何も問わない【1】

目にとまる

発見

2018-05-26 07:06:16 | 日記
太陽とは異なる恒星の周りを回る「系外惑星」の探索が新時代を迎える。米航空宇宙局(NASA)が先月、打ち上げた宇宙望遠鏡TESSを使って、地球に比較的近い系外惑星を全天から探す新たな国際共同プロジェクトがスタートするからだ。系外惑星を数千個発見し、その中から生命が存在する惑星が見つかるかもしれないと期待されている。

巨大ガス惑星から小ぶりの岩石惑星、さらには地球によく似たものまでTESSは様々なタイプの系外惑星を見つけるだろう。イメージイラストはRON MILLER
系外惑星は長らくSF小説の世界の話だった。戦前の1930年代から探索が試みられていたが、なかなか見つからなかった。多くの天文学者があきらめかけていた90年代半ば、最初の系外惑星がスイス・ジュネーブ大学の研究グループによって発見された。

当初は系外惑星の発見数が少なく、天の川銀河にある恒星のどれほどの割合が惑星を持っているのかは不明だった。ところが2000年代末、NASAが系外惑星探しを専門とする初の本格的な宇宙望遠鏡ケプラーを打ち上げて観測を進め、夜空に輝く星々のほとんどが惑星を持っているらしいことがわかった。

ただ、ケプラーがこれまで観測しているのは主に天球上のはくちょう座付近のごく限られた領域だ。そこにある地球から1000光年以上離れた約15万個の恒星に絞って探索していたため、発見された系外惑星はいずれも遠すぎ、大気の有無や大気の組成を調べることは難しかった。

そこで打ち上げられたのが、ケプラー後継となるTESSだ。TESSが観測するのは天球のほぼ全域に散らばる、数十光年から最も遠くても300光年までの距離にある約20万個の恒星だ。中には30光年という、宇宙的スケールでいえば至近距離の星も含まれる。

現在、TESSは暫定的な地球周回軌道を飛行している。かなり細長い楕円軌道で、軌道上の地球に最も近い場所(近地点)と最も遠い場所(遠地点)を通過するタイミングでエンジンを噴射して軌道変更を行い、遠地点を次第に伸ばして最終的に月の公転軌道(地球から約38万5000キロメートル)近くに到達させる。5月17日には月に8000キロメートルまで接近、月の重力を利用して軌道をダイナミックに変える月フライバイを実施した。その後もエンジンを何度か噴射し、6月中旬には最終的な観測軌道に乗せる計画だ。

観測軌道は非常に大きな地球周回楕円軌道で、近地点が約10万8000キロメートルと静止衛星軌道(約3万6000キロメートル)より遠く、遠地点は約37万6000キロメートルで、ほぼ月の軌道に近い。地球の周囲には「ヴァン・アレン帯」と呼ばれる高エネルギー荷電粒子が多数飛び交う放射線帯があるが、観測軌道は完全にその外側になるので、搭載している4台の望遠鏡に取り付けた観測装置へのダメージを避けられる。順調に進めば、今年末には最初の観測結果が報告される予定だ。日本経済新聞web版より

(詳細は25日発売の日経サイエンス7月号に掲載)