陽だまりのねごと

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普通の病院が緩和ケア病棟のようならいいのに

2006-02-14 01:02:36 | 終末医療
色鉛筆さんへTBします。

余命はいくらかと主治医に聞いても、状況による事だからと、はっきりは答えてもらえなかった。手立てのない状態である事は確か。夫の眉間には痛みで、いつも縦ジワが刻み込まれていた。

痛み止めはモルヒネの錠剤。MSコンチン。座薬のボルタタレン。癌は骨に転移し、胆管に転移しても、主治医は最初の膀胱癌を治療した泌尿器科。入院も泌尿器科。骨への転移部位については、わざわざ整形外科の外来へ回された。痛い箇所をグッと押し付けて、何度もレントゲンを撮らされた。もう歩行も座ることも困難な状態だった。

車椅子に痛みを和らげる自前のクッションを敷いて、病院内を移動させられるのは情けなかった。レントゲン室には私は入れない。技師に夫の預けて、どういう扱いを受けるのか気が気ではなかった。

『痛いと言ったら、技師がニヤッと笑った。』

くやしそうな夫の言葉が耳に付いて離れない。夫の体をちゃんと全体でとらえてくれているのは誰なのか?パーツ、パーツで専門医が替わる。ここは総合病院ではないのか?まるごと夫を診てくれているのは誰だろう?

県内の緩和ケア病棟の事を知ったのは、まったく歩けなくなるほんの数日前だった。転院相談に行くから紹介状をくれと、言っても渋って主治医が書いてくれない。業を煮やして、出勤間際の婦長をナースステーションに張り込んで、今日の午前中に絶対欲しいと迫った。やっと手にしたのは12時前。

車を飛ばしても一時間はかかる場所にある緩和ケアの外来は午前中で閉まる。電話で事情を話したら、

『待っているから、事故を起こさないように気を付けていらっしゃい。』

夫が病に倒れてから、初めて医師からやさしみのある言葉を聞いた。

『こんなひどい状態の人が6人部屋ですか?』

動けない夫の搬送の手配から、緩和ケアは空いていないが、空くまで一般病棟で緩和ケア医が診てくれると言う。用意された病室はふたり部屋。ひとつのベットは私が使って良いと言われた。

即座にベットにはエアーや獣毛が敷かれ、24時間皮下モルヒネの装置が装着された。すーつと夫の眉間のシワが消えた。

 『どこも痛くない』

治療をあきらめたくないと言う夫は最期の最後まで、体力のある限り放射線を受けさせてもらった。前の病院では私が放射線室まで私が連れて行き、順番をそこでも待たされた。ここでは数人の看護師さんが時間にサッ来て、疲れさせないように待つ事なく放射線治療を受けさせてもらった。

緩和ケア病棟に移れて二週間。大好きなお風呂に何度も入れてもらい、ほんの一口ビールを飲んで、おだやかにゆっくり最後の日を迎えた。緩和ケア医が一切を診てくれた。ナースコールにはすぐ対応してもらえ、状態が落ち着くまでゆっくり傍に居てもらえた。前の病院では感じなかった安心感があった。

総合病院の主治医が転院の際に言った。

『ここは救急病院だから』

地元にデーンと構えて、ほとんどの人が信頼して入院する。最後を迎える人も多い。誰も救急病院だとは思っていない。なぜこの人は末期の患者に緩和ケア科へ紹介状を書き渋ったのだろう?主治医のプライドが邪魔したのか?医療従事者が『主』で、患者が『従』のような風潮の病院では安心して看取りは任せられない。

もうひとつ。痛みの緩和は専門の医師でないと、きちんと痛みを取ってもらえない事をしっかりと覚えた。


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7 コメント

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ありがとうございます。 (色鉛筆)
2006-02-14 14:35:52
みかんさんのような奥様と出会えたご主人様は、さぞかし、お幸せな、深みのある日々を過ごされた事と思います。実家のある県には緩和ケア病棟のある病院はないのかな、すぐ隣のA市にも、いくつもの優秀な病院があるのに、と思います。その「A市」の職員である兄は、亡くなる直前に母から何度も「お前の伝手で、A市の病院に転院させてもらえないか。」と望まれたそうです。実家のB市の、母が最期を迎え、父が通院している病院には立派な癌センターはあっても、ホスピスはないのです。病人がいよいよ危篤に陥ると、偉い先生方、ナースは、他に用事を作って「席をはずして」しまいました。若い医師、看護士にすべてを任せ、患者が息を引き取るのを待ち構えていたように病室に現れました。「こんな大事な時に申し訳ございません。他の患者様の事で手が離せなかったものですから。」と言い訳をして。兄はあの時の事をどう感じ、母の最後の望みを、今どういうふうに心の中で整理しているのでしょう。・・みかんさんがご親切にお話し下さった事、このまま兄に伝えたいのですが、私がブログを開いている事が兄に知れますと、私が本音を書けなくなってしまいます。今晩、我が家のミス・パソコンが帰って来たら相談しようと思っています。私は場合によっては、私の家の近くのC市立病院の病院ボランティアをさせて戴いて伝手を作ってでも(自分の立場しか考えていない見え見えの行為ですが)、父の病状が悪化した時にホスピス棟に迎えて頂いて、父に「生まれてきて、生きてきてよかった。」という思いに満たされて、あちらの世界の仲間達に迎えられて欲しい、と願っています。父の希望が最優先ですが。

感謝のうちに。ありがとうございました。
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Unknown (こだるま)
2006-02-14 16:11:22
つくづく他人事ではないと思いました。



私も両親を悪性腫瘍で亡くしています。共に発見が遅れ、積極的な治療が出来なかったのですが、医療機関の対応には腹の立つことが多かったです。



母のときは、主に姉が病院と交渉し、一時期ホスピスに入りましたが、そこの長である医師の人情味のない言葉(家族である私に「厄介な病気になったね」と言い放ちました)や、一部の看護婦の応対の仕方(汚いものを触るかの様に、常にビニール手袋をして世話に当たった)は未だに悔しい思い出として忘れられません。ホスピスとは名ばかりでした。終末医療の分野は発展途上、病院でもまだまだ差があると思われます。結局は自宅に戻り、そこで最後を迎えました。



なくなる2日程前、業者に頼んで入浴サービスを受けた時の、母の気持ち良さそうだった事!(その時は意識や感覚の大部分を失っていたはずでした)



私が東洋医学を志したのは、母の死の3年後に父が亡くなり、一層の無力感を覚えたからに他なりません。



又、自身が障害を持っていると知った今、尚のこと医療や福祉の問題を切実に感じます。治療に携わるのと医療を受けるのと二重の立場に立つ中でどうあるべきか、これからの重要な課題です。
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いずこも同じ (みかん)
2006-02-14 23:16:08
自宅で死にたい、入院拒否の高齢者が増えてきて、訪問介護の仕事もだんだんターミナルケアを考える時期に来ています。一度入院すると懲りるみたいです。



ホスピスが厚生省の認可を得ているのが、緩和ケア病棟です。



色鉛筆さん、



まだまだ緩和ケアの数は足りていません。癌と分かった時から、治療と平行して緩和ケアが必要なんだそうです。『末期です、さぁ緩和ケア』では遅いんです。痛みを上手くコントロールしてもらえれば、長く日常生活が送れます。骨に転移されているとの事。早めの緩和ケア外来の受診をお勧めします。治療してくださる病院と両方にかかっても構わないのではないでしょうか?



こだるまさん、



>「厄介な病気になったね」と言い放ちました



いったいこの医師はなんのためにホスピスの看板を掲げているのでしょうね?あきれ果てました。辛い思いをされましたね。お察しします。



私は整形外科で良くならない、腰痛など東洋医学のお世話に最近なっています。一時間の施療が至福の時で、心身がリラックスします。



みなさんのお役に立つステキなお仕事ですね。健常であれ、誰だって治療を受ける立場に成りますよ。お悩みになる事は無用に思います。対人の仕事なので、メンタルな面でお辛い事もあるかな?と想像します。どうぞ、ご無理なさらない様にお勉強続けてくださいね。応援していますよ。
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もう1度ありがとうございます。 (色鉛筆)
2006-02-15 15:00:13
みかんさんの新しいコメントに気づいて、実家のある県、それも、なるべく家の近くに緩和ケア病棟はないか、と検索しました。実家の市内にはありませんでしたが、やはり隣の、兄が市役所勤めをしている市に、いかにも信頼できそうな病院が1箇所(外来も、訪問治療もあるようです。)、もう少し足を伸ばした所にもう1箇所ありました。今、私は父に何と言ったら良いものか、気難しい兄に何と言ったら良いものか、思案中です。私は話すことが極端に苦手ですし、父と兄は「聴くこと」が大変苦手です。だから、手紙かメールしか方法がないのです。でも、「行動」しなくては。
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死に場所ではない (みかん)
2006-02-16 06:02:21
ホスピスと言うと死を迎える場所のイメージがありますが、最後まで人が人らしく生きるためのお手伝いをして下さる場所です。



いよいよ最後の場所と言ったタブー視がなくなると良いですね。



色鉛筆さんのお父様がお気軽に足を運ばれますように。
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該当する場所がなかったので (みっちゃん)
2006-07-19 01:46:46
お久しぶりです。

「がん難民」という言葉、しってはりますでしょうか?

要するに、がん患者が適切な治療がないために放置されてる状態ということだと考えます。

実は、発達障害の診断待ちについて書いてるうちに思いついたのです。

調べてみたら、まるで発達障害の診断・治療の現状がそっくりにかかれてたのです。

なんか、妙なかんじです。
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ガン難民 (みかん)
2006-07-20 20:26:35
みっちゃんおひさしぶりですね。

コメントどうもありがとうございます。



本当に、

ガン治療の最前線も命が掛っているだけに怒りを感じる事ばかりです。

王監督の胃ガン手術のニュースなど聞く度に、

有名人ならもっとも優れた医療が受けられるのに、

一般庶民はどうなのよ!

と言いたくなります。

人は平等などと言いつつも、

階級がありそうな気がしています。

話がそれましたが、

発達障害だけではないですよ。

医療の不思議は。

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