川柳でんでん太鼓 (講談社文庫) | |
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講談社 |
川柳好きにとって、読んでうれしくなる一冊。
なかなか文学の片隅にあって、誤解はされていても理解はされていない。
川柳作家の作品など、一生懸命さがしてやっと目に触れるという世界。
マスコミが扱う川柳は川柳を愛するものからは、やめてぇ!と叫びたいほどひどい扱い。
一番有名なのが某生命保険が公募するサラリーマン川柳。
これも実は???なのが受賞作。
短歌、俳句よりもランク落ちの五七五の座で、
うまく説明できないでいるジャンルを爽快に紐解いてくださっている。
さすが聖子さん
ありとあらゆるジャンルの川柳をあますところなく網羅。
有名、無名の作家の句をうまく区分けし、江戸時代の柳多留や色物の末摘花まで言及。
現代川柳への流れまでも良くわかる。
つい固くなる川柳の手引書と違って、
川柳ファンの目線で書かれているので読みやすいし感情移入がしやすい。
聖子さん流に言えば’たはは’と笑いながら読み手はさらっと読み終えてしまうが、
膨大な資料に基づいて、好きな句を吟味して書かれたろうと推測する。
どうして川柳が好きなのか?
私自身の謎も解けた。
真っ向から声高に批判するでなく、さらっと笑いに逃げて詠みこむ。
こんな作業がじわぁ~と内に広がる重苦しい気持ちを軽くしたり、明るくしたりする効果があるらしい。
川柳へ誘い込んだ人は、
物事をひっくり返して裏から見たり少々、皮肉れ者の私の性格を見抜いていたかな?
ちょっと目に止まった句も置いておこう。
淡々と生きだんだんと利己主義
(椙元紋太)
歩道を二人横隊で歩いていて、前から来る自転車のお爺さんに怒鳴られ、
ランチの後ろ席のおじさまがクレーマー発言を繰り返して、店員さんのうまい応対ぶりに接した昼休み。
我がゆく道ではないかと思い、利用者さんに多かれ少なかれこの傾向があるなぁ~とにんまり。
阿呆はタブー言葉などと川柳会では言われそうだけれど、おせいさんはその辺もこだわりなし。
これもおもしろい。
かしこいことをすぐ言いたくなる阿呆
(亀山恭太)
人間の珍種真面目に苦悩するく
(西田効亭)
あら?女性句がない。
ではでは~
ペン持てば内向性の人でなし
(藪内千代子)
いつわりを庇う気持ちで足袋を履く
(窪田久美子)
生姜煮る女の深部ちりちり煮る
(渡部加奈子)
あじさい闇過去がどんどん痩せてゆく
(大西泰世)
最後に今また物議を醸しだしそうなきっぱりはっきりの時実新子さんの句で絞めとこう。切りがない。
寒椿の忍耐という汚たならし
抽象的な表現も思いのたけをぶつけるのもまた川柳。
そろそろ今月の宿題句にかからねば^^;
楽し苦し川柳。
聖子さんみたいに読むだけにしておけば良かった
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