ムービー・クリティサイズ

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ドーン・オブ・ザ・デッド

2007-06-29 06:22:49 | HORROR
『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督作品。

キャスト:サラ・ポーリー、ヴィング・レイムス

ストーリー:看護師であるアナは夫と安らかな眠りについていたが、家の中に隣家の少女ヴィヴィアンが血まみれでたたずんでいるのに気づく。夫はヴィヴィアンの手当てをしようとするが、凄まじい勢いでヴィヴィアンは襲いかかってくる。

中毒性のある面白さ。
映画としての粗はけっこう目立つのだけれど、他の作品にはない魅力があります。
ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』の再構築作(リエンビジョニング)。リメイクではないのはロメロがリメイクを認めなかったようです。

【ミュージックビデオとしての面白さ】
この『ドーン・オブ・ザ・デッド』が他の映画と比べて魅力的な部分として、「ソンビ」世界をミュージックビデオ的観点で楽しむことが出来る点が挙げられます。
 元々、監督のZ・スナイダーはCMやミュージックビデオの分野で活躍していた人です。そこで培ったであろう感覚が惜しみなく、この作品に注がれています。具体的には、序盤のS・ポーリーが車で逃走するシーンと、中盤のモールでの生活を登場人物たちが満喫するシーン、エンドクレジットの3つなのですが、選曲のセンスが抜群(EDで流れる『dawn with the sickness』をRichard Cheeseがjazz調にアレンジ)で尚且つ短時間で世界や人物がどういう状況に置かれているのかが分かるようになっています。
 「ゾンビ」物の暗い世界感をポップに端的に説明する手法として非常に効果的だったという印象です。


【走るゾンビとガンアクション】
本作で描かれるゾンビはロメロ版で描かれたような鈍重な動きではありません。非常に機敏に動きます(多分、死んでからの方が元気なくらい)
走るゾンビのモチーフは2002年に公開されたダニー・ボイル監督作の『28日後…』にも出てきます。恐らく本作のゾンビ像は2年先に世に出た『28日後…』の影響を受けているものと思われます。そのため両作はよく比較の対象になるのですが、『28日後…』と『ドーン・オブ・ザ・デッド』は作風がかなり異なっています。『28日後…』はソンビ的世界を背景にしたアドヴェンチャーであり、『ドーン・オブ・ザ・デッド』はゾンビ的世界を背景としたアクションです。比較するには前提が大きく離れています。
 『ドーン・オブ・ザ・デッド』がゾンビアクションであることを先に述べましたが、それがこの映画を「恐い」という感想から離れさせる要因となっています。そう、この映画は決して恐くないのです。ゾンビが現れる、すごい勢いで走って来る、銃で撃つ。そんなアクション映画なのです。従って、「恐いのは苦手」という人でも楽しく観ることが出来ます。
 よろしくないのは、銃の描写がある度に銃口をアップにし、空の薬莢が落ちるのをスローで映したりすること。ダサいし、テンポが悪くなる。ここは長編初監督の至らない点であるように思えます。


【最高のエンディング】
 エンドクレジットがここまで面白い映画も珍しいのではないでしょうか。本編後キャラクター達がどうなるかを描いているのですが、恐らくゾンビものとしては初めてP.O.V(手持ちカメラからの視点)を用いた結末は、、、観てのお楽しみ!


オススメ度:

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300

2007-06-27 20:56:01 | ACTION
『ドーン・オブ・ザ・デッド』のザック・スナイダー監督作品。
この人のセンスはいつかとてつもないものを生み出してくれそうなので期待してます。ま、今回はフルスウィングとはいきませんでしたが。

キャスト:ジェラルド・バトラー、レナ・ヘディ、ロドリゴ・サントロ

ストーリー:紀元前480年。ギリシア諸ポリスはアケメネス朝ペルシアから侵攻を受けていた。そして、有力ポリスのスパルタにペルシアの特使がやってくるが、王であるレオニダスは相手の無礼さに怒り狂い、特使を殺してしまう。議会は降伏することを考えるが、王は僅か300人の先鋭を率いて出兵する。これが後に歴史に名を刻む「テルモピュレーの戦い」である。


一応史実を扱ったものになるので史劇に分類されるのかもしれませんが、そんなつもりで観ていたら悪い意味で裏切られます。というのもストーリーが原作の漫画からきていること、そして恐らく漫画がヘロドトスの『歴史』(世界で最初の歴史書。ただし中身はほとんど神話レベル)を参考にしているらしくノリは完全にファンタジーになってしまっているので。


全面が褪せたセピア色で統一されているのでそれが、本作が過去を取り扱った映画であることを強調し、残酷な描写もリアルになり過ぎずワンクッション置く効果を与えています。
まぁ、残酷描写のある『スターウォーズ』みたいな感じでいいかと思います。
過度に誇張されたクセルクセスの容姿や、ペルシア軍の進撃は本当にいい意味でも悪い意味でも漫画ですから。


映像に力が入ってるということですが、むしろ個人的な感想としては音声に力が入っていたかと思います。剣と盾のかち合う音、槍が突き刺さる音、矢が空気を裂く音、バトラーの豪快な雄叫び、サントロのインチキ臭い低い声。これらが映画の雰囲気を盛り上げる一番の要素であったと思います。だから、この映画が格好よく見えるのでしょう。筋肉質の肉体に映える赤いマントや殺陣も魅力的ですが、「お前らぁっ!!朝食はタップリ取っておけ!!夕食は…地獄で取るぞおぉぉっっ!!!」という怒号こそが最高にテンションを上げます。


マイナスなのは自由のために戦うという文句ですね。本能全開で「皆殺しだあぁぁっっ!!!」と叫んでるのにシラけます。説教臭くて。
今説教臭いというように述べましたが、基本的にこの映画ではキレイごとを並べれば並べるだけ陳腐になると考えています。そのため、障害者に対する扱いが酷いとか、プロパガンダだといった主張はナンセンスだと思われます。そんなこと言ってしまったら雰囲気ぶち壊しです。
ここでは誇張された世界での殺し合いが描かれているのです。
ファランクスが組めなくては役に立ちませんし、殺す相手を悪くみるのは当たり前でしょう。プロパガンダがあることでさえも楽しめるセンスが必要かと思います。

是非、音響機器がしっかりした環境で観て下さい。
悪くはない映画です。

オススメ度:

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ナイロビの蜂

2007-06-27 18:34:19 | MYSTERY,SUSPENSE
ジョン・ル・カレの『The Constant Gardener』を『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスが映画化したもの。邦題の方が問題の根幹を示していていいと思います。

キャスト:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ

ストーリー:英国外務省一等書記官のジャスティンはナイロビの空港から飛行機で飛び立つ妻テッサを見送ったのだが、数日後彼女が変わり果てた姿で発見される…。

シリアスな題材を扱った、サスペンス。と見せかけて実はラブストーリーな話。
非っっ常ぉぉおに面白かったです。まずこの救いようもない世界観を覆うテッサという救いの面影。テッサが生きている間のエピソードは世界が暖色で、死んだ後は寒色というほどの重要性。レイチェル・ワイズがこのテッサを激しく、繊細に演じているおかげで、テッサがこの作品の前半部分を完全に喰っています。とにかくメチャクチャ魅力的なんですよ。激しく自分の意見を主張する側面がありつつ、とてつもない母性を抱えている。ワイズさんってこんな演技出来る人だっけ?と思ってしまいました。


とはいえこの映画の主人公は旦那様のジャスティン。この物語の凄まじいところは、テッサに何も知らされていないジャスティンが彼女の軌跡を追うというミステリー(観客はテッサが何をしていたのかを知らされているため、あくまでもジャスティンにとってのミステリー)を解き明かすほどに、彼女への愛を確かにしていく展開にあります。ミステリーとラブストーリーがここまで相互補完的に協力関係にあるのは珍しいことです。それも、ただ単に話を追うのではなく、最も効果的なタイミングで時間軸をずらして、あるいはオーバーラップさせて魅せてきます。
しかも、観客が退屈しないようにサスペンス的なトラップが物語を邪魔しない程度に配されていて、いい緊張感が保たれています。

登場人物に無駄がありません。設定にも隙が見当たりません。簡単なことのようですが、とても難しいことです。

アフリカの剥き出しの美しい大地が、二人の高潔さをさらに引き立てます。


あ、そうだ。レイチェル・ワイズはこの作品でアカデミー助演女優賞を受賞しています。そりゃあ、ねぇ。もぎ取るわさ。こんな演技されたら商売あがったりですわな。

あぁ~!!失敗した!!映画館で観ればよかった。

オススメ度:

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エターナル・サンシャイン

2007-06-24 05:40:42 | LOVE STORY
原題『Eternal Sunshine of the Spotless Mind』
ミシェル・ゴンドリー監督作品。
脚本はゴンドリーとチャーリー・カウフマン。この2人は3年かけて脚本を書いたそうです。結果、アカデミーの脚本賞受賞。日本のコピーは「奇跡の脚本」覚えておいて損はないでしょう。
キャスト:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルティン・ダンスト、イライジャ・ウッド

ストーリー:「クレメンタインはジョエルの記憶を全て消去しました」ラクーナという会社からの不思議な手紙。クレメンタインはジョエルの元彼女。彼に嫌気が差した彼女は特別な技術により、彼の一切の記憶を削除した。ジョエルは激怒し、同様の処置を受けるが、施術中に彼女との愛の記憶を拾い始める。


ジ、ジ、ジム・キャリーがラブトーリーーーっ!!大丈夫なのか?と思ったら開始5分でイケると直感させてくるあたりは流石です。でも、途中でやっぱりジム・キャリーでした。でもモチロン雰囲気を損なわない程度です。

不思議なアプローチ。心の中で記憶が消えていく描写を映像化した作品はこれくらい?
そして恋愛の美しいところ、醜いところを時間軸を弄りまくって交互に主張してきます。右往左往する時間軸を見極める手がかりはクレメンタインの髪の色、これはクレメンタインのジョエルに対する気持ちの区切りを表したものだからです。

劇中の台詞。
「ねぇ、この記憶もあと少しで消えちゃう。どうする?」
「…楽しもう」
このやり取りに涙腺ぶっ壊れました。出会いと別れを定められた全ての恋人達の時間の縮図のようにしか見えなくて。あの瞬間私はジョエルになりました。楽しくて、苦しくて、愛おしい。そんな気持ちが内側からジワジワこみ上げてきます。


あなたのバイブルになりうる渾身の一作。
観ないのは勿体ない。

オススメ度:

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エイリアン

2007-06-19 13:23:59 | SF
『グラディエーター』のリドリー・スコット監督作品。
主演はシガニー・ウィーバー。

未来の宇宙貨物船ノストロモ号は航行中に謎の信号を受信する。その発信元を辿った彼らはまだ見ぬ異星人の宇宙船を発見し、中を捜索してみるが…。

1979年公開の大傑作SFホラー。アクションじゃないですよ。これ間違いなくホラーです。
静かに流れる心臓の鼓動をイメージした音楽と強調されるキャラクターの荒い息遣いが観るものの緊張を煽りまくります。

スイス生まれのアーティストH・R・ギーガーがデザインした滑らかな曲線とメタリックな光沢が美しくもおぞましいエイリアンと有機的な異星人の宇宙船内が凄まじい。


彼の作品は生命と機械が性的に融合することが特徴です。このことを踏まえるとこの作品がギーガーの世界観に支配されていることが分かるでしょう。

成体のエイリアンは男性器を模したものですし、幼体のフェイスハガーのデザインは女性器からきています(当初では「卵」もあからさまに女性器をイメージしたものだったみたいです)
殺戮を目的とする生物であることと、他者に寄生することがレイプを連想させることから、エイリアンは性と暴力とメタファーであることが考えられます。
そして、アンドロイドのアッシュがエイリアンを完全生物と評して絶賛し、捕獲を最優先事項としていたことから機械と生命の融合が図られていると言えます(アッシュがリプリーの口に雑誌を詰め込む描写の背景に執拗にヌード写真がはってあったことからこれがレイプの隠喩で、ギーガーの生命と機械の融合が性的に行われるというコンセプトに重なります)
ではその結果がどうなるのかというと、異星人の船内が有機的で、異星人が船体と一体になってしまったことを思い出しましょう。
結果は「破滅」です。

スコットの未来像っていつも濡れてるのね。

恐いとか言わないで観なさいよ。

オススメ度:

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シザーハンズ

2007-06-19 01:12:33 | LOVE STORY
原題『edward SCISSORHANDS』
ファンの多い、おとぎ話テラーのティム・バートン監督代表作品。主演はジョニー・デップ、ウィノナ・ライダー。


古城でひっそりと暮らす両手が鋏の人造人間エドワード。化粧品販売員ペグの親切から町へ招待されたエドワードは彼女の娘キムに恋をする。


社会的マイノリティー側の視点を描いた作品。
バートンはヒーローと怪物が戦うと怪物側へ感情移入して世界を見るそうです。このことを考えると、エドワードはバートン自身だと言えるでしょう。ボサボサ頭で口下手、鋏を振るうことでしか(映画を撮ることでしか)自分を表現出来ない人のカタチをしたクリーチャー。共通点が多すぎます。
そんな彼を演じたのがジョニー・デップ。ご存知の方も多いかとは思いますが、彼は若い頃アイドル路線で売り出していたのですが、本作を契機に変わった役を好んで演じるようになり、今では個性派の俳優として有名になりました。このことを考えると彼ももたマジョリティーで生きることを嫌うマイノリティーであることが分かるでしょう。だからこの二人、気が合うんですよ。


本来、万人ウケが良くないハズの本作がここまで広く愛されるのは、完全にエドワードの視点から町での生きづらさを描ききった点にあるでしょう。
最初、町では彼の芸術性を認められチヤホヤされるんですが、実際には彼という人格を認められていないことが段々分かってきます。


このストーリーを受けて、観客はこの映画の時間の中でだけマイノリティーであることの辛さを体験出来るのです。
本当はほとんどの人がマジョリティー側で普段は町の人間の立場なんだけどね。ここがこの映画の少し皮肉なところ。


エドワードが氷の彫像を造る時に巻き起こす雪の中キムが踊るシーンはこの映画で最も重要なシーンです。彼の作品と彼の存在自体が愛する人に受け入れられた瞬間なのですから。


エドワードが人知れず町に雪を降らせる様に、バートンは作品を世に送り出す。少しばかり複雑な気分になりますね。
バートンの人生込められてんだ。
観ろーーーっ!!!!

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