The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

狼狽上海

2011年11月04日 | ASB活動日誌
ひで氏です。

北京から上海へと飛ぶ飛行機に乗るために空港へ向かう。
空港に着くと、自分の任務はここまで、と余りにもあっさりと帰ったエージェントペイ氏。
淡白な別れを差し引いても北京滞在中の彼の協力なしでは私にとっての北京の魅力は半減していたに違いない。

上海はもう何度か訪れているし、気楽なもんだ。。。そんな安心から隙というものは生まれるのである。

翌朝、上海でのミッションを遂行するため、オフィスに向かう。
ここではもうすっかり顔なじみの中国人の同僚達があたたかく迎えてくれた。
今回、中心となって受け入れをしてくれたのは大学を出たばかりの若者、M氏だった。

そのM氏が昼食用ということであるカードを手渡してくれた。
ああ、このカードなら知っている。このビルの3Fにある食堂でこのカードを見せれば、専用の端末にかざして昼食を買う事ができる。
電子マネーみたいなものだ。

いかにもゲスト用らしく、元々あった柄を隠す様に一面に白い紙が貼られており、
「Please return this card before you leave!」(帰る前には必ず返すこと!) と書いてある。

私が使い方を知っていると言うと、M氏は、このビルだけでなくこの一帯の店でこのカードは使える、と説明してくれた。
え!そうなの?と言うと、M氏は大きく頷き1Fのコンビニでも通りの向こうのスターバックスでも使える、と教えてくれた。

早速カードを使って昼食をとった後、じゃ、ちょっとコンビニに寄ってくる、と言って一人になった。
ざっとコンビニを覗いてみたが特にめぼしいものも無く、先ほどのM氏の言葉を思い出す。

「通りの向こうのスターバックスでも使える。」

私ひで氏は通常知らない土地へ行くと、そこでしか口にできないものを極力飲み食いしたい性格なので、
そういうグローバルなチェーン店にはまず行く事がない。
しかもビルの正面の通りというのが大阪は御堂筋の倍ぐらいの幅があるのに信号がひとつもなく、しかもここは上海であるので命がけで渡らなければならない。

「でも、タダなら。。。」

誠に安直な発想に突き動かされた私はクラクションの嵐を命からがらくぐり抜け、
スターバックスに入店。昼食後の一杯を楽しもうというお客さんで長蛇の列だ。
ただ、中国は、いや上海はすべてが超高速だ。並んでいる列に店員が来てどんどん注文をとって行く。

かろうじてトールサイズラテを注文し順番を待つ。
そして実は少し足りなかった腹を補完するためにマフィンも一つ言った。

だんだんと近づいてくる精算という儀式に胸がドキドキする。
ポケットには、例のカードのみ。そのカードだけを持って朝食に出た続きでここまで来たので、財布も持ってない。

そしていよいよ自分の番。すっかり用意されたラテと袋に入ったマフィンを前に、
堂々とカードを渡す。

もう、おわかりだろう。

クレジットカードだと思った店員はカードをスロットに上から下に通すが何の反応もない。
IC読み取り機のようなものはない。

中国語で何かを言われているのもかまわず、英語で説明する。このカードが使えると聞いている、使えるはずだ、と。
しかし店員の中国人女性は訝しげな顔を崩さず、首を振りまじまじとカードを見つめる。

カードには意味不明のメッセージ、「帰る前には必ず返すこと!」。
そしてとうとう彼女は店長らしき人に顔を向ける。この頃には私という人間を先頭にした巨大な大蛇のような列が遥か後方まで伸びていた。
その胴体ひとつひとつから突き刺さるような視線。

クレジットカードの「ようなもの」でラテとコーヒーとマフィンを買おうとした謎の日本人詐欺師、にしか見えてない目だ。

「い、いや、もういいです。。。忘れて。。。!」

言った直後は店内のBGMも止まっていたような気がするほどの静寂、いや孤独を感じた。
カードを奪い取り、後ずさりして何人かにぶつかりながら走って店を飛び出した。
入った時は降っていなかった雨に打たれながら、また何度もはねられそうになりつつオフィスへ逃げ帰った。


おれは、アランスミシー氏に試されたのだ。。。。!


そう思うしかなかった。

そうして戻ってM氏に事の顛末を話すと、結構軽めに

ソーリー!と言われた。


単純ミスやったみたい。














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