緑のカーテンに覆われているような低い崖の間を川が流れ、悠久の時を刻みながらこのような地形を形造ったように見えますが、意外にも年代は若く、1667年の樽前山の噴火によりできたものです。地質的な時間感覚からするとごく最近の出来事といえます。
崖を下り川辺まで降りてみると、霧吹きで水を吹きかけられたように水分子が充満し、岩が苔で徐々に覆われていく途中段階を見ているような感じを受けました。地表面とは違った生態系が進行している場所、”樽前ガロー”です。
大正時代を代表する作家の一人、有島 武郎は大正12年に小説「親子」を発表している。その小説に登場する「親子の坂」のモデルになったのがこの坂だと言われている。
訪れた季節は春、坂の両脇にはカタクリが咲いていた。坂を登りきると視界が開け、青空と羊諦山、そして畝った畑が見える。有島が生きた大正時代、今と同じような景色が見えていたんだろうなぁと、ちょっと懐かしさのような感情が浮かんできた。