そらのはじまり

昔オノヨーコが書いてた。「そらはどこから始まると思う?」「わたしたちの足元からよ。アリにとってはここがもうそらなのよ。」

藤田地区合同フィールド調査

2010年11月04日 | 日記
今日の午後は、藤田地区合同のフィールド調査だった。
3つの小学校の5年生が一斉に各学区の農家に散らばってインタビューを行う。

今日の2時間にやったことだけ書けばたった1行だが、ここまで2年間かかった。
ここに至るカリキュラムは4月から始まっている。

インタビューには地元の興陽高校農業コースの高校生と岡山大学教育学部の学生、地域の人が一緒に行く。
第一藤田小学校の場合、学年たった40人しかいない小学生の学びに同数くらいの外部サポーターが加わったかたち。圧巻。
これがあっちでもこっちでも一斉に行われている。(3年前小さな会合から始まったことを思い出してうるっときそうになった。)

高校生はあらかじめ自分が担当する子どもたちと一緒にインタビューの内容を考えたりして交流している。子どもの扱いに慣れていない高校生も多いので、教育学部の大学生と小学校の先生がレクチャーをしてコツを伝授してもらっている。

今日は参加できなかったが、今日のインタビューをまとめるときは、藤田中学校1年生の有志がそれぞれの母校に行ってまとめの作業を手伝うことになっている。まとめたものは各校の学習発表会のほか、JAのふれあいまつりで3校合同で地域の人たちに発表する。

5年生は1学期から今日までに藤田の農業や日本の農業について、さまざまな機会に多様な側面から学んでいる。

目指すのは「持続可能な地域の未来づくり」。
農業はその柱だ。
米作りのためにつくられた土地で、これからどのような未来を描いていくか。
「藤田を見て知って考える」というキャッチフレーズのもとに、どれだけ地域の人や専門家、若者たちと一緒に自分ごととして考えていけるか。

干拓地の農業は他では見られないような大規模農業がある一方、兼業農家もあるし、無農薬や低農薬に取り組む農家もある。
米以外にレタスやナス、レンコン、玉ねぎなど、干拓地に適した良質な農産物を産している農家も多い。
これらの農家を小学生4-5人に高校生、大学生、地域のおとなを加えたグループで訪ねてお話を聞く。
どんなものをつくっていますか?どんな工夫をされていますか?一番うれしいときはどんなことですか?どんな問題がありますか?10年後も農業をしていますか?・・

私がついて行ったグループは小規模農家(22ha)のMさんだった。
どうして農業をしているのですか?農家の長男だったから継ぐのが当たり前の時代だった。またそれで十分食べていけた。
田植えもみんな手でやったから自分が働けば肥料代のほかはそのまま収入になった。
Mさんが興陽高校を出て農業を始めた昭和31年に、初任給が4~5000円で10キロの米が845円だったそうだ。
今は初任給が20万円で米は3000円。給料が40倍になっているのに米の値段は4倍にしかなっていない。
おまけに今は農薬や機械で収入から引かれるものがたくさんある。

米がなぜ安いか?みんな米を食べなくなったから。食べるものが多すぎる。昔はお米しかなかったから一生懸命お米を食べた。今はお米を食べなくてもほかに食べるものがたくさんある。だから売れなくなって安くなった。
10年後農業をしていると思いますか?おそらくしていない。そういって22haの田んぼにお米を作っていくら収入になるのか教えてくださった。

でも一方こんなことも話してくださった。
日本の農業も捨てたもんじゃないとも思う。なぜなら日本に働く場がなくなってきているから。企業が外に出て行っているから。
でも自由化になったら日本の農業は潰れてしまう。国はどうするつもりか。農産物が輸入されなくなったら日本人は何を食べればいいのか?
また農業にはいいところもある。自由に仕事ができる。儲からんけど自分が作ったものを食べて好きなことができる。
都会で疲れた人が農業を始めている。また昔に戻るんかなあ・・。もうちょっと農産物が高く売れるといいけどなあ・・。

そんなMさんの誠意ある本音を聞かせてもらって同行しているおとなの方が勉強になった。
高校生、大学生にとっても農家の方の生の声を聞く機会はほんとに貴重だ。
小学生にはむずかしいこともあったけれど、わからないこともあるということを知るのも勉強だとあとで誰かが言っていた。そのとおりだと思う。

ひとつの小学校だけで12の農家(デパートの野菜バイヤーを含む)にインタビューを行った。
反省会では高校生や大学生からそれぞれが今日の経験からさまざまなことを学んだことがわかった。
教科書では学べない現実。人の温かさ。知らない人とのコミュニケーションの難しさとできたときの喜び。

同質の集団ではなく、いろんな人がいる中で互いから学ぶ機会がなくなっている。
ふれあいが一番大切なのではという感想が地域の人からも聞かれていた。

このような重層的、多元的な学びの取り組みは、継続が大事。
今後改良しながら継続し、中学校との連携にもつなげていきたい。

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