監督 ウォン・カーウァイ
出演 アンディー・ラウ
ジャッキー・チュン
マギー・チャン 1988年、香港
ウォン・カーウァイ初監督、出世作です。
特殊な黒社会が背景の映画だけど、そこでしか生きることのできない若者たちの出口の見えない青春を描いた映画でした。
ヤクザ組織の一員ワーのアパートに遠い親戚だというマギーがやって来る。
ワーには、いつもヘマばかりやっているが憎めない弟分がいる。
彼がふと香港の街の頭上を飛ぶ飛行機を見上げる場面があるけど、
あれはこの世のしがらみを捨てて、何処か遠くに行きたかったのではないかしら。
故郷に帰ったマギーを忘れられないワーは後を追う。
バスに乗るワー、緑が目に沁みるカーウァイ監督らしいシーンだと思います。
また、王傑(ウォン・キ)のシャンソンを思わせる歌声が流れるようで。
そう言えばこの映画、どこかフランス映画を見ているようです。
若い二人が再会し、駆け寄り互いを求め合い。
魂が求め合い若さが爆発する・・・何度見ても胸を打つ素敵な場面です。
この映画の原題は「モンコック・カルメン」だけど、カルメンはワーのことだと言われています。
恋人を想い、彼女との地道な生活を夢見て、
けれど、弟分を救うために結局はヤクザ世界に戻っていく。
恋人と弟分の間を揺れながら行ったり来たり。切ないです。
別れの日、二人はお互いを少しでも長く見つめようとする。
バスの中で頭を巡らせマギーを探すワーは迷子の子犬みたいに心細げで。
やがて、あきらめて背を向けるマギー。
「もう、会えないかもしれない」・・・
やっぱり弟分は見捨てられないか・・見ている私も心が揺れます。
ここから結末に触れています。
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最後に、路上にまるでボロ布のように倒れるしがないチンピラの脳裏をよぎったのは・・・
この場面でパタパタパタと鳥が羽ばたくような音が聞こえるのは気のせいかな。
ワーが地上から飛び去った音にも聞こえる。
ちなみにこのラストは実際は二通りあるそうです。
韓国版ビデオなどはワーは生き延びるのか。
こちらのほうがシンプルでいいらしいです。