安呑演る落語

音源などを元に、起こした台本を中心に、覚え書きとして、徒然書きます。

2008年09月11日 | 小噺
「あたしゃ、あの人と一緒ンなりたいよ」
「おれは、あいつをぜひ女房にしてみせる」
  なんて言ったって、そうはいかないですよ。縁がなければ一緒にはねれないンですから・・・・・。
  こういうのは、出雲の神さまが結ぶんだそうですな。年に一度づつ、ほうぼうの神々が、みんな出雲へ集まって、そうして縁を結んでくれる。そのときは、日本中の神さまが留守になってしまうから、その月のことを “神無月” というんでございます。
もっとも、向こうのほうでは、この月を “神有月” というんだ
そうですが・・・・・。
  いろンな神さまが集まるから、出雲の国ァそりゃァ賑やかなことで、

A神: どうも、ご苦労さん。ねえ、不動さん、お不動さん・・・・・
不動: えー、どうも
A神: どうです、もうかりますか?
不動: いやァ、あんまり、もうからない
A神: そんなこたァないよ。おまえさんとこなんぞ、ずいぶんお賽銭があがるって話だよ
不動: もうかるように見えたって、そうもうからないですよ
A神: へえ、そうかね?
不動: なにしろ、不動ソンというくらいだから
A神: なんだい、え、おまえさんは駄洒落が多くっていけねえよ。
 あー、弁天さん、あァたァ、いつ見ても変わらないね、おきれいですよ。
 あー、そっちは、山谷の痔の神さまだね?
 そんなお尻のほうへ引っ込んでないで、こっちィおいでよ。
 おお、春日(カスガ)さん、ちょうどいいところで会ったね。あたしはおまえさんに、しかと相談したいことがあるンだ、うん。
 とにかくねえ、ねッ、若い人をだね、いつまでも一人で置いちゃァいけませんよ。縁を結ばなくちゃァねえ。
それがわれわれの仕事だ。
 あー、弁天さんのほうにいいのがある? うん、ことし十九になる娘かい? そりゃァいいねえ。え、大黒さんのほうは、二十一になる男かい? じゃァ、貸しとくれ、うん、わたしが結ぶから・・・・・。
 そっちは、なに、十八の娘? よし来たい。そっちは、え、二十二の男かい? ほい来た。こう結んじゃおう・・・・・
 *てんでな、順にこういう具合にして(紐を結ぶような手つきで) 結んでゆきます。
A神: おい、うるさいよ。そっちのほうでグズグズ言ってるのは、だれかい? え、荒神さまだね。おまえさんは、お神酒の上がよくないよ。毎年そんな具合に酔っちゃしょうがねえや。気ィつけなくちゃいけないよ。 
 なにグズグズ言ってンの? え、大黒さまが気に入らねえ? どうして? 帽子を取らねえから、無礼だって? おいおい、そりゃァね、大黒さまてえのは、どこへ行ったって帽子を取らねえンだよ。そんな無理なこと言うんじゃないよ。
 まァ、大黒さん、勘弁してやってください。あっちは酔ってるンだからね。おゝっと、およしよおよしよ、およしてンだッ。おまえ、大黒さんに向かって、そんな、帽子をもぎ取ろうなんて・・・・・。おゝッと、大黒さんも小槌なんぞふりまわしちゃ、危ないよ。まァまァまァまァ・・・・・。
 あーあ、折角結んだのに、二人してあばれて、こんなにこンがらがっちゃたよ。また結び直さなくちゃァいけねえやな。えーと、コレとコレ、コレとソレだね? アレとコレをこう結んで・・・・・と。おーッと、いけない半端ができちゃったよ。
えーい、めんどくせえ、三つ一緒に結んでおこう
 *こういうのが、三角関係になるンですな。

  どうもそういうような具合で、神さまがいろいろと気ィくばって、結んでくれたご夫婦というものは、たとえ小さな喧嘩などをしながらも、生涯を仲良く暮らすという・・・・・、こりゃァ、あなたがたのご夫婦には多いようでございますが、われわれのほうはてえと、神さまが酔ったついでに、ついでに結んだような夫婦でな。
  名前があるのに、名前なんぞ満足によばないですからなァ、
「やい、やいッ」
  なんてなことを言ってな。“やい、やい” と呼んでますなァ。
「やい、やいッ」
「なんだよォ、おいッ」
  なんてなことになる。片っぽで “やい” と呼び、こちらが “おい” と答える。
   やいと呼び おいと答えて五十年
“やいおい(相生)の松” というのは、これから始まったんだそうですが、あまりアテにゃァならない。

コメント
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