裏山赤太郎~ゲイでエイズで、でも生きてくよ!~

ゲイとして生きて、50代でエイズを発症したけど、自分らしく生きていくことには変わりないないんだよってブログ。

私達は毒虫じゃない!

2015-07-23 20:28:03 | 日記
HIV感染によるエイズ発症の宣告を受け、
翌日から入院し、
3週間ほどで退院した。

入院時は数か月に及ぶひどい下痢症状に加え、
胃のむかつきや味覚障害、発熱などがあり、
ボロ雑巾のような気分だった。

3週間の点滴治療のおかげで、
私は自分の体を少しづつ取り戻してきた。

退院して、
職場復帰をして、
なんとか日常生活を普通に戻してきた。

そんな折、ふと見たTwitterの中に、
HIVエイズ予防を促す広告を見た。

私は非常にショックを受け、言葉を失った。

ああ、自分はそんなふうに見られているんだ!


その広告には、
ベッドの上に裸の男女が抱擁しあっている画像があった。

下に横たわる女性の上に、
男性が覆いかぶさるように抱擁している。

しかし、女性の足元からはサソリの尾が伸び、
まさに背後から男性めがけて針をうとうとしているものだった。


私はその画像を見ながら、
体から力が抜けて、
体の血液がすべて足元に落ちてしまうような気がした。

そして、痺れて麻痺したような思考の中で、
悲しみがジワジワと、
白いテーブルクロスに広がるワインのシミのように広がってきた。

そして、そのシミのような悲しみの下から、
僅かではあったが怒りの感情も湧き出てきた。


私達は毒虫じゃない!


そう心の中で叫ぶ声が聞こえた。


わかっているのだ。

世間では、私のようなHIV感染者を、
セックスに溺れた淫らな者、
予防の大切さを理解できない愚か者、
感染するから恋人はおろか、
セックスの対象としては除外される相手・・・・
できれば、関わりたくない人・・・
そんなふうに見られていることを。

未だに、食器を使ったり、
同じプールに入ると感染するんじゃないかと思っている人さえいる。


そんな現実、そんな偏見があることを、
頭では理解していた。

しかし、こうして毒を持つ虫のように表現され、
それを見せられると心が痛んだ。


心の痛みを理性で理解していても、
実際に当事者になって、
初めて体験として自分の感情の中に刻まれるものだ。

その時、私はふと思った。

もしかしたら、
自分もひどいことを言っていたのかも知れない。

自分には長く親しくしている友人がいる。
彼は15年以上前に、
この病気に感染し、発症して生死をさまよった経験がある。
いわゆる、この病気の大先輩である。

自分は彼との付き合いの中で、
この病気のことを理解して、
それなりに気を付けて言葉を選んだり、
気遣っていたりした。

でも、当事者になって初めて、
解ることがたくさんある。

不用意な言葉で、
彼を傷つけたこともあったかもしれないと思った。

人間は世の中の全てを経験して、
全てに配慮した発言や行動をすることは不可能だろう。

しかし、相手の立場に立って、
想像力を巡らして、
できるだけ配慮することは大切なことだ。

当たり前のことだが、
当たり前のことほど、
すぐに忘れてしまいやすい。

当たり前のことほど、
続けるのは難しいものだ。


私達は毒虫じゃない!


その心の叫びは、
逆の立場に立つ人のことを理解するきっかけになった。

この病気を広めてはいけない。

そのための広告だからだ。

私は心の痛みと引き換えに、
この病気に感染する人が一人でも減ることを望んだ。


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