理解できんこの世の中

平和な日本、安全な日本。でも不満がいっぱい。理解しがたいことを考えます。

全頭検査基準緩和のもう一つの功罪

2005年03月24日 00時38分29秒 | BSE関連
BSE全頭検査の規制緩和には、米国産牛肉輸入再開問題以外にもう一つの問題があります。
それは、20カ月齢で線引きをしたというところに起因します。
国内で BSEが発生し、全頭検査が始まった頃には、一時的でありますが「BSE検査済シール」というものが流行りました。この頃は、検査した牛肉と検査していない牛肉が混在して流通していたからです。
現在流通している牛肉はすべて検査をしていますので、このシールはもちろんありますが、消費者が目にする機会がなくなりました。当時は、このシールの使いまわしやコピーが大量に出回ったといいます。

検査済みとそうでないもの。当然検査済みの方が市場では付加価値が高く、売り手には有利に働きます。
今後、20カ月齢以下は検査しなくなりますと、どのような現象が起きるでしょう?
検査を実施する21カ月齢以上の牛肉の方が相対的に付加価値が上がるのです。
そこには、生産農家の努力や肉質そのものの価値といった本来の価値基準とはかけはなれた、単に制度のあり方に起因し価値が変わるのです。

さて、肉用牛の出荷月齢は、その飼養方法にもよりますが、ほぼ品種で出荷時期が決定されます。
代表的な和牛(黒毛和種、褐毛和種等とそれらの交雑種)は25~30カ月齢。米国産に多いヘレフォードやアンガスとそれらの交雑種は20カ月齢と少々でしょうか。米国では、大量飼育により21カ月齢未満で出荷される場合が多いようです。
そして酪農の副産物として生産されるホルスタインは20か月齢程度です。
この要因は、その種が持っている成熟速度の差です。成熟速度が速くてすぐ大きくなるホルスタインは、他の品種に比べ早く出荷できるという特徴があるのです。
一方、和牛は、成熟速度は遅いのですが、肉に脂肪交雑(サシ)が入りやすいという特徴があり、またサシは30カ月齢程度まで肥育しないと十分に入らないのです。
したがって、種が持っている特徴によって肥育農家は飼養体系を選択しているのです。

話はもう一度BSE検査へ。
これらを前提にしますと、大雑把には、同じ国内産でも和牛はBSE検査を行い、ホルスタインは検査無しということになるのです。
どうでしょう?和牛はどちらかというと西日本でその生産が多く、ホルスタインは東というより北海道でその生産の大部分を占めています。

農家が持っている環境や努力の内容にかかわらず、牛肉の価値差が生まれてしまうのです。
しかも、本来科学的にはよりリスクが少ないとされている低月齢牛の価値が未検査ということで低くなり、リスクが高いとされている高月齢牛は価値が高まるのです。
BSE検査の基準緩和はこんな現象を引きおこします。
さて、みなさんはどんな牛肉を選択しますか?