チェコ・フィル ファンの日記

クラシック音楽の演奏会やCDを聴いた感想をアップしています。 クラシックファンが1人でも増えることを願いながら。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第9シンフォニーの夕べ

2015-12-31 06:00:00 | Concert Reviews
大阪フィルハーモニー交響楽団 第9シンフォニーの夕べ



井上 道義 (指揮)
小林 沙羅(ソプラノ)
小川 明子(アルト)
福井 敬(テノール)
青山 貴(バリトン)
大阪フィルハーモニー合唱団



数ある第九のコンサートの中でも、長い歴史があり、暮れも押し迫った29日、30日に毎年開かれているのが、この「第9シンフォニーの夕べ」です。
今年は首席指揮者の井上道義さんの指揮で、ソリストも含めて一昨年と全く同じ顔触れでの開催となりました。2,500人以上の客が入る巨大なフェスティバルホールですが、2日間ともほぼ満員のようです。

井上さんの指揮による第九を聴いたのは、新フェスティバルホールでは初めてだったのですが、この日の演奏は、数年前、ザ・シンフォニーホールでの演奏より少しゆっくり目のテンポで、一音一音をしっかりとした足取りで進む感じでした。楽譜はベーレンライター版のような新しいものを使っているようでしたが、最近、第九はやたらと速くて軽快な演奏が多くなった気がするので、落ち着いた気分で聴くことができました。
正しい聴き方かどうか分かりませんが、冒頭のホルンの長い音が始まると、「今年も年末になったんだな」という実感が急に沸いて来ました。

この巨大な空間に正統派の演奏が響き渡り、大フィルの音も少しだけですが朝比奈さん時代を思い起こさせるような気がしました。
大フィルのメンバーもすっかり若返っているので、古い時代の音が戻ることはないのですが、やはり大フィルは、フェスティバルホールで堂々とした演奏をするのが似合うと思いました。

ソリストは皆声量が大きく、合唱とのバランスも良く堂々としていました。合唱は1楽章から舞台上に待機していて、4楽章途中で立ち上がる時、女性が1人体調を崩されていたのが心配でした、レベルの高い歌唱でした。

年末、じっくりと第九を聴いた。そんな満足感の高い演奏でした。
年末に第九を好んで聴くのは世界で日本だけのようですが、こんな感動的な演奏、空間、時間が作られる、貴重な慣習だと思います。

第9シンフォニーの夕べでは、演奏後合唱団だけが舞台に残り、真っ暗になった後、団員が緑色のペンライトを掲げながら、合唱指揮者の指揮で「蛍の光」を歌います。
1番、2番まで歌い、その後ハミングで繰り返す途中で、1人ずつ舞台から下がっていく演出。今年はこの歌いかたも少しゆっくり目で、こちらもこの1年をゆっくり振り返るような雰囲気を高められました。

(2015.12.29 大阪 フェスティバルホール)



大阪フィルハーモニー交響楽団第493回定期演奏会

2015-12-06 15:00:00 | Concert Reviews
大阪フィルハーモニー交響楽団 第493回定期演奏会

ベートーヴェン : 序曲「コリオラン」
ショスタコーヴィチ : 交響曲第7番「レニングラード」

指揮 : 井上 道義

今年の大フィル定期は大曲のプログラムが多く、6月のドヴォルザーク:「スターバト・マーテル」(指揮 : ラドミル・エリシュカ)、9月のマーラー:交響曲第3番(指揮:大植英次)、そして2月にはマーラー:交響曲第7番(ヨエル・レヴィ)と、70分を越える曲が揃っています。きょうは首席指揮者の井上さん得意のショスタコーヴィチの名曲で、演奏時間が80分近くにもなる第7番ということで、しっかりと体調を整えて、会場に向かいました。

余談ですが、フェスティバルホールの向かいに建設中の朝日新聞大阪本社が入るもうひとつのタワーも、フェスティバルホールのビルと同じ高さまで工事が進んでいます。

ビルに入り、チケット受付を済ませてから乗る長いエスカレーターは、いつもながら、現実世界から特別な世界へ切り替わる通り道で、心がわくわくします。


10分弱のコリオラン序曲は、その後のフルオーケストラの演奏に備え、多数並べてある奏者用の椅子の中、第一ヴァイオリンが8人位の室内楽のような体勢での演奏で、軽やかで弦のスッキリとした響きが心地よい演奏でした。

20分の休憩を挟んでの交響曲第7番は、第一ヴァイオリン16人のフルオーケストラの迫力が最大限に楽しめる内容でした。どの楽章にもとても長いフレーズがあり、それだけで1曲分位の長さと面白さがあります。そこに井上さんの全身を使った(しかし決してオーバーアクションとは思えない)ダンスのような指揮姿が重なり、重厚な音楽ショーとも言えるようなパフォーマンスを満喫できました。
フェスティバルホールの音響は益々、大フィルのような重厚長大な響きを余裕を持って包み込み、ものすごく大きな音だったと思うのですが、洗練された響きに聞こえました。
この曲はそれほど演奏機会が多くはないと思います。きょうは時間に長さを一切感じさせない演奏で、レコーディングもしていたようです。
近い日に、この大迫力の演奏をCDで聴くことができるのを楽しみにしたいと思います。

(2015.11.28 大阪 フェスティバルホール)