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仏像を巡って 16: 仏像誕生 3

2014年05月02日 | 連載中 仏像を巡って

< 1. 仏頭、2世紀、マトゥラー >

前回まで、パキスタンのガンダーラで始まった仏像を見ました。
今回から、インド内陸部のマトゥラーで始まった仏像を見ます。


この2箇所で誕生した仏像は、同じ宗教的意義を持ちながら、表現が若干異なります。
そこには宗教と文化、外来文化と自国文化の融合と触発があります。
仏像の美術的表現を通して、宗教、文化、象徴の関わりを探って行きます。



< 2. 仏三尊像、2世紀、アヒチャトラー >

マトゥラーの仏像
図1の仏頭はガンダーラの仏頭と比べると丸顔で肉厚の唇が肉感的で、頭は剃髪し残りの長い髪を巻き上げている。
ガンダーラでは豊かな波打った頭髪を束ねている。
マトゥラー像は赤色砂岩を使用し、ガンダーラ像は黒色片岩を使用している。
図2の浮き彫りの仏像は、ガンダーラと異なるマトゥラーの最古層の形式を持っている。
前述した頭部と片方の肩だけに掛けた薄い衣、素朴で生命力を感じさせる造形が特徴です。
ガンダーラにも仏三尊像があったが、この左右の脇侍は天部(帝釈天、梵天)か菩薩かは不明です。
左像は天部が持つべき金剛杵を持つが、スカーフを巻き、短い腰布をしているので、西方のガンダーラの影響を受けている。



< 3. 仏立像、2世紀、マトゥラー >
この像の両肩に掛かっている衣や襟元の膨らみの表現はガンダーラと同じです。
前面に垂れ下がった衣のU字型の襞は、後に仏教美術の隆盛を迎えるグブタ朝様式(4~6世紀)に受け継がれる。



< 4. 菩薩頭部、2世紀、マトゥラー >



< 5. 仏座像、3世紀、サヘート・マヘート >
この像は頭部が螺髪になっているが、組んだ足が短く全体のバランスを欠いている。
クシャーン王朝の衰退と共に、様式化が進んだのだろうか。


マトゥラー仏像の特徴
ガンダーラの仏像は瞑想しているが、初期のマトゥラー仏像は目を開いている。
ガンダーラ像は撫で肩だが、マトゥラー像は肩がいかつく張って健康的です。
ガンダーラの仏陀座像の多くは両手を結んで瞑想しているが、マトゥラーのものは多くが右手を挙げ、手のひらを正面に向けている。
これは施無畏印と呼ばれ、人々の恐れと不安を取り除く意味がある。

次回は、なぜマトゥラーで仏像が誕生したかを見ていきます。



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