島のまにまに~インドネシアの小径~

海洋国インドネシアのあちこちでで出会う、美しい村、美しいもの。自然とつながる暮らし。

タナ・トラジャ トンコナンの彫刻

2013-01-10 | 工芸

スラウェシ島、タナ・トラジャ地方にはトンコナンと呼ばれる様式の伝統的な建築が多数ある。トンコナンハウスは数棟で1グループになって小さな集落を作っていて、田んぼと森の合間に見え隠れするそのムラの様子はなんとなく日本の合掌造り集落をイメージさせられる。よって、私はトンコナンをひそかにスラウェシ合掌造りと呼んでいる。

ただ合掌造りと違うのは色が原色でメリハリがあることだ。
家の切妻の正面には見事な彫刻がほどこされ、彩色されている。使われる色は、黒、赤、黄、白の4色に決まっていてそれぞれの色に意味がある。黒は死、赤は血、黄色は神の祝福、白は純潔である。
模様は動植物をモチーフとしていて、例えばこの写真の、一番目立つ黒が使ってある部分は水牛、うずまきになっているのは草のつる。それは人間が動植物とともに生きているからであるという。
右上にちらりと見えている屋根は、本来竹だが、今は竹の形にしたプラスティックを使っていることが多い。

このような手の込んだ装飾は廃れていいっていて重要文化財的な扱いになっているのかというと、全くそういうことではなく、今なお盛んにこの家が作られているのだからすごい。職人達がのみを使って上手にカーブを刻んでいく様子に見とれてしまう。
タナ・トラジャでは、有名な派手なお葬式が、年々派手になっていっているというから、家の建築もまだまだ派手なままであるのかもしれない。
ただ、この家に住んでいるのはムラの長のような一部の上層階級の人だけで、一般の人は家に彫刻を施すことは許されていないというのが伝統である。

この彫刻はパッと見どの家も同じような感じなのだが、よく見るとちょっとずつ違っていて、あちこちの家を探訪すればどれだけ見ても見飽きなくて、キリがないのだ。
村ごとに職人がいて、敬意をもたれている仕事だという。現地の人に、家の彫刻の模様は誰が決めるのかと聞いたら、職人だと言っていた。確かに村ごとに特徴が似ていると感じることもある。自分で考えて彫れるならやりがいのある仕事だと思う。

お土産屋さんでこの彫刻のミニチュアの壁飾りを売っていて、息をのむほど精細でその器用さには感動する。それもとても安価だ。小さいものなら部屋に飾ってもきれいで、いい思い出になる。

トラジャ地方の木彫り職人の青年

写真/スラウェシ島タナ・トラジャ(2009年)

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