東京・ウサギSATELLITES

兎についてきた人だけが迷い込む不思議な衛星

踏み込んでます16-2-大人時間・漫画追記部屋-

2016-12-28 | 漫画・ドラマ・アニメ・ゲーム

※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。

※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。








全5巻と長かったので、とりあえず感想を延ばした日高ショーコさんの作品『花は咲くか』。

ある意味不思議な作品といいますか…というのは、何度読んでもしっかり内容が頭に入ってこないのですよね。読んでも読んでも(あれ?え~っと…)という感じ(私の頭のスペックは別として)。

といっても、とてもよく書かれている作品だと思います。なので、この現象はなんなのだろう?と考えてみたのですが、多分絵柄も含め全体の雰囲気が優しいからではないかと思いました。内容自体も色々起こったりもしているのですが、嫌な棘が無い感じ。

で、全部読み終えて知ったのですけど5巻書き終えるのに9年くらいかかっているようでして…ちょっと理解し難い事象なのですけれども(なんでこうなったんだろう)そのゆったりとした流れが反映されているのかもしれません。


で、正直に書くと読み始めの段階では苦手かも…と思いました。

主人公とおぼしき男性はどうやら三十路のサラリーマン(大人は色々背負っていて面倒くさい)。実際早い段階で、女性と付き合って上手くいかないことを繰り返してきたと記されており、本人にくたびれ感もありで、それだけでうーんと思ってしまいました。しかもお相手となる人物が18歳下の大学生ということで更に拒否感が(純粋な子が酸いも甘いも知った大人に展開も苦手)。なので一度めの踏み込みの時はサラッと読み流してしまったのですけれども、二度めの踏み込みで改めて読み直してみると、人物含め作品に散りばめられた良さがポコポコ浮き上がってきたんですよね。多少なりとも己が進化して良かったです。


内容はというと、この2人の成長(もしくは復活)を互いの恋心を交えながら描いている…という感じ。その舞台となるのが蓉一氏が両親から受け継いだ古民家。都会の喧噪の中で、そこだけ緑多き別世界を作るほど広く、歴史的にみても価値がある様子。

そこで従兄弟達や親戚の叔父さん、他界した両親の友人に守られながら蓉一氏は暮らしています。ところがこの子、どうも性格に問題があるようでして…こう、色々拒否しているような感じ。それを桜井氏が徐々に融解しつつ、同時に桜井氏自身も広告業界で名を馳せたかつての輝きを取り戻していきます。

とはいえ、出会った当初は鏡のように互いの印象をなぞりあい反発しあっていた2人。同じ時間を過ごす中で大切な人だと自覚してゆくのですが、そうした中で語られるモノローグは心の内がハッキリと描かれていて、良いな…と思いました。

ただ、、、そんな風にモノローグは素晴らしいし、気持ちの変化もちゃんと描かれているはずなのですけど、蓉一氏がふいに絆されたような感じがして…よくあんなにツンツンしていたのにここまで懐いたものだな~?とも思いました。まあ、人を好きになるのはそんなものかも知れませんね。一目で惚れることだってあるのですから。。

ところで以前の踏み込みにて、なんで直接触らないんだい?と絡みシーンの行為についてシレッと書いていましたけれども、現実に沿えばそりゃそうだろうなと思いました。あと、この作者様はドラマを見ているような趣がラブシーンにあって、最後に2人が結ばれるのも感慨深かったですし、前の巻での抱きしめあう一コマも美しく官能的でした。

そんな感じで互いに好きであることを確認して、大きな家にありがちな相続やら維持やら親戚間のあれやこれやも上手くまとまって、ラストに向けては蓉一氏の両親の死についてのクローズアップもあるのですけど、それらを読むと、なかなか人とうちとけない蓉一氏の人格形成の原因は劇的な何かがあったというよりは、全ては病がもたらした悲しいすれ違いによって…という気がしました。彼は置いていかれたのではなく、愛されていたのだとも思います。。

そして物語の中では、母親が残した種がタイトルと絡んでいましたね。最初の辺りで桜井氏と従兄弟によって造られた花壇で植えられ続けた種は、結局は咲かないのですけれども(これは…賛否分かれるんでしょうかね?分かれないか)私はやっぱり綺麗過ぎる終わり方にしても、咲いてほしかったな…と思いました。きっといつかは咲くのでしょうけれども。。。

というわけで(またまとまらなんだ)、柔らかな印象の絵と共に、どこかに本当にあるような、そんな雰囲気も感じた作品でした。9年かかっても読むのはあっという間。でもそれだけ良い作品なのだと思います。




さて、同じ日高ショーコさんの作品で、続き物であるにも関わらず手にしてしまった『憂鬱な朝』。こちらについても少し(?)…記しておこうと思います。

以前に書いた、ゆき林檎さんの『玉響』で素敵な世界観だな~と思った時代もの。この作品も大正時代を舞台としていて、特権階級?貴族社会?(無知ですいません)で生きる主人公を描き、とても魅力溢れる内容となっていました。

日高さんの描かれる(タキエさんという方との供作らしいのですけれども)柔らかくもどこか燐とした人物描写とよく合っているとも思いました。

主人公となるのは家督を継いだ若き子爵とそこで家令として仕える桂木氏(こちらも歳の差あり)。どちらも大変魅力的な人物なのですが、この桂木氏が私の苦手な不特定多数経験有りでして…(お家のためとはいえ)。しかもお話しの始めの頃はツンデレのデレ皆無なツンツンオンリー。そんな彼に幼い頃から厳しく躾られた暁人様にはかなり同情しました。正直、少年期でもっと反抗するところとか見たかったのですけれども、逆に恋心を抱いてしまうのですよね…そして彼が時折見てしまう桂木の情事(キスであったり、着乱れ姿)は、何か昼メロを見ているようで…とてもいけないものを見ているような気持ちになりました。

そうした中で非常に好感がもてたのは暁人様の成長著しさ。あんなにポヤッとした可愛らしい子が巻を増すごとに逞しくなられて、しかも根は誠実ながら大人の駆け引き、ブラックな部分もちゃんと持ち合わせているところが素敵でした。そして、あれほどツンとしていた桂木氏が彼を認め、更に想いが恋へと発展するところは、もうほんと読んでいてなんて素敵な流れだと思いました。

この日高ショーコさんが紡いでいく世界というのは(私の印象なのですが)一つの出来事があったとして、それに向けて脇を固めていくといいますか、丁寧に組み上げていく感じがするんですね。なのでとてもよくできた連ドラを見ているような、そんな感覚に陥りました。

で、正直こちらもいつ終わるか分からないのですけれども…トホイメ、頑張って待って(待つことしかできないけど)、いつか詳しく感想を書きたいと思います。

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