フロリダ土産話 パールハーバー

ディズニーMGMスタジオには、
映画製作の裏方や特殊効果の様子を見学させる
バックステージツァーがある。

これは、ハリウッドのユニバーサルスタジオにある
トラムツァーのパクリだ。

16年近く前に初めてユニバーサルスタジオを訪れ
このトラムツァーに乗った時は感動した。
地下鉄構内で起こる大地震やニュヨークの下町を襲うキングコングの
大掛かりな特殊効果はなかなかの大迫力だし、
実際に映画が撮影された本物のセットを見るのも楽しかった。
ここは、その後、火災でセットの大部分を消失してしまい、
かなり復元はされたようだが、再び訪ねた時には
サイコのセットが妙な所に移動していたりした。

ユニバーサルスタジオが本物の映画スタジオであるのに対して、
ディズニーのMGMスタジオはあくまでテーマパークだ。
その分、興味も面白さも半減してしまうのは否めない。

それにしても、だ。
このバックステージツァーの特殊効果が
映画「パールハーバー」の一場面になったのはどういう訳だろう。

一昨年、入場の順番待ちをする長い行列に並び、
アメリカ人に囲まれながら、繰り返し繰り返し
この映画のビデオを見せられた時は、
正直言って冷や汗が出た。
どうにもいたたまれない気持ちだった。

歴史の真実はともかくとして、
アメリカ人にとって日本による真珠湾攻撃は
宣戦布告無しに行なわれた卑怯な奇襲という事になっている。
特殊効果見学のステージに設えられた戦艦で
ゼロ戦の攻撃を受け右往左往する体験参加者の姿にも
アメリカ人と一緒になって笑う気持ちにはとてもなれない。

何とも居心地の悪い時間だった。

ディズニーワールドには日本人観光客も大勢来ているはずだ。
エプコットセンターのワールドショーケースには日本館があるし、
各パークには日本語のガイドマップだってちゃんと用意されている。
日本人観光客を呼び込んでおきながら、
このような差し障りのあるアトラクション内容に
疑問を感じないとは、ディズニーも随分鈍感なものだ。

今回ひょっとしたら内容が変わっているかも知れないと
淡い期待を抱いたが、見事裏切られた。

身の置き所が無いようなパールハーバーの特殊効果見学を終え、
トラムに乗り込む時、私が心の中で呟いた言葉。
それは、「トラ！トラ！トラ！」だ。
我、奇襲に成功せり！
とんだ所で愛国心の発露である。

これは、日本人がディズニーに抱く
ほのぼのとして温かいイメージとは少し違う感情だ。

この場所にだけは、どうしても違和感を感じてしまう。