甘い期待と苦い記憶

「勝手に期待した自分が悪いんだけど」そう言って友人に聞かされた話。　
　当時小学生だった友人は、二つ年上だった兄に修学旅行のお土産を貰えなかった事が衝撃だったという。何でも友人の兄は自分の玩具を買って小遣いを全額使い切ったらしい。やがて成長した友人は家を出て、帰省の際に買ってきたお土産があまり美味しくなかったと父親に面と向かって言われて以来、帰省する回数を極端に減らしたそうだ。やった方に悪気が有ろうと無かろうと、やられた方は絶対にその痛みを忘れないというのは本当だと思った。

店の名は琥珀亭・水底の都

たかあきで【水底】というテーマで創作してください。

　店長はたまに、港に殆ど人がいない早朝の海を一人で眺めている時がある。そんな店長は青く輝く海面ではなく緑がかってたゆたう水底に目をやっているのだが、一体何が見えているのかと他人が同じ水底に目をやっても、きっと店長と同じものを見る事は出来ないだろう。
　店長が見ているのは、かつて存在した都の記憶なのだから。