で、しばしばハンセン病と天然痘に襲われた。
ヨブが神の悪戯で患った病気はハンセン病と推測される。
ラムセスなどの歴代王などのミイラからは石灰沈着による動脈疾患や顔面の伝染病跡が見られる。
一般人のミイラから、砂漠の砂塵による塵肺症や寄生虫による病気の多いことが確認され、成年の20%で動脈硬化が見られた。

治療
内科疾患の処方は700種あり、関係する臓器ごとに分類されていた。
外科は骨折治療、結石の摘出、目の手術、外腫瘍の除去、包皮切開が行われていた。
頭蓋骨の穿孔手術、虫歯治療、ブリッジによる義歯作りも行われた。
遺跡の壁画に数多くのピン、ハサミ、ナイフなどの外科用器具が描かれている。
麻酔にタール破片からの蒸気やコリアンダー、イナゴマメの粉末、アヘンも使用された。
妊婦が大麦と小麦に毎日尿をかけ、大麦が先に発芽したら女児出産と予測出来た(根拠有り)。




< ホルス神:天空と太陽の神で隼の頭を持つ。護符、ホルスの目:ホルス神の目 >

合理的な医術でうまく行かない場合は、常に身近にいた呪術師の出番となった。
処方に糞、尿、血を使う理由は、病原である魔物が嫌い逃げ出すと考えたからである。
また神々のアメン、トト、ホルス、イシスなどに助けを求め、祈りを捧げたりした。
護符を身に付けることも普及しており、蛇やサソリ、ワニから守ってくれるホルスの目が最も一般的だった。

神殿のサナトリウムで治療が行われてもいた。
患者は小部屋に隔離され、祈りを捧げ、眠っている間に夢の中で神の恩寵にあずかり癒され、さらに神殿のプールで沐浴も行った。
これはギリシャで隆盛を極めた治癒神アスクレピオスの神殿治療に似ている。

次回は、古代エジプトの最後で、薬剤等を記します。




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