宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

航空宇宙マネジメント学

2007年09月18日 | MBA
 
最近急にビジネススクールからの照会メールが増えてきた。案件はその時々によるのだけど、大半は僕のMBA卒業を見込んだ手続関係の話だ。例えば、ビジネススクールから支給されていた有料駐車場の年間フリーパス券を返しなさいとか、修士論文を何月何日までに何部フルカラーで提出しなさいとか、そんな感じだ。

その中でも今日届いたメールには、僕は改めて考えさせられることになった。メールの内容は、僕が審査に合格すれば受け取ることになるであろう学位に関するものだ。世の中には、やたらと長いファミリーネームやミドルネームを公式な場面で使う国がある。それに、苗字が先か個人の名前が先かといった違いも、国よっては大事に扱われることもある。なので、万が一のことを考えて、本人にこれでよいかと確認してきたのだ。

僕が考えさせられたのは、僕自身の名前をどう記載するかということではない。僕は両親から与えられた日本人としての自分の名前に誇りを持っているし、別に英語風のミドルネームなんて僕に必要だと思ったことはない。海外に出てくる台湾人や中国人が英語の名前で自分を呼んでいるのをみて、いつも不思議に感じているくらいだ。

僕はメールの中に記載された英語の僕の学位タイトルを見て、日本に足りないのはまさにこれだ!と気付いた。それが今日の衝撃だ。英語での僕の学位タイトルは、Master of Business Administration in Aerospace Management。無理やり日本語に訳すと、「経営学修士(航空宇宙マネジメント学専攻)」となる。

学位なんていくらでも自由に設定できると言えばそれまでなのだけど、「航空宇宙マネジメント学」なるものが独立した学問分野としてその存在を認められていること自体が、ここヨーロッパにおける航空宇宙ビジネスの成熟度を表しているような気がする。もちろん、航空宇宙先進国のアメリカにもこの専攻は存在している。しかも、かなり前から存在している。

Aerospace Engineering(航空宇宙工学)専攻などは世界中のどの大学にもある。しかし、「航空宇宙マネジメント学」専攻までが立派に存在しているという事実こそが、今のヨーロッパやアメリカの宇宙航空ビジネスと今の日本の航空宇宙ビジネスとの間にある、歴然とした力の差を表しているような気がしてならない。底力の差と言ったほうがふさわしいかもしれない。

技術力だけを見れば十分にヨーロッパやアメリカと肩を並べ、分野によっては彼らを超え世界のトップランナーとして活躍している日本の航空宇宙。世界の中の本物になるためにはまだ何かが足りないと感じていたが、それは日本における「航空宇宙マネジメント学」の体系的な確立なのかもしれない。

日本に帰ってやらなければならないことがどんどん見えてきた。これからも忙しい日々が続きそうだ。

(写真はVirgin Galactic社のスペース・シップ・ツー。VG社のHPより。)
 


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4 コメント

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マネジメント (bigakira)
2007-09-18 14:40:55
あぁっっ、ブログに書こうと思っていたこと先に書かれたっっっ(笑)
確かに日本ではマネジメントって学校でなかなか教えてくれない事がMITにいると不思議です。

僕が取る学位はMS in Engineering and Managementなんですけど、SDMというプログラムの特殊性に関係なく、工学部内でもマネージメントをトピックにした授業がふんだんに準備されていることに最初は驚きましたが絶対必要ですよ、これ。

技術で勝って主導権争いに負ける日本の状況はここに1つ問題がある気がします。
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ビジネス (美砂)
2007-09-19 07:58:59
そうなのですよね。
最近私の周囲でも同じような意見というか、考えさせられました。テレビ番組を制作しているということは以前にお伝えしましたが、まさに同じですというか、ビジネスという考え方がなかったのです。放送することでの自己満足に浸っていた・・・。映像の権利はすべて放送局の物。
最近、通販による教育教材の会社が、DVDで映像を販売することをすすめています。今まで番組作りをしていた人達が、HV映像を駆使したDVDを手がけて、世界遺産シリーズなどをセット販売をする・・・その権利による対価はビルが建つほど!!
私達は・・・ビジネス権利と映像を分けてきました。
その元にあるのは、テレビ創世記時代の先輩達が、ジャーナリストという役割意識というメッセンジャーであることに拘りすぎたのでしょうね。ドキュメンタリーとは、お金に縁遠い場所にいます。。。
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やりましょう! (AerospaceMBA)
2007-09-19 08:11:14
>Bigakira さん
コメントありがとうございます。
問題意識が共有できて、目的意識の方向性がかなり似ているのですから、必ず何かコラボレーションできるはずです。日本に帰ったら一緒にやりましょう!この問題を解決できるプロジェクトをスタートさせましょう!また直接メールします。
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面白いですね (AerospaceMBA)
2007-09-19 08:30:56
>美砂 さん
コメントありがとうございます。
まったく違う業界なのに同じような問題を抱えているなんて、面白いですね。テレビの世界で今そんなことが起こっているなんて、初めて知りました。宇宙航空MBAブログの効果、僕にとては絶大です。

Bigakiraさんは「技術で勝って主導権争いに負ける」と書いていらっしゃいましたが、よく考えたら日本が主導権を握っている規格もかなりありますよね。ちょっと例えが古いかもしれませんが、ビデオのVHSとかがそうでしょうか。これらは技術開発に先立って行われた戦略立案の勝利、マーケティング活動の勝利といったところでしょうか。

ボーイング社のB787ドリームライナーも最高のマーケティング戦略を見せてくれました。ビジネス戦略におけるアメリカのすごさをまた見せ付けられた気がしています。1機もまだ空を飛んでいないのにもう700機近くも売れている航空機なんて、普通に考えたらありえませんからね。

一歩動くその前に既に勝負を決めている、そんな強さを身に付けたいです。
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