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GANTZ:PERFECT ANSWER

2011-05-24 05:41:39 | SF
佐藤信介監督作品。

キャスト:二宮和也、松山ケンイチ、吉高由里子、山田孝之

ストーリー:死した主人公玄野(二宮)は謎の球体GANTZによって蘇り、謎の生物との命懸けの戦いを余議なくされていた。GANTZの指令による戦いで活躍するとポイントが与えられ、100点となると過去に死亡した人物を蘇らせることが出来る。玄野は前作で死亡してしまった友人加藤(松山)を蘇らせるため戦い、100点を間近に迎えるが―。

 前作『GANTZ』の続編。オープニングを見た瞬間に嫌な予感はしましたが、こちらの予想を遥かに、遥かに上回る駄作っぷりでした。前作でアレ?と思った部分が完全オリジナル脚本となる本作で大暴走。おかしな人物がおかしな会話をして、おかしな行動を取った挙句、おかしなことがことばかりが起こる底なしパルプンテ映画でした。前作がまだ見れた理由は明白に。それは原作のマンガ版『GANTZ』が結構ちゃんとしたストーリーであったため、原作から大きく外れなかった前作はまだギリギリ許容出来る範囲だったということ。つまり映画版のスタッフがパーでも原作が面白いからまだなんとかなったということです。

【冒頭から始まるイヤ~な予感】
 映画というのは作り手のセンスが表現に顕著に表れます。ある種冒頭のシークエンスである程度の力量は計れてしまう部分もあるかと思います。
 そして本作のオープニングは、、、最悪でした。前作のあらすじを田口トモロウのナレーションにより説明する形。ダサイ。。。前作ぐらいの内容なら言葉を使わずとも映像で説明しきって欲しいです。最低限『バック・トゥ・ザ・フューチャー part2』ぐらいの見せ方は必要だと思います(いいオープニングについては『キングダム 見えざる敵』が秀逸)。
 そんな最悪のオープニングに耐え抜くと次の試練が待ち受けます。場面設定がおかしい。
 前作で死亡した加藤勝は弟との二人暮らしでした。その加藤家に主人公玄野と恋人(未満)の小島多恵(吉高)が上がり込んでいて、加藤弟の面倒を見ているのです。言っておきますが、前作で加藤弟と玄野、小島は全くの赤の他人です。いくらなんでも知らない人が二人も当然のように家に来るようになったら気持ち悪いと思いませんか?まぁ、そこは個人差があるととして百歩譲りましょうか。でも知らない人たちが自分の家の家賃を払っていたら、どう考えても薄気味悪いと思いませんか??もうこの時点で「んなわきゃねーだろ、馬鹿野郎」と失笑です。そんな調子で始まる映画ですから終わるまで失笑ポイントが途切れることなく量産されます。

【説教臭い話と不真面目なラスト】
後半以降、ベラベラと「復讐」の是非について各メンバーが語り始めます。別にそのテーマ自体はいいのですが、作品そのものがお粗末なので説教臭く聞こえてしまう上に、結末がテーマに対してあまりに不誠実なので怒りさえ湧いてきます。
 殺す側と殺される側、それが復讐という形によって泥沼の殺し合いになっていくということは既に多くの作品で語られ「それはよくないよね」という認識なのは一種の分かり切った解答です。「復讐」というテーマを扱うこと自体が一種のステレオタイプなストーリーとなってしまう部分さえあるでしょう。それ故に如何に復讐という行動のやるせなさに観客を没入させ、説得力のあるラストを持ってくるかがキモなのです。本作でのラストは我が目を疑うものでした。平たく言うと、敵は皆殺し、自分が犠牲になることで(敵を除いた)世界を元通りにする。というもの。これでは、「悪いやつとか、嫌なやつとか最初からいなければよかったんだよ」と言っているのと同義です。こういう話が倫理的に許されるのかと疑問を禁じ得ないです。こんな話にお金を払った自分が悔しいです。
 殺し合いを誘発していたのがGANTZであるならば、星人たちがGANTZそのものを断とうとしてたことは、むしろテーマに対して誠実なのではないしょうか。むしろこのテーマを扱うならば星人視点で描かれるべきとさえ思えます。


【最後に】
 この映画は最早物語を語っていないので、こちらも語るべきポイントが見当たらないのが正直なところです。覚えている限りの失笑ポイントと理由だけ記載します。

・重田(山田)の目的が不明。彼がどうしてGANTZの事件に執着するのか全く描かれない。重田のエピソードは全てカットしていい。
・重田と黒服ボスの会話があまりに酷い。重田「お前らの目的はなんだ?」→黒服ボス「黒い玉を探している」→重田「それはどこにある?」だ か ら 探してるっつってんだろヴォケ!!どういう思考回路してんだ脚本家は。
・鈴木(田口トモロウ)が元GANTZメンバーの戦いぶりに「どうしてそんなに強いんですか?」と尋ねるが、彼らはストーリー上既に何度も戦場を共にしている。このタイミングでそれを聞くのはおかしい。
・黒服がわざわざ一般市民を攻撃する理由がない。一般市民が巻きぞえを食らうぐらいなら分かるけど。
・黒服の死亡基準がよく分からない。重田が銃で撃ってもビクともせず、Xガンで腕が吹き飛んでも軽く再生。その割には重田の銃弾でこと切れたりする。意味が分からない。
・重田が偽加藤がリーダーとなった黒服本部に潜り込む時に銃をアテにするのが分からない。彼は以前に黒服を銃で撃って全く効かず唖然としている。そして、本部に侵入した後、彼がどういう行動を取ったのか最後まで描かれずシーンが変わる。後の重田は全然別の場所にいるところから始まる。全然彼の行動が繋がっていない。

・GANTZの敵は全て黒服だったというように描かれるが、彼らが変身出来るなら、前作の星人たちの姿が何だったのか全く説明がつかない。それと連動して偽加藤が千手観音の姿に戻らない理由が分からない(手いっぱいあった方が強いじゃん)
・偽加藤と玄野が初対面するシーン。丸腰の黒野を偽加藤が襲撃しない理由がない。
・偽加藤と弟が再会するシーン。感動系の音楽が流れるが演出としておかしい。偽加藤が存在として怪しいことは観客に共有されているのだから、ここは不穏な音楽を流す方が自然。
・鈴木が加藤を生き返らせる理由が分からない。原作では玄野をリーダーの立場に導いた人物としてリスペクトがあったため、鈴木が加藤を生き返らせるというエピソードだったが、映画版ではそのエピソードがないため行動に理由がない。しかも、その後で鈴木は「妻を生き返らせたい」などと言う。だったら最初から加藤ではなく、妻を生き返らせるだろうが。
・西を生き返らせる意味がない。原作で西を生き返らせるのはGANTZの情報を得るため。映画版では過去GANTZのメンバーとして戦っていたことを思い出した人間が2人もいるのだからそいつらにGANTZのことを聞けばいい。
・小島多恵がGANTZの標的になる理由が全く意味不明。原作で小島がGANTZの標的にされるのはGANTZの秘密を握ってしまうから。映画版では理由がない。というより説明はあったけどあまりに意味不明でワケが分からない。理由は手のひらサイズの黒い玉を持っている(持っているのは偽加藤)とGANTZのある部屋に来れてしまうから、小島が標的なのだ、と。小島はカスってもいない。
・小島を守る目的の玄野が、小島を放って偽加藤と戦うのはおかしい。ばか。
・小島を狙うGANTZメンバーの理由が希薄。各メンバーなりの100点を取る理由が描かれない(一人だけオバサン生き返らせるっていうのがいたけど)。
・偽加藤がわざわざ小島を攻撃する理由が希薄。別に偽加藤の目的に小島は関係ないから。
・玄野が加藤を通り越して偽加藤を攻撃出来る理由が分からない(原作読んでるからおおよその見当はつくが、映画内で「なぜそれが可能なのか」の描写がない。そういうのダメ。当たり前)。
・加藤が加藤弟を抱きしめるシーン。「ずっとこうしたかった」と加藤。あの、、、近親相姦BLですか??
・本作に全然関係ない岸本恵(夏菜)が終盤近くデカデカと登場する。前作見てないと分かんないし、そういうやつを出すなよ。しかも岸本は前作で行き場がないから玄野の家に泊まっていたのに、自分の部屋で目覚めるとか意味分からないから。真面目にやれ。
・そもそも「まんてん」ってなに??
・人を生き返らせるだけでなく、GANTZが世界そのものを元通りに出来るなんて初めて知った。ドラゴンボールみたいなもん?
・100点につき一人しか生き返らせてくれないなんて、前の玉男はどれだけ器量のないヤツなんだ。普通の人の感覚なら玄野のように無償で全員生き返らせるぞ。
・小島多恵よ、いくらなんでもチケット持ってるからって、出所の分からないチケット持って一人で遊園地に行くか?
・観覧車の電光掲示板で愛の告白するなんて安いテレビドラマのセンスだよ。気持ち悪いから黒野と小島の恋愛は成就せずにホッと胸を撫で下ろした。

ザッと書きましたけど、ここに書ききれないぐらいおかしな描写、おかしな展開が炸裂するスーパー駄作です。アクション演出も下手だし(下手なワリに電車の中の殺陣なんて難しいことにチャレンジする)。2011年、日本映画史に名を刻む駄作であることは間違いないと断言します。何がPERFECT ANSWERだよ。気取りやがって。赤点だ!赤点っ!!!!


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